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〜NHK特集「東海村臨界事故への道」に関して〜

「均一化は必要なかった」(吉田守審査官)
NHK特集 事故原因の核心に迫る
2003.11.13
望月 彰(JCO臨界事故調査市民の会)
「東海村「臨界」事故 国内最大の原子力事故・その責任は核燃機構だ」〈リンク〉(槌田敦+JCO臨界事故調査市民の会・編著、高文研・発行、1000円)が発売中です。
●望月彰がJCO臨界事故について出前講座を行います。詳細は近日掲載いたします。

 9月30日の臨界事故四周年を前にして、JCO臨界事故調査市民の会は、高文研より「東海村臨界事故」を出版した。これに呼応するかのように、NHKが10月9日NHK特集「東海村臨界事故への道」を放映した。「難しかった。」とか「従来のマスコミ報道と同じだ。」という評価も耳にしたが、それは感違いである。勿論部分的には問題の表現もあったとはいえ、事故原因の核心に迫る内容であった。ヴィデオに撮った方は再度精見して欲しい。

 番組はまずJCOの転換試験棟の精製施設の実物大の映像を示して、沈殿槽で臨界事故となったことを解説した後、原子力学会が独自調査を始めたことを紹介する。裁判も終了した今、あらためて原子力学会独自の調査が必要である、とする住田健二氏の意図を強調している。「JCOの責任だけがいわれているが、これを監督する立場にあった行政官庁にまったく言及しないのは腑に落ちない。」これが住田氏の発言である。原子力学会の事故調査委員会では国や発註者の責任を問題とする発言が上がっているというのである。

 そこでまずやり玉にあげたのが1984年の許認可である。本来は2酸化ウラン粉末の許可申請であったところ、急遽硝酸ウラニル溶液も「ワクドリ」として申請した。ここで原研の田辺文也氏に「溶液製造の安全審査に重大な見落としがあった。」と発言させている。実際一次審査(科技庁事務官)では溶液のことは全く出ていなかった。二次審査(原子力安全委員会)で初めて登場し、二次審査委員(核燃料安全専門審査委員)岩本多実氏は「一次審査に戻すべきだ。」といったのに、他の委員は「書類上の不備」だと考え差し戻さなかった、というのである。二次審査の委員は本業が別にあり、片手間に印鑑をおすこと、お墨付きだけを求められていた存在である。燃安審の部会長・青地哲男氏は「工程ひとつが無いと言うこと、しかも一番危ない工程が記載されていないというのは、重大なことだった」。と発言している。

 すでに指摘してきたことなので、結論のみ記すならば、かくして硝酸ウラニル溶液を精製施設で1バッチ縛りにて作成せよ、という許可をしたのである。それは溶解塔44リットル、抽出塔・逆抽出塔それぞれ35リットル、貯塔80リットル、沈殿槽95リットルの連結されている中で、わずか6.5リットルのものづくりをせよという許可であった。しかも精製施設なので不純物の混入が避けられないのであった。

 この許認可の安全審査官は動燃から出向した吉田守氏であった。「重大なる見落とし」の最高責任者は吉田守氏だと、番組(と原子力学会)は言外に指摘したのである。   
 これでは吉田守氏の立つ瀬がない。彼は決定的な反撃に出た。安全審査は1984年であった。この安全審査は吉田氏の責任に属する。しかしその後の出来事には彼は何の関わりもない。よってその2年後から始まった硝酸ウラニル溶液の注文(契約)について一刀両断の如く断罪してしまった。

 番組は安全審査に続いて硝酸ウラニル溶液の1986年の最初の契約を取り上げた。ここに初めて「均一化」が求められた。JCOは1バッチ縛りで作成し、輸送したいと提案したが、動燃が1ロット40リットルの提案をしたことが説明される。輸送に伴う確認申請の効率化のため、4リットル容器1ヶを分析すれば残り9個の分析は省略可能という説明もされる。クロスブレンディングの労働負荷の高い作業であったという丁寧な画像説明もあって、吉田氏の次のような見解を放映してしまった。
 「均一化は必要ないことであった。常陽の燃料としても必要ないし、輸送の確認申請にとっても必要ない。」均一化などということが動燃から注文されていたとは事故が起こるまで知らなかった、と吉田氏は開き直ったのである。

 NHKがこのことを報道したことによって、臨界事故の真の原因がはじめてマスメディアの表舞台に出たことになる。我々が「東海村臨界事故」(高文研)に指摘したこと、またたんぽぽ舎ホームページ「国家の犯罪」に具体的に述べたことであるが、事故は動燃の40リットル均一化注文によって起きたのである。NHKはナレーションで40リットルは約7バッチであり、臨界の危険があった、と解説している。同時に「バケツは違法」ともナレーションしているので、一般には何を言っているのか番組の真意が「難しい」ということにもなったので、解説しておくことにしよう。
 番組はテレビであるが故に可能な画像の手法で、バケツ作業を正確に描いた。電熱器の上にステンレスバケツがあり、その上に排気ダクトが描かれていた。このバケツに2.5kgのウランを水と硝酸で溶かして、6.5リットルにした。これで製品(硝酸ウラニル溶液)は完成していたのである。NHKは解説しなかったが、作業者のこの作業こそ、最も正確で安全な1バッチ縛りの作業であった。この6.5リットルを分析し、こぼれないようにフタをして、動燃に運べば、何も問題も無かったのであった。吉田氏が「均一化は必要なかった。」というのはこのことである。(より正確にいうならば、吉田氏はバケツではなく精製施設で6.5リットル作り、そのまま輸送すればよいという主張である。)  

 NHKは番組作成の意図として、作業者が沈殿槽を使ったという最後の結論は解っているので、それに至る20年を考えよう、という趣旨を語っている。であれば、何故沈殿槽を使ったか、よりも、何故40リットル入れたのかの設問のほうが本質的設問であることを、ナレーションすべきであった。そうすれば「40リトルは臨界の危険あり」というナレーションも生かされたであろう。言うまでもないことであるが、ウランの臨界とは量の境界のことである。一定量以上を一カ所に集めるとウランは核分裂の連鎖反応をする。だから「なぜ沈殿槽を使ったか」よりも「なぜ40リットル入れたのか」のほうが、本質的設問である。

 これまでのマスメディアの報道は「貯塔は形状管理されていたが沈殿槽は形状管理されていなかった。」「その沈殿槽を作業者が知らずに使った」ので臨界になった、という説明が一般であった。NHKもこのことは指摘している。これは「作業者が臨界安全教育を受けていなかったから」という指摘とも呼応している。しかしこの指摘は一面の真理ではあるが、事故原因の本質をはぐらかす巧みなすり替えでもあったのである。政府(原子力安全委員会)の最終報告書も、水戸地検の起訴状も、3月3日の水戸地裁の判決もすべてこの論調で、作業者の行為を説明し、ある人は作業者を論難し、ある人は作業者を弁護した。この論調は「何故40リットル入れたのか」の設問を棚上げした。この設問を無かったことにした。
 何故なら、この設問をしたとたんに「40リットル均一化の注文をしたから、40リットル入れたのである。」という答えが出てしまうからである。そしてこの注文をしたのは動燃だ。本星がたちどころに見えてしまう。「東海村臨界事故」(高文研)の読者も「東海村臨界事故への道」(NHK)の視聴者もこのことに気が付いてもらいたい。 

 そこであらためて強調したいことであるが、事故はまったく「必要無い」ものづくりの注文によって起きたということである。均一化は必要なかった。必要ない均一化のために、大内久さんと篠原理人さんは亡くなった。横川さんと竹村さんは有罪となった。600余名の住民が被曝した。判決は横川主犯説であった。何という不条理であろうか。 

 細かいこととはいえバケツについても解説しておきたいことがある。番組は「バケツは違法」とナレーションした。政府も福島瑞穂質問への回答で「バケツは違法」といっている。しかしながら政府は「必ずしもバケツだけが安全とは言えない」とも言っている。バケツがいけないのは「許可申請手続き」をしなかったからという法律論であって、ものづくりの方法論として論ずるのは巧みに避けているのである。

 NHKは流して見ている視聴者には全く気が付くようにはしてないが、1984年の許可申請書の臨界安全管理のC表を画面に出した。これは臨界形状管理の三つの場合を表にしたもので、円筒ならば直径17センチ、長方形なら高さ69ミリ、そして容量9.5リットル以下の容器、が明記されているものである。この9.5リットルの数字こそはバケツが「臨界形状管理」であったことを証明するものであった。

 また番組は輸送のウルトラC、製造のウルトラCについても動燃の大島文博氏(契約当時の発註責任者)に語らせた。私は言葉は聞いていたが、今回初めて解った。輸送の確認申請は、硝酸ウラニル溶液の濃度他の分析値を明記して作られるものであるところ、申請書をはじめに作っておいて申請し、JCOが申請書通りの硝酸ウラニル溶液を作って輸送することにしたと言う。科学技術庁は「違法ではないが、普通ではない。」とコメントしたという。ものづくりのモラルが腐っている。当事者(動燃、JCO、科技庁)の関係が腐っているのだ。大島氏は「効率よくやるということを製造のウルトラCといったが、バケツが良いとしたわけではない。」などとコメントした。
 あとから吉田氏が「不必要」と全否定するとは思ってもいなかったのだ。必要のない均一化を「効率よくやる」とはウルトラC以上のことには違いない。

 3月3日の水戸地裁判決の日の動燃の記者会見が放映された。記者が「動燃はJCOに納期などで無理を言ったのではないか?」という質問に、大島氏は「自分もJCOの現場を知っているが、それほど難しい仕事だとは思っていない。」と断言し、佐藤隆博氏(訴訟対策室長)は「臨界の危険について質問しているのか、疲れることを質問しているのか質問の趣旨が一貫していない」とふんぞり返った答弁をした。視聴者は動燃に違和感を持ったに違いない。

 NHK・小川五郎解説委員は動燃・都甲康正理事長に記者会見した。「発註者として、動燃にも責任があったのではないか?」という小川氏の質問に都甲氏は「まさか安全上重要な規則を破るとは思っていなかったので手の打ちようがなかった。」と弁解した。
 しかしながら違法行為は動燃だったのである。40リットル均一化は臨界の危険があっただけでなく、1バッチ縛り違反であった。これは内閣総理大臣の許可条件違反である。明かな違法注文であるが水戸地検と水戸地裁は免責した。国家の犯罪である。都甲氏も吉田氏が「必要ない」と述べているとは知らず、JCOの違法行為のみを語ったのであった「まさか逸脱行為をするとは・・・」とJCOを非難したのだから、まるで動燃が被害者であるかの如く演出をしたわけである。世の中は逆立ちしている。3月3日の判決は被害者(死者と被告)を加害者として有罪とした。

 NHKはこの現実を解る人には解るように報道した。番組最後の結論は「プルトニュウムサイクル路線は立ち止まって考えるとき」というものであった。ようやく欧米の常識を持ち出すメディアが出てきたと言うことかも知れない。



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