第80回いろりばた会議(2003年11月20日開催)より抜粋
自衛隊は被曝する

山崎 久隆さん
(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会代表、市民運動ボランティアネット@nifty)
文責:いろりばた会議事務局
〈目次〉
自衛隊がイラクに行ったらどうなるか
米軍はサマーワで劣化ウラン弾を使った
オランダ軍もアメリカに騙された
ガンマ線測定器の針が振れなくても危険
(説明)
2003年11月開催・第80回いろりばた会議での山崎久隆さんのお話「劣化ウラン最新事情〜低線量被曝は危険だ」より、自衛隊のイラク派兵にかかわる部分を抜粋して掲載します。

劣化ウランについてはますます話が広がりを持ちつつ大変な状況になってきていますが、現状イラクに行ったらどうなの?って、これは反戦運動なんかをやっている人たちもやっぱり気になるところだと思います。
「自衛隊がイラクに行ったらどうなるの?」と。
アサフ・ドラコビッチさん(市民団体ウラニウム・メディカル・リサーチ・センターを主宰。アフガニスタンとイラクで使われた劣化ウラン兵器の調査・分析をしている。この11月に来日)ははっきり言います。「医療支援として、お金も含めていろんな物資をイラクに提供する、人道支援、これは必要でしょう。でも、私は羊は送りません」と。これは比喩的な言い方で、生きたものをイラクに送るということはしない、と。「生きたもの」っていうのは、人間ですね。
要するに、イラクに行けば確実に被曝をします。その程度が高いか低いかという違いはもちろんあります。期間が長ければ長いほど、例えばイラクに住んでいれば、もちろん高い確率で被曝をするでしょう。1日や2日で帰ってくるんだったら、ほとんど影響はないでしょう。そういうように、要はどこに住んでいて、その地域はどれだけ汚染されていて、何日住んでいるか、何カ月住んでいるかという関係で、もう決まってしまうわけですね。
従って、安全を採るならば、それは「行かない」という選択肢しかないだろうと。例えば、ある程度のリスクを冒してでも自分がしなければいけないということがあるならば(それはボランティアも含めてそうですが)、事前にリサーチをして、どこがどれだけ危険なのかということを知ったうえで行くか行かないかを判断するべきだ、というようなことをドラコビッチさんは言っていました。自衛隊のように、命令によって派遣をするなんていうのは愚の骨頂だと。そんなことは人道的にもとても許されないというようなことを言っています。
で、「アル・サマーワはどうですか?」と記者が聞いてるわけですね。私も聞きたいところではありますが、それはドラコビッチさんに聞くのはちょっと筋が違うだろうとは思います。彼は研究者です。ジャーナリストとか、あるいは活動家ではありません。活動家ならば、もちろん「危険です」というところを、彼はやはり何もそれには答えなかった。
けれども、単純に言えます。危険です。アル・サマーワというのは、今でこそ大した戦闘がないというふうに新聞なんかにも書いてあります。けども、それは間違いです。
1991年湾岸戦争の時に、サマーワでは、郊外に橋があるんですが、橋を巡る攻撃で街中の施設も含めて爆撃により破壊されました。また、劣化ウラン弾も使われました。けれども、1991年湾岸戦争の爪痕は、その後のイラク人自らによる復興によってほとんど原型を回復したんですね。従って、1991年湾岸戦争の影響は外見上は見られません。
ただし今回のイラク戦争において、サマーワの郊外で、イラク軍の橋を守ってる部隊とアメリカ軍の第3師団と戦闘になりました。市民を112名巻き添えにする戦闘で劣化ウラン弾を大量に使ったということが、実はアメリカの従軍兵士が自分の故郷に送った手紙の中にちゃんと書いてあるわけです。「われわれはサマーワおよびその周辺の攻防戦において、激烈な戦闘に勝利をした」。その中でも、25ミリ劣化ウラン弾、これは何に積んでいるかと言うと、よくテレビに出てきますけれども、ブラッドレー装甲車両というのがあるんですね。戦車を小さくしたようなやつで、装甲車の上に砲塔が付いてるようなやつです。あの上に付いてる砲塔は何かというと、25ミリ機関砲弾です。これは実は、劣化ウラン弾を撃ちます。この25ミリ装甲車から撃つ劣化ウラン弾を大量にこのサマーワで使ったことを、アメリカ兵自らが明らかにしています。相手はイラクの軍隊です。それに対して劣化ウラン弾は極めて高い能力を発揮したとはっきり書いています。
従って、その街中、あるいはその周辺でイラク軍と戦闘になって、ブラッドレー装甲車から劣化ウラン弾を撃ちまくったということになるわけです。その影響がどれだけ残っているのか、分かりません。アメリカ軍はサマーワについては、破壊された戦車や何かをどうもさっさと片付けたらしいです、。共同通信の人がサマーワを取材に行って、どういう状況だったかということを教えてくれましたけれども、街中はほとんど戦闘の状況が残ってるものはないと。破壊された戦車とか、そういったものも見当たらない。けれども、その町で戦闘があったことは事実であると。
で、もう一つ重要なことを教えてくれました。それは新聞にも載っています。サマーワの病院で取材をしたところ、湾岸戦争以後、この街においても白血病や癌になる人がどんどん増えていき、最大4〜5倍というレベルにまで上がっていったということを明らかにしています。これは何か。1991年湾岸戦争の影響をサマーワは受けていたということを意味するわけです。
そのサマーワという地名ですけれども、インターネットで探すとやっぱりいろいろ出てきます。1991年湾岸戦争のイラク軍の戦車部隊がそのサマーワの郊外をずっと移動している時に、米軍が空から攻撃して戦車部隊を壊滅させています。それがサマーワです。
あるいは、街の中の石油精製施設、これに猛爆撃を加えて破壊しています。当時は劣化ウランを爆弾には使っていませんけれども、爆撃があった所は必ずA10サンダーボルトという攻撃機が地上攻撃で劣化ウラン弾を撃っているというのが、ほかの地域でも認められています。従って、サマーワは1991年湾岸戦争においてはかなり劣化ウラン弾攻撃を受けていることは間違いありません。で、今回のイラク戦争においても使われた。これはアメリカ兵自らが認めているわけですから、もちろん間違いがない。そういう地域に日本の自衛隊は行こうとしています。
実は、サマーワという地名を私が初めて耳にしたのは、自衛隊の派遣の話よりもはるか前の8月で、オランダの部隊がここにはいます。ところが、オランダ軍はここに展開するにあたってアメリカから、“サマーワというのは何もない街”と、人も住んでいないかのような説明を受けたらしいんですね。とんでもない、10万人規模の街ですけれども。そのサマーワではほとんど目にするような戦闘行為はなかったということをアメリカはオランダ政府に言ったわけです。そうすると、オランダ政府はそれを真に受けて、議会にそう説明したわけです。
そうすると、オランダの市民は「本当か?」となるわけですね。ジャーナリストも含めて、一所懸命調べ始めます。すると、インターネットをちょっと検索しただけで、さっき言ったような交戦記録というものがぞろぞろ出てきたわけです。それでオランダでは、いったい何を考えてるんだということで、もちろん国内では大反対運動が起きます。それでクウェートに実はオランダ軍は1カ月くらい足止めになったんですね。そういう記事をアメリカの報道機関を通じて知っていましたので、そのことを紹介する文章を書いたんです。
そうしたら何と、今回自衛隊が行くという話になっているわけですね。まあ、またオランダ軍と同じように日本軍もアメリカに騙されるのかどうか知りませんけれどね、自衛隊の先遣部隊、調査部隊が行っています。
どうも自衛隊は今度の派遣に放射線測定器を持っていくらしいということが記事になっています。放射線測定器を持っていってもいいですけれども、分かってる人間が使わない限り機械というのは使えません。素人が使って使える機械ではありません。
それからもう一つは、針が振れて高い数値が出ればそれは「危険だ」、当たり前ですね。放射線測定器を使って、針が振れて、これは劣化ウラン弾が埋まってるとか、破壊された戦車であるとか建物だということが分かればそれは悪いことじゃないかもしれない。
けれども逆に、針が振れないから安全だと判断するのが一番怖いんです。こんなものは、針が振れるかどうかというのは、よほど高濃度の汚染がない限り、劣化ウランに関してはアルファ線測定器を持ち込んだとしてもほとんど針なんて振れません。
もともとウラニウムはアルファ放射体であり、微弱ですがガンマ線も出します。で、一般的に市民団体だとかいろんな人たちが持っていって測っているのは、ガンマ線測定器が多いです。これは高濃度に集結したウラニウムからですとかなり強いガンマ線が出ますので、それでウランがあるということが分かるわけですね。
街中を走っている核燃料輸送車、あれ全部ウラン積んでますね。そうすると、そぐそばまでガンマ線測定器を持っていけば、環境値の100倍くらいまで針が振れます。それは1トンも2トンも積んでいるからで、まとまった量のウラニウムに対しては、ウラニウムから出るガンマ線は測定できるわけです。
ところが、1トンどころか、1ミリグラムだとか1ナノグラムだとかいうレベルの粒子がうっすらと積もってるような所にいくら測定器を近づけても針なんて振れません。でも、そこは確実に危険です。
で、ガンマ線測定器を持っていくことは、却って「ああ、ここは安全なんだ」っていってそこへ野営してるというような事態を引き起こしかねないわけです。本当にそこが安全かどうかを知るためには、ドラコビッチ氏がやったレベルまで行かなくても、核種分析装置というものを使ってウラニウムが出るかどうかというのを測定しなきゃいけない。これは、薄い濃度ならば、1検体測定に24時間ぐらいかかります。
更に、この劣化ウラン粒子っていうのは、自分だけではなくて自分の子供たちに影響を与えるわけですね。染色体を傷つけるということは、遺伝子も傷つけるわけですから、何世代にもわたって打撃を与え続けるというのが、この放射線被曝の恐ろしさです。しかも、ウランの場合は粒子が小さいものですから、胎盤を通して胎児にまで行ってしまうという、そういうサイズのものですね。従って、女性の場合は直接、または男性の場合も生殖細胞である精子にまでこれが行ってしまうということですから、止めようがない。体に入ってしまったウラニウムの挙動を止めようがないというのが実態です。

(終わり)