第77回いろりばた会議録(2003年6月19日開催)スペシャル
(「今月の原発の焦点」より)
劣化ウラン最新事情(2003年6月時)
山崎 久隆さん
(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会代表、市民運動ボランティアネット@nifty)
文責:いろりばた会議事務局
「大量破壊兵器」、ツワイサの核汚染、自衛隊派兵と劣化ウラン
〈目次〉
イギリスが使用した劣化ウランの撤去を約束した?
いくら捜しても出てこないイラクの大量破壊兵器
イラクの劣化ウラン弾汚染
アメリカ軍のパンフレット「劣化ウランに攻撃された車輌には近寄るな」
ツワイサの核汚染
大量破壊兵器、“最後まで使わなかった”ということが重要
アメリカ3大メディアが本当に駄目
◆質問◆
今回の攻撃で使われた劣化ウランの総量は?
自衛隊を派遣しようとしている日本政府の劣化ウランへの対処は?
2003年6月のいろりばた会議、山崎久隆さん「今月の原発の焦点」では、3つのテーマを取り上げました。
1つ目のテーマとして、「壊れた原発」(四国電力の伊方原発、関西電力の美浜原発で起こっている応力腐食割れ)、2つ目のテーマとして、「停電危機?」(東京電力の原発のほとんどが停止した状況で夏を迎える東京と現地・福島、新潟、そして各産業界の対応)。
そして3つ目のテーマとして、4月の“戦争終了”後のイラクの状況を、劣化ウラン問題を中心に取り上げました。この2003年6月時点での「劣化ウラン最新事情」をお伝えいたします。
劣化ウラン問題に関しては、今回の場合は前の湾岸戦争と典型的に違うのは、アメリカが戦争が始まる前に“今回の戦争で劣化ウランを使うぞ”と事実上宣言をして戦争をやったということです。その観点から、戦争中から劣化ウランの使用ということに関して注目が集まっています。
で、アメリカやイギリスは「安全だ」って言って使ったわけですけれども、さすがに世論の批判にイギリスがどんどん折れ始めました。“まず最初はイギリスから落とす”っていうのが、まあ常道です。
イギリスはどうしたかというと、“今回の湾岸帰還兵に関しては本人の希望があれば健康診断を国の予算でしてあげますから、どんどん申し出てください”という対応になっています。
それから、これもどこまで真意なのかと確認ができないのでちょっと困るんですが、例えば英紙インディペンデントだとか米紙クリスチャン・サイエンスモニターなどの報道によると、「イギリスは自分の使った劣化ウランについては撤去するということを約束した」というんですね。
どうやってやるのかさっぱり分かりませんけれども、ただUNEP(国連環境計画)だとかWHO(世界保健機関)だとか、あるいは英国の王立アカデミーなどは「使用した連中が劣化ウランを撤去しろ」という要求を突き付けていますのでね。つまりアメリカ、イギリスに対して劣化ウランを撤去しろという要求を出していますので、いわばそれに応えるかたちで答えは出した、と。つまり「回収をする」という答えは出した。ただ具体的な方法などについては全く白紙。だから、いまだに作業は着手されていないわけですね。
本気で対処する気があるとしたら、とんでもない作業になる。これはダグラス・ロッキーというアメリカの予備役将校(実際自分も劣化ウランに被曝をしてる人ですけれども)が、前の湾岸戦争の時に除染費用がどのくらいかかるのかということを試算した結果、“2000億円”という大雑把な試算が出ています。これは前の湾岸戦争の時です。だから今回も含めてしまえば、もっと膨大な金がかかるということは当然分かる。“誰がそんな金出すの?”と。“イギリス政府がその金を全部出して劣化ウラン撤去してくれるの?”と。まあできるかどうかは別問題として、それだけ予算を貯めてそういう努力をしようとするのかということがこれから注目のポイントになります。
で、大量破壊兵器問題に関しては、もうアメリカもイギリスも政府の責任問題になってますね。とりわけイギリスの場合は、これでもしかしてブレアが首相の座から落っこちるんじゃないのっていうくらいに厳しい状況になっています。捜索しても全然出てこないもんだから、地元の労働党の議員が次々とブレアに対して「あれはねつ造だったんじゃないのか」、「われわれは騙されたのだ」ということで、イギリス議会の中で大変な問題になっています。
アメリカでもほとんど問題が噴出し始めていまして、民主党の議員を中心として「ブッシュはわれわれを騙した」、「調査委員会を作れ」ということで議会調査委員会ができそうな勢いです。それがもしできて本格的な調査が始まったら、まずニジェールウランの問題っていうのがもうバレてますから。
ニジェールウランの問題っていうのは、第2次湾岸戦争が始まる前に“イラクはニジェールから天然ウランを密輸して核兵器用に濃縮しようとした”っていう疑惑なんです。で、じつはアメリカがIAEAにこれを証拠として提出したんですね。提出されたIAEAは、その文書を数時間見ただけで偽造文書だと見破ったわけです。それで「こんなの嘘だ。偽物だよ」って言ったんですが、アメリカは依然としてそのニジェール問題をずーっと言い続けた。それがアメリカ国内でちゃんと報道されなかったのが後になって明らかになり、大問題になったという事件が一つありました。
この“ニジェール・コネクション”という大量破壊兵器に関する大きな嘘がバレたあとだけに、今回アメリカが大量破壊兵器疑惑に関していろいろ「あれもある、これもある」と言ったことが全部嘘だとバレてしまったら、さすがのブッシュ政権もかなりの窮地に立たされる。ただ、その段階で多分彼らはシフト・チェンジというか、「だってフセイン政権打倒して独裁者いなくなったからいいじゃん」というふうに、ほとんど子供のケンカのレベルですけれども、そういう言い訳に切り替えるために着々と手を打とうとしているような気配は見てとれます。
ちなみに「トレーラーが何台か見つかった」っていう話がありましたね。「トレーラーが何台か見つかった。あれは大量破壊兵器のうちの生物・化学兵器を製造する移動生産所だ」という話だったんですけれども、イギリス軍がそのトレーラーを実況検分した結果、「これは阻害気球打ち上げ用の水素製造装置だということが分かった」と。
阻害気球とは何かというと、日本でもやったんですが、空襲を受けるときに空を飛んでくる飛行機を妨害するために気球を上げるわけです。そんなもので別に妨害はできないんですけどそれでもやらんよりマシ、くらいのもんです。これは第一次世界大戦の頃からあった古典的な兵器なんですが、要はバルーンの中に水素を詰めて打ち上げるだけです。風船爆弾ですらないですね。その阻害気球を打ち上げるのに、バグダッドの郊外でやんなきゃいけないから移動トレーラーを使って水素をどんどん発生させてバルーンに詰めて上げる。そのためのトレーラーだったということが分かりました。だから生物・化学兵器とは何の関係もない。もっとロートルっていうか、えらい古い兵器体系の一部に属するものであることが分かった。全然問題にならない。そういう状況です。
だから大量破壊兵器の「た」の字も出てこない。イペリットの「イ」の字も出てこない。えー、恐ろしいことに、日本軍が埋めたイペリットの影響で、茨城県の神栖町で現在ヒ素中毒で大変な問題になっている。あれは日本の大量破壊兵器の残滓です。中国でも同じであると。そういうくらいに、じつはイラクよりも日本の方がそういう問題を抱えて大変だという状況です。
さらに劣化ウラン弾ですが、その劣化ウラン弾が使われた場所っていうのは、いろんな人が現地調査をやってかなり明らかになってきました。クリスチャン・サイエンスモニター紙だとか、日本でいうならば藤田祐幸さんだとか、あるいは豊田直巳さんだとか森住卓さんが測った。ただ体系的な調査ではなくて、ピンポイントで使った場所っていうのを捜索しただけなんですが、それによると一番高い値っていうのは、クリスチャン・サイエンスモニター紙が公表した数値では「環境値の1900倍」。ものすごい量ですね。それがどこかというと、イラク計画省という普通の政府機関の建物です。別に軍事施設でもない政府機関の建物なんです。このコンクリートの建物に対して、A10サンダーボルトという攻撃機が滅茶苦茶に銃撃したんですね。何の意味があるのかっていうと、別に意味はほとんどありませんけれども、そこに使ったのが劣化ウラン弾なんです。で、壁の中に大量にめり込んでるわけです。そこには現在も職員が通勤してきてるわけですよ。そこで測ったところ−劣化ウラン弾が転がってるわけですね−、1900倍っていう値が出ました。
それからバグダッド市内にある交差点のど真ん中に、イラクの軍用車輌が焼け落ちてあるわけです。交差点の真ん中なら邪魔だろうからどかせばいいだろうにと思うんですが、危険すぎてどかせない。中には戦車弾の劣化ウラン弾が撃ち込まれた状態で残っていて、これは直径5cm、長さ90cmくらいですね。戦車は当然焼け残ってますから、中も劣化ウランの粉塵で汚染されています。これが環境値の1300倍。
それから町の郊外にある市場。隣で屋台出して物売りしている。その「4歩先」っていうから、2メートルくらい先ですか、そこにある戦車の残骸。これも劣化ウラン弾で破壊されている。じつは戦車なんかは4輌あったそうです。4輌のうち3輌はアメリカ軍が持っていったんだけど、1輌だけ残していった。何でかっていったら、危なすぎて持ち運べなかった。これが環境値の1000倍。
そういう状態のものがごろごろ転がってるんですね。それであまりにもひどいというので、そのイラクの人たちが今抗議デモをいっぱいやってて、「占領軍アメリカ(つまりフセインに取って代わった独裁者アメリカ)、帰れ」というのをやってますが、場所によっては「劣化ウランの汚染をどうしてくれるんだ」というようなスローガンでもデモが行われている。そういう状況です。
しかしアメリカ軍はそれに対して手を付けられない状態なんです。平服でそんなものに近寄れませんし、実はアメリカ軍は内部で“劣化ウランによって攻撃をされたということがハッキリ分かる車輌については近寄るな”というパンフレットを出している。つまり自分たちの兵隊が被曝をしてえらい目にあったのが、前回の湾岸戦争だった。1万数千人の人がもう既に、他の原因も含めてですが亡くなっている。全体で40何万人か行ってるわけですが、20数万人が日本でいうなら障害手帳が渡される傷痍軍人である、と。そのうち1万人が死んでいる。そういう状態ですから、これをもう一回繰り返した日にはアメリカはもうもちませんので、「劣化ウランで攻撃されたと分かるものについては近寄るな」と。それから「戦闘中に相手を劣化ウラン弾で攻撃した場合、ハッチを閉めて口を閉ざして全速力で走り抜けろ」、そういう指示が出てるそうですから、そんな劣化ウラン弾で破壊されたと分かっているイラクの戦車には誰も近寄らないわけです、アメリカの兵隊は。
で、一所懸命近寄ってるのがイラクの人たちなんです。近寄ってるっていうか、知らないですから。で、それを測りに行ってるのがジャーナリストだったりするわけです。それで危ないからってテープを巻いて帰ってくるのがジャーナリストの仕事になっています。そんな無茶苦茶な話がありますかっていうのが実態ですね。それで、イラクの国内で大変な問題になってます。藤田祐幸さんが測ったのはバスラで100倍。環境値の100倍の放射線が出ている車輌があったということで、いわばもう町中です。砂漠のど真ん中でやったんじゃないわけです。バグダッドが人口500万人、バスラで30万人、そういう人口密集地の真ん中でそういう戦闘をやったということがもう明らかになっています。
もう一つ問題なのは、ツワイサという原子力施設があります。これはイラク最大の原子力研究機関があった所で、原子炉もありました。それは前の湾岸戦争で破壊されてしまって跡形もないんです。残っているのは放射性廃棄物だけ。あとじゃあ、原子力研究施設で何をしてたのかというと、ラセンウジバエという害虫の不妊化処理をやってた。いわば害虫根絶の仕事。生物農薬ですね。日本でいうならウリミバエを絶滅させたのと同じです。ようは放射線で不妊化処理をした害虫を放出をして全体の数を減らすというような生物農薬の研究なんかをやってた。これは放射線を使いますから。
ところがそこはイラク軍が警備してたわけですけれども、4月4日にアメリカの海兵隊が近付いてきたっていうんで、イラク軍は交戦せずにとっとと逃げちゃった。
で、翌日の4月5日にアメリカ軍海兵隊が突入したわけです。イラク軍がいるだろうと思ってますから、戦闘態勢で突っ込んでくるわけですね。扉は吹き飛ばすは、鍵は破壊するは、中に飛び込んで、機関銃は乱射しなかったかもしれないけれどもあらゆる鍵やなんかをぶっ壊していくわけです。まあそりゃ戦争ですから。テレビでもテロ対策の演習の風景なんかを見ますよね。ドア蹴破って入っていきますよね。あんな雰囲気で入っていくわけですから、それこそせっかくIAEAが封鎖をして“ここには核物質があるから封印をしていく”というような所もそんなのお構いなしにみんな破っていった。その後、「ここは何もなかった」、「ああ、つまらんなあ」というわけで、海兵隊は撤退するわけです。撤退して近くの町へ行っちゃったわけです。そんな原子力施設に長居したって彼らにとっても益がないし、もともと核兵器があるなんて思ってもいませんから、とっとと撤退してしまう。
すると、そのあとガラーンとしますね。誰もいなくなっちゃう。じつは近くの宿舎には1000人くらいの技術者がいるんですけれども、何しろ1万ヘクタールという広大な敷地の中にある施設なんで、そういう広大な施設のいろいろな警備システムがみんなアメリカ軍によって破壊されたあとなので、近くの村人がみんなぞろぞろやってきて「何かいるもんないかな…」っていうんで持ってっちゃったのが、「放射性廃棄物の入ってる樽」です。その中にはイエローケーキ(鉱山から掘り出されたウラン鉱石を製錬したもので、含まれる放射性物質は天然ウランだけではなく、ラジウム、トリウム、ラドンと、ウラニウムの崩壊系列上に存在する核種のいわば複合体)もあったし、濃縮ウランもあったし、セシウムやストロンチウムといった廃棄物が入ったものもあった。でも知らないもんですから、「中身はいらない」っていうんで全部その辺に投げ捨てていった。イエローケーキって茶色い土のような感じなので、なかには「肥料だと思って畑に撒いた」っていうのもあった。または「市場へ持っていって(どういうふうに持ってったか分からないけど)、肥料だと称して売った」っていうんですね。で、もうあっという間に汚染が拡散してしまったわけです。
だからツワイサという施設の約1万ヘクタールの中からそういうものがどんどん周りの村へ流れていって(大体5千人くらいの人々がその周辺4つの村落に住んでるそうですが)、全員が被曝してしまうという状況になりました。なかにはもう急性障害を出していて、発疹(まあ水ぶくれですね)が出たり、それから熱が出て鼻血が止まらない、と。いわばチェルノブイリであるとか、あるいは広島・長崎であるとか、あるいはJCO臨界事故だとか、そういう事件で見てきたような症状と全く同じ症状が、周辺村落の一つに膨大な数で出始めています。それで治療はっていうと、放射線治療の専門家なんてもちろんいませんから、普通の病院に入って「熱が出た」と言えば熱冷まし(冷やすだけ)とか。そういうふうに、ほとんど治療らしい治療が出来ないままに過ぎていく。まだ死者が出たっていう話は報道では伝わってきていませんけども、放っておけば次々に人が死んでいくという状況になりかねない。
それで、じつはIAEAがそのニュースを知ったのが4月の上旬です。外電で知った。で、慌てふためいてアメリカ軍に対して「施設を警備しろ」と要請をしたわけです。それで、ようやく1週間ぐらいたってアメリカ第3師団の兵隊がそのツワイサの施設にやってきて、略奪を防止するために警備を始めました。その時の人数が40人です。1万ヘクタールの敷地に対して40人の兵隊がその入り口やドアに立って警備になるか?っていうくらいの人数ですね。しかも彼ら自身も怖いんです。というのは、みんなサーベイメーター(携帯用の放射線測定器)を持ってるんですよ。そうすると、そのイエローケーキが置いてあったという建物の数10メートル先−扉が遥かかなたに見える。フジテレビのカメラマンが望遠レンズでようやくその建物の中の様子が撮れるという位置−に来たときの測定値が、環境値の700倍です。700倍の空間線量っていうのは、広島・長崎は別として、かつてのチェルノブイリの周辺ぐらいでないと観測できないくらい高濃度の線量です。空間線量ですから。劣化ウラン弾の表面を測れば1000倍ばかり出ます。これは当然放射性物質そのものですから、強い放射線を出すのは当たり前です。「空間線量」というのは、“周り中から来る放射線の量がそれくらいの量になってしまう”ということですから、これは地上からも来るし、空からも来る。そういうふうに周り中が汚染地帯だと。それこそ放射性廃棄物が周りを散ってるからそういう線量になるわけですね。だから、そんな所に海兵隊の兵隊だって怖くて入れませんから、みんな逃げ出して一番外側に張り付いてる状態なわけですよ。
それで、これじゃあまりにもどうしようもないということで、シーア派の寺院の聖職者がアメリカ軍からお金をもらって、“略奪物一点につきすべて3ドルで買い取る”という布告を出したわけです。そしたら集まってくるわくるわ。そりゃ来ますわね、3ドルっていったら住民にとってはすごい大金なんですよ。われわれにとってみれば300数十円ですけど、彼らにとってみればそれこそどうしようもないようなドラム缶1個だって3ドルなわけですから。穴の開いたドラム缶だって持っていけば3ドルくれるっていうんで、それで確かに集まった。寺院の庭がいっぱいになって(その寺院の広さっていうのがよく分からないんですけど)、山積みになってる写真があります。さらにそこだけで収まりきれないっていうんで、寺院に付属している隣の学校(女子用の宗教学校らしいんですが)、その敷地にも膨大に山積みになりました。しかしそれは汚染物ですから、あまりにも汚染がひどいのでもう学校は休校、寺院も人は入れないと。立ち入り禁止。そういう状態です。
そういう写真が新聞なんかに載ってますが、人間の背丈くらいの高さの廃棄物、いわば廃棄物の山ですね、その中に「ジュラルミンのアタッシュケース」っていうのが3つあります。それを見た瞬間、その集まってくるものをチェックしていたイラクの原子力研究施設の職員が慌てて逃げ出したっていうんですね。何が入ってるかは書いてないんですけれども、「その3つのケースを見た途端に逃げ出した」というふうに記事には書いてあります。恐らくプルトニウム系の汚染物のはずです。それくらいしか考えられない。セシウムやストロンチウムくらいであるならば、もうほかのものにみんな付着してますから、そんなに驚いて逃げるほどのものでもない。でもそのジュラルミンケースだけは恐ろしくて逃げ出したというくらいですから。で、あとから怖々近付いてきて、鍵が破壊されてないのを確認してようやく安心したっていうんですね。つまり開いてないから。ところが、「それでも5メートル以上は決して彼らは近寄らなかった」というふうに記事は書いてある。“あれがジュラルミンのケースだ”というふうに指で指しながらの写真があります。そういう状態がツワイサで起きています。
ところでつい最近、あんまりひどいので日本の広島の市民団体が現地に行って状況を見ました。そうすると、その廃棄物の山に対してほとんど何の警告もないので、アラビア語で「これは極めて危険な放射性物質だから近寄るな」っていうんで赤いテープで囲ったと。そのテープそのものは夜になる前に盗まれちゃったらしいんですが、えー、そういうふうにでもしないと全く野ざらし状態で廃棄物の山が所々にできてるというのがツワイサ周辺の実態です。
で、IAEAはアメリカ軍に「とにかく中を調査させろ」と言うんだけれども、アメリカ軍は大量破壊兵器の査察であろうが何であろうが国連機関の入国を拒否してるんですね。「そんなの必要ない」って言ってるんです。どんな根拠があって拒否できるのか分かりませんけれども、「必要がない」という言い方をしていた。「自分たちでちゃんとやってるんだから」と。
ところが実態がひどいということが報道され、IAEAの調査チームが6月7日から2週間、人数7名の限定条件のもとに調査に入りました。IAEAはアメリカに、「われわれは大量破壊兵器の査察が目的ではない。放射能汚染の実態を調べるために行くんだ」と、そこまではっきり言うんですが、言外には“アメリカがこんな滅茶苦茶な管理をしてるとはとんでもない”っていうことを言ってるわけです。
で、IAEAのエルバラダイ事務局長は今度交替で辞めるんで、最近はもう歯に衣着せぬ言い方をしています。“私は1998年の査察中断以降、現在に至るまで(少なくとも1991年の湾岸戦争後から1998年の査察の期間中にそれについてはもう全部撤去したわけだから)、いまだかつて核兵器開発計画がイラクに存在するなどとは信じたこともないし、そんな証拠が挙がってきたということを聞いたこともない”と、これははっきり言ってます。だからそれは全部アメリカのねつ造だということを言ってる。それが実はイラクの現状です。
従って、劣化ウラン弾やそういう放射性物質の汚染ということでイラク全土を汚染しまくったのがアメリカで、大量破壊兵器で人を殺す計画などイラクには存在は、まあほとんどしなかった。っていうのは、やりたくてもモノがないんだからできないっていうのもあるでしょう。
大量破壊兵器に関して言うならば、一番重要なのは“それがあったかどうか”でもなくて“最後まで彼らは使わなかった”ってことが重要なんです。戦争の末期になってくれば、もうフセイン政権だって崩壊ですよね。崩壊するもうギリギリの状況まで追い詰められてるときにもかかわらず、大量破壊兵器なるものどころか弾道ミサイルすら使っていないわけですよ。つまりモノがないから。それは戦争ですから、“攻めてこられて防御するためにはあらゆる手段が正当化される”ってのが軍事の常識で、それはあるんなら何だって使おうとするでしょう。にもかかわらず使わなかったのは、なかったからだということが至極まともな結論であるということが言えます。
だから、アメリカ軍が最初に「あるある」と言って始めた戦争自体が、まあ大きな情報の隠蔽とねつ造、つまり情報操作によるものだし、今日に至ってはっきりしたことは“イラク全土を汚染しまくったのはアメリカ、イギリスだった”ということですね。
ということで、また続報を調べて報告をしたいと思います。現在劣化ウランに関する情報はいろんな意味でたくさん入ってきてます。それはもう事前に「使う」っていう宣言をしたこともあって、いわばメディアの側が“これ報道をしなかったらまずいよな”という意識のもとに、現地で調査活動なんかをやってます。またはIAEAなんかが入れば必ずメディアが付いていってその内容を知らせます。
ところが、それをやってるメディアというのは、まあ世界中にたくさんメディアあるので全部は言えませんが、大きく言うならば、日本はやってる方です。イギリスもやってる方です。インディペンデント紙、ガーディアン紙、BBC放送はちゃんと報道してます。で、その当の戦争当事国(今、戦争当事国を問題にしますから)アメリカは、大手3大メディア(ABC、CBS、NBCの3大ネットワーク)は全くといっていいほど報道しません。クリスチャン・サイエンスモニター紙とか、フロリダタイムズ紙だとか、地方紙は追いかけてる所はいくつもあります。これは前から劣化ウラン問題に熱心だった所が多いです。そういう所は、アメリカのメディアといえどもきちっと行動して報道してます。3大メディアが今本当に駄目です。ここが何もしない。
で、アメリカ全体に影響力があるっていうと、やっぱりこの3大メディアになっちゃうわけです。例えばクリスチャン・サイエンスモニターっていったって全米のほとんどの人が読んでないわけだし、フロリダタイムズっていったってそれはワシントンDCの人なんてほとんど読んでないしね、っていう状況になってしまう。
だからやっぱりアメリカの政府に一番影響を与えるっていうのは、少なくとも東部13州のエスタブリッシュメント(支配的富裕層)が読んでるようなニュースソースということになってしまうんで、そうなってくると3大メディアを巨大企業が買収をして支配下に置いてしまったというのは、こういうところに来て非常に大きな影響をアメリカの世論に与えてしまった、ということは言えると思います。
以上でおしまいです。
◆質問◆
| 会場 |
今回の戦争で使った劣化ウランの量なんですけど、もちろん正確なところは全然分からないと思いますけど、ニュージーランドのジャーナリストがアメリカ軍の当事者の人にインタビューしたのだと「500トン」というのは認めたようなんです。それで、この間の山崎さんの講演の時のレジュメに「5000トン」ていうのが書いてあるんですけど、この出所はどこなんでしょうか? |
この「5000トン」というのは、基本的には“誘導爆弾やなんかに全部詰めて落っことしたとしたら最大値は5000トンくらいいってしまいます”ということなんで、実際にはもちろんそれは最大値まではいかなかったでしょう。
で、一番少ない数字は現在のところ分かってるのでは、アメリカ軍が自ら認めた「A10サンダーボルトの機関銃弾30万発(=75トン)」って言ってますね。それがミニマムの数字。その中間値が、そのアメリカ軍大佐が言った「500トン」。その次に大きいのが、イギリスのダイ・ウイリアムズ氏が「2000トン」という数字を出しました。それから国連環境計画の担当者は「推定1100〜2200トンという量が使われた可能性がある」という指摘をしています。
従って、出ている数字をまとめると、ミニマム70トン。これはまああんまり意味のない数字ですので、ミニマムで言うならば、じゃあアメリカ軍大佐の500トン。最大値で言うならば、ダイ・ウイリアムズ氏や国連関係者が言った2000トン。こういう水準です。この幅のどこかだろうと考えていいと思います。従って、もう1991年の湾岸戦争の320トンを超えてしまっているということだけは確かです。
| 会場 |
今回イラク新法で自衛隊が1000人ぐらいイラクに行こうとしてるんですけれども、この劣化ウランの問題について、日本政府としては自衛隊に対してどういうふうにしようとしてるのか。外務省なんかも曖昧な態度を取ってるというふうに聞いてるんですけれども。 |
まあ、どうやったって何の対策も持ってませんね、今のところは。
| 会場 |
米軍にはあるでしょう?「近寄るな」とかそういうふうにやってるっていう。 |
やってますよ。もう既に一人一人に渡るパンフレットが作ってある。
| 会場 |
そうですよね。自衛隊には全然考えてないんですかね? |
さあて、アメリカからそのパンフレットをもらって日本語に訳すのかどうか知りませんけれども。いずれにしてもそれだけでなくて、とにかくまだ何にも考えてないですよ。
現実にじゃあ、「行くの?」って言った場合に、いったい「どういう指揮命令系統で現地へ行って」「誰が何を担当して」「どこまでやるの?」。で、「戦闘域ってなあに?」「戦闘行為ってなあに?」と。
もうすごい話、“自爆テロは戦闘でない”(【6月12日付asahi.com】より抜粋 13日に国会提出される予定のイラク復興支援特別措置法案に関連し、バグダッド周辺で頻発する自爆テロや砲撃、手投げ弾などの突発的攻撃について「組織的でなければ、戦闘行為と見なさない」とする解釈が政府内で有力となっていることが分かった。)まで言っちゃいましたから、わたしは頭を抱えてしまうんですけど、自爆テロが戦闘じゃなかったら、じゃあ今パレスチナで起きてるのはいったい何なんだっていうことになるわけですけれども、ようするに“戦争じゃない”っていうことにしないといくらなんでも行けないわけだから、“戦争じゃないよ”っていうふうに無理矢理こじつけるっていう感じですね。実態はもう、「部分的な交戦状態がまだ残ってる」ってアメリカが言ってるわけですよ。
じゃあ、“「そこには行かないからここは安全だ」みたいな切り分けを誰がどう判断するの?”とか、問題になりそうないろんなことが山のようにあるんだけれども、そういう議論以前に会期延長を先に決めちゃって、“新法を通すんだ”って日程だけ決めちゃって、中身の議論はそのあとだっていうか、やる気がほとんどないような気がしなくもない。むしろ“議論なしで強行突破しちゃった方が政府としては楽だ”みたいな、そんな感覚でいるような気がしてるんですね。
だからどういうつもりなのかっていうのは、劣化ウランに関してもそうですし、他の問題もそうです。全く私には理解不可能です。
本当に戦闘が起きてる場に行くんだから、それは弾飛んでくるかもしれないっていうのは、今までとは全く次元の違うことなんですよ。カンボジアとかとも全然違うでしょ。PKOの延長でも考えられないし、しかも日本は参戦国ですからね。参戦国の軍隊がそこに行くってことは、形式的にはアメリカ軍と同等に見られたってそれは文句を言えないわけですよ。だから攻撃の対象になったって仕方のないっていうような、いくらかはそういう立場で行かざるを得ないのに、それに対しても何にも考えてるふうには見えない。なんかもう、“周りは友好的に接してくれるだろう”みたいなね、わけ分かんない希望的観測でしか考えられないんだけれども、そういう有様ですから。
既に韓国軍は実際に行ってるわけですね。医療援助活動なんかをやってるわけですね。ところが、韓国は参戦国じゃないんですよ。そこの所を大きく間違えちゃいけない。韓国軍は確かにアメリカ軍のあとに兵隊を派遣することを決めたけれども、それは参戦している枠組みではない所で決めてるわけですね。日本は既にテロ特措法から始まって、ずるずるとイラク攻撃の参戦をしてしまったわけですよ。えー、空母キティーホークに間接的に給油しちゃったわけですから、これ参戦ですよ。そんなものまでやってしまったっていう自覚があるんだかないんだか分からないんですけど、“韓国軍兵士が現場でうまくやってるっていうことで、日本もうまくやれるんじゃないか”みたいな、そんな希望的観測で行かされるんじゃないかっていう気配がしてしょうがないんですね。だったらしょうがないからあんたたち韓国軍の兵隊の格好して行けば、って思うんですけどもね。そういうくらいに極端に中身のない状態ですから、とても劣化ウランのことなんて考えてるとは思えない。
むしろですね、そんな自衛隊を派遣するのはまた百何十億円もかかるんだと思うんですね。そんなに莫大な金かけて無駄なことするくらいだったら、百何十億円かけて医療品を今買って現地へ送る方がよっぽど人の役に立つ。同じ金かけるんだったらよっぽどそっちの方がまともです。
というのは、最近の報告でヨルダンの人が言ったのかな、「イラクには人もいる、技術もある、能力もある、知識も高い、必要なのは医薬品と施設だけだ」と。だからちゃんとした設備とちゃんとした医薬品。まあ、設備の中には電力も含むわけですよ。電気も来ないような病院で診療せざるを得ないということが彼らの状態です。だから、イラクの医師たちがちゃんと診療できる場所と医薬品が揃っていれば、わざわざ自衛隊が行く必要は全然ないんです。
あるいは物資の物流だって、別にイラクにトラックがないわけじゃないんだけど、足りないならあげればいいんです。運転手、たくさんいますよ。仕事できる人もたくさんいますよ。2500万人の国なんですよ。で、そのインフラだって壊れたものたくさんありますけど、彼ら自身が補修をして使えば、すぐに前の状態に戻すだけの知識も技術も能力もあるんですよ。必要なものは資材であったり流通経路の確保であったり、あと不発弾処理ですね。
一番の問題は、“アメリカが撒き散らした不発弾をどうするか”。今一番人を殺してるのは、多分これです。だからそういったことが重要なんですよ。じゃあ自衛隊が行って不発弾処理をやるのか、という話なんです。そんなことはアメリカ軍がやるべきことであって、別に自衛隊がやる必然性は何にもない。まあ本当に日本人が現地へ行って血を流すとしたら、多分不発弾処理に失敗して自爆してしまうっていうのが一番ありそうな話ですね。そんなことすら想像できるような実態です。
だから“本当に必要なことは何なのか”っていうことが、ボタンをかけ違えたらこれだけ無茶苦茶な議論になるんだなっていうことがよく分かりました。
イラクっていうのは、例えば−まあこういう言い方は語弊があるかもしれませんけれども−技術もなければ人もいなくなってしまったコンゴやザイールとは違うんです。確かにこれらの国は医薬品も人もない。知識人がいわゆる住民虐殺の中で殺されてしまったりした経過がありますね。カンボジアもそうですね。ポルポト政権時代にそれをやられた。だからそういう直後だったら医者もいない、教師もいない。病気になっても誰も診てくれない。その医者を養成するには膨大な時間がかかるから緊急で外国から医者を入れなきゃいけない、と。そういう国はあったし、今もあるでしょう。でもイラクは違うんだっていうことが分かってない。そういうのが非常に大きな問題だと思います。

(終わり)