第72回いろりばた会議録(2003年1月16日開催)速報版
続・イラクへの戦争と核兵器・劣化ウラン弾
山崎 久隆さん
(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会代表、市民運動ボランティアネット@nifty)
文責:いろりばた会議事務局
〈1.“第2次グレートゲーム”時代〉
2.石油、テロ、紛争/イージス艦の本当の役割
〈目次〉
アメリカの石油が枯渇する懸念と、湾岸の安い石油
9・11事件後のテロ・紛争
次のテロのターゲットはどこになるか
アメリカについていけばどんな未来が待っているか−イージス艦の本当の任務−
〈3.ジェノサイド戦争〉

で、このイラク戦争に対しては既にこの事態が始まる前に重要な本が出ています。もうこれも良く知られている本なので読んでる方も多いと思いますが、『世界資源戦争』(原題:「RESOURCE WARS」by Michael T.Klare 日本版:廣済堂出版)という本ですね。
これは日本版が出たのが2002年の1月ですね。英語版が出たのはもっと前ですね。9・11頃に出ている本です。したがってまだイラク戦争へ向けたこの動きが急になる前、国連決議なんかも挙がる全然前なんですけれども、もう既にアメリカの狙いが何なのかっていうことは、既にここにも書かれている。ペルシャ湾における石油紛争ということで、アメリカは21世紀の早い時期にイラクに対して再度軍事侵攻を掛けるだろうということはもう明確に書いてあります。
その根拠はまあ簡単な話、「石油が枯渇するからだ」と。ただし世界的な規模で枯渇するわけじゃないですね。アメリカの国内で枯渇するからだと。つまりアメリカも産油国だったんですが、自分の所の石油もだんだん減ってきたわけですね。
重要なのは石油の場合採算ベースっていうのがあります。埋まってはいても、掘り出すのにバレル辺り100ドルも200ドルもかかるような石油じゃ使い物にならないんです。今の世界の石油の取引価格が多分バレル辺り30ドル弱だと思います。20ドルを超え、30ドルの間くらいだと思います。これが40ドルになるとえらいことになるんですけれども。20ドル以下に押さえたいっていうのがアメリカの意向ですね。
で、じつは湾岸地域の石油っていうのは、穴掘っただけで自分で出てくるくらいに簡単に取り出せるんです。この石油を掘り出すのに掛かるコストは「バレル当たり1ドル」と言われています。だから穴掘っただけで出てくるようなもんですね。1ドルで出てくるわけですから、それを10ドルで売ろうが20ドルで売れようがOPECの諸国にとって見ればほとんど関係がないわけです。どっちも利益が上がると。まあ大きいか小さいかだけの話で。
・サウジアラビアの石油
サウジアラビアがあれだけ莫大な王宮をいっぱい建てて、さらにアメリカ軍でさえあんまり持ってないような最新鋭の兵器をずらっと並べてるんですね。それでサウジの王室は毎年2回ヨーロッパに豪遊に行くわけです。その上じゃあそんなに豪遊してるのは宮廷だけだろうと思ったらそうでもなくてですね、国民に対しては教育費、医療費、そういったものは「全部ただ」という政策をやっています。社会保障費も「全部ただ」。「税金も無し」と。そういうことをやれるくらいに、サウジアラビアの場合はものすごい利益が上がるわけですね。
それだけ莫大な石油の儲けでサウジアラビアの人たちにそれだけお金をばらまいてるのは、早い話がいまだに議会もない王制ですから、生活が困窮すればすぐにサウジアラビア政府は打倒されてしまう可能性があるわけですね。革命が起きる、と。隣のイラクでは現実に革命が起きていますから。革命が起きてバース党の政権になって王制が倒れてるわけですよね。その向こうのイランだって、パーレビ体制が打倒されてるわけですね。それを考えればサウジアラビアにしてみれば莫大な石油利権を王室が独り占めしたんじゃいつ倒されるか分からないというんで、まあ民衆にもばらまいているという、そういう構図になっている。これはもう石油を採掘するコストがベラボーに安いからできるわけですね。
・北海油田の石油
で、北海油田というのがイギリスの北にあります。これは海底油田なので非常にお金がかかります。絶海の孤島になりますから人間だって大変です。給料はものすごくいいそうです。ただし行ったら1年間帰ってこれません。冬なんかはものすごい気候ですね。とてもじゃないけどそこから出ることすらできません。しかも危険が伴います。爆発事故は頻繁に起きてます。そういうところですから1回行って帰ってくると1千万くらい貯まるそうです。そのくらい莫大なお金がないと労働者もなかなか命掛けてまで行かないと。したがって採掘コストが非常にかかります。ここは大体「バレル当たり20ドル」っていうラインがギリギリだそうで、それ以上石油価格が安くなってしまうと採算割れしてしまうという状況にあるわけですね。
・カスピ海沿岸の石油
で、カスピ海沿岸はまだ開発が進んでませんから、これから原油採掘のリグ(掘削施設)を建てたりいろいろやらなくちゃいけないので、ここはまあうまくいっても採掘コストは「バレル当たり10ドル」くらいは掛かるであろうと。
・(他地域)
世界的には石油資源はあっちこっちにまだあるんですよ。シベリアにもあるだろうし、それから南アメリカにもあります。ベネズエラですね。ベネズエラの政権に対してアメリカが何でああちょっかいを出すのかっていったら、「あそこは石油産油国だから」であって、それ以上でも以下でもありません。あそこがもし石油が一滴も取れなければ、チャベス政権だろうが誰の政権になろうが関係ないです。もうアメリカは知らん顔してます。そういう石油があるから、あれだけちょっかい出して政権打倒の工作までするわけです。
・イラクの石油
で、湾岸に戻りますと、イラクの原油埋蔵量はサウジアラビアに次いで世界第2位です。で、湾岸戦争以降非常に強い経済制裁の下におかれたために、イラクの原油産油量は急激に落ちたんですね。湾岸戦争直後はゼロに落ちました。その後日量輸出が200万バレルまで認められるまでになりました。そこがまあ現在で最大のエリアです。戦争が始まる前は700万バレル位は出していたそうですから、まだまだその差は非常に大きい。
で、これがどういう事を起こしたかというと、「確認埋蔵量があんまり減らない」という現象を起こしたわけです。したがって今のままの採掘ペースで行くと、イラクは120年くらい石油を産出し続けることができるだろう、と。今の採算ベースでですよ。そのくらいの埋蔵量があると言われています。だから確認埋蔵量ベースで引っ張るとサウジアラビアよりもじつは長いんじゃないかというような観測さえされています。
ただしサウジアラビアとイラクの間の国境線というのは、「国境未確定地帯」と言ってるくらいの砂漠地帯で他には何にもありませんので、十分な探査もされていない。だからその間にはまだ石油が採れる場所が沢山あるであろうという想像もされています。したがって確認埋蔵量(存在が確認されていて、現在の採掘技術で採算が取れる量)は今の数値ですけど、究極埋蔵量(未確認のものを含めて推定した採掘可能な量)となると中東地帯はもっと大きいという説明もあります。
したがって依然としてアメリカの−まあ世界のですね−中東依存度というのは下がる傾向はありません。そのことは中東に住む人たちにとって経済的な恩恵という面はありますけれども、政治的あるいは軍事的には非常に強い圧力を受けるという構造は、今後50年くらいは変わらないということになってしまうわけですね。
で、アメリカはそのイラクを我がものにしようとしているわけです。その世界第2位の石油埋蔵国をアメリカが手に入れることが出来れば、カスピ海沿岸も自分たちのものだと思ってますから、その2つのエリアを繋いだ世界の石油支配力は、もうロシアやヨーロッパをはるかに追い抜いて世界一になるわけですね。
アメリカは今「軍事的に世界一の国である」と豪語している。これは確かにそうです。あんなとんでもない核兵器を大量に持ってですね、世界の7つの海を空母を走らせて我が物顔でやってる国なんて世界中探したってありませんから、「世界一の軍事大国である」というのはそれは間違いないですね。
しかしながらアメリカ自身のジレンマっていうのはありますね。世界のわずか2%くらいの人口しかいない国が25%の石油を浪費しています。そんなことがいつまで続くのかと言えば、そんなに続くわけがないですね。そんなの常識で考えたって分かります。
で、中国もまたどんどん石油消費量が増大してきています。インドも増え続けています。とりわけアジアの国々の経済成長によって、石油の消費量が右肩上がりになっていくことは、通常の考えで誰でも分かることですね。このまま行くと−行くわけはないんですけど右肩上がりで行ってしまうと−2050年くらいには中国の石油消費量はアメリカに匹敵するとさえ言われています。
そうなるとアメリカにしてみれば、強力なライバルがドーンとアジアに出現をするということになるわけですね。したがって今のうちに出来うる限り石油の産油地を自分の支配下に制圧しておきたい、というのがアメリカの思惑です。
で、そのためにはいかなる手段も使う。どんな口実であろうと、誰が見たって「こんな滅茶苦茶な」という話であろうと、そういう行動を取るというのがブッシュ政権の考えのようですね。これは宥和政策をとっていたその前のクリントン政権(宥和政策とも言い切れない面はあるんですけれど、今のブッシュ政権よりはまあ協調政策を取っていた)とはガラッとその方針を変えていく。
そういう流れになるわけです。
で、皆さんのお手元に配りました資料にある見開きの地図を見てください。

これは9・11の事件以来、世界で起きたテロを含めた紛争を図に展開をしたものです。
で、ここに書いてあるのは9・11から、一番新しいものではバリ島の事件ぐらいまでで2002年の10月までの間ですから、もうそれから半年くらい経っているわけですけれども、じつはこれ以降は大きな事件というのはあまり起きていません。
もちろんイスラエルとパレスチナの方はもう両方の軍事衝突っていうか、爆弾、あるいはミサイル攻撃などが繰り返し起きていて、つい最近も12名が死亡したという事件が起きてますけれども、イスラエルとパレスチナの場合は別の状況で紛争がずっと続いているっていう状況がありますので、9・11事件を巡るアメリカの流れとはちょっと違うところにあります。けれども、他の所というのは概ねその9・11以降、アメリカの世界戦略によって連動していった所に相当をするわけです。
一つひとつやっていくときりがないので主要な所だけを挙げておきますが、この地図はパッと見て地球儀ですから大体こう、中心にアフガニスタンを持ってきて、反対側の中心にアメリカを持ってきた図だということは分かると思います。
で、その地球儀を見るとちょうど左上の方ですね。中心地帯にある国はどこかっていうと、イラン、イラク。それからカスピ海ですね。そこの辺り一帯を中心として周りに紛争の輪が広がっている、という図式に見えると思います。
朝鮮半島情勢はちょっと別の要素がまた絡みます。最近の核兵器開発絡みの北朝鮮の動きというのは、これはアメリカとの関連性が非常に強いのでまあ同じ文脈で話せるんですが、その前に起きている不審船事件だとか韓国海軍との交戦っていうのはちょっと別の要素が入っているので、ここに出てくる例のうち真ん中の10月16日の「KEDO合意の見直し議論」っていうの以外はあまりこの文脈の関係は強くはないです。
ただ他の所は大体見ていくと分かりますけれども、どういう傾向が強いかといえば、アフガニスタン戦争を始めてその時についブッシュが口を滑らせたのは「21世紀の十字軍だ」とか何とか言ったんですね。十字軍というのはご承知の通り、ヨーロッパキリスト教の軍団が地中海を渡って、パレスチナの地を奪還するためにイスラムに攻撃を仕掛けたんですね。その故事をというか、昔の歴史を彷彿させるものですが、その事を言ってしまうと何が起きるかと言えば、「アメリカなり西洋グローバリズムが、イスラムなりその旧来のイスラム原理主義を制圧するという戦争なんだ」ということになってしまうわけですね。
これはもう文字通り世界戦争になってしまいますから、慌ててブッシュはそれを取り消したというか、無かったことにしようと一生懸命画策をしたわけですけれども、じつはアメリカの国内には「文明の衝突」論というのが根強く台頭しているということが、一面ではあります。「イスラム対西洋」という図式ですね。
まあ分かりやすいといえば分かりやすいんですけれども、いかにもその何と言いますかね、昔でいうならばまあ“米ソ冷戦構造”の構図と比較をしたら、あの時代は「民主主義対共産主義」ですかね。で、今は「イスラム対西洋」と言った方がまあ通りがいいだろう、というようなレベルの話であって、一つひとつ吟味していけば別にそんなことは全然ないということが分かるんですけれども、まあ少なくとも言えることは「西洋」というよりは「アメリカ」ですよね。
アメリカがやってるグローバリズムというのは、いわばアメリカの価値観でいろいろな商取引を自分たちのルールの下で行う。まあ一言で言えばそういうことです。それに従わないものは、いわゆるクリントン時代は「非関税障壁である」ということでWTO(世界貿易機関)などを使って制裁をするという流れであったわけです。日本だってその制裁を受けてるわけですね。ある意味でWTOを使ってアメリカの攻撃を受けてるようなもんなんです。鉄鋼に対して「100%関税を掛けるぞ」ってやりましたよね。あれがいわばアメリカ型グローバリズムの一つの攻撃の矛先になるわけです。
ところがブッシュはそういう回りくどいのは嫌なわけですね。もうそんなの面倒臭い、と。売らないというのならそこを自分で乗っ取りゃいいじゃないかという、まあ古典的な征服主義史観なわけです。したがって敵を作ってそこを叩いて制圧して、その跡地をアメリカの傀儡政権なりに仕立て上げてしまえばいい、というわけですね。
ちょっと古典的と言えば古典的で、非常に分かりやすいので批判もしやすいんですけれども、最近ではそれに対していろんなオブラートに包むわけですね。イラクに対しては「大量破壊兵器」、アフガニスタンに対しては「テロ支援」というオブラートに包むわけです。しかしながら裏を返してみれば、そういうことを言われている国は全て資源国か資源の周辺国である、ということが分かってしまってすぐ馬脚を現すわけです。
で、このテロの周辺拡散図というのを見ていけば分かる通り、中心地帯、カスピ海、それから湾岸を中心として広がっていく境目の所っていうのは、大体この一帯というのは“アメリカとロシアによってイスラム原理主義やテロ組織に対する攻撃が掛けられているという地域”に該当するということが分かるわけです。
で、これら全ては「資源戦争」というものを前提として考えてみれば実によく分かる。そういう紛争地図になっているわけです。
これが今下火になってるというか、あんまりこの規模の事件が起きていないというのは何かというと、向こう側もっていうか、この攻撃をしてきた人たち(別にアルカイダだとかそういう中心人物がいるわけではないですよね。これは世界のいろいろな反政府活動であるとか、それから反米闘争などをやってきた軍事組織)が各個撃破してる、勝手に個別にやってると考えた方がいいわけです。どこかに連絡くらいは取ってるかもしれませんけれども、指揮系統があるわけじゃありません。
で、今沈静化してるっていうのは、一つはアメリカのイラク攻撃の実行を睨んでいる。もしもアメリカがイラク攻撃を開始したら、途端に世界同時多発でまたテロ作戦を展開する。そのための今準備期間であると思って間違いない。
ターゲットはどこか。
一つはまあ湾岸諸国っていうことは誰でも考えつきますが、それだけではないだろう。二つくらい考えた方がいい。
一つはマラッカ海峡です。もう一つはヨーロッパですね。アメリカの方は2001年にありましたけれども、もう一つはヨーロッパであると。
・ヨーロッパ
で、ヨーロッパの主要交通網。おそらく鉄道、道路。そういったところを破壊するという攻撃に出てくる可能性が極めて高い。なぜならば軍事合理性からいうと、そこが一番ネックです。ボトルネックですね。
テロ組織であろうと軍事組織であろうと(アメリカ軍であろうと)、この世界の流れをどういう目で見るかといえば「軍事力を使って自分たちの意思を通すにはどういうやり方が一番合理的か」という考え方で物事を見ようとしているということです。軍事力を使って物事を見ようと考えるならば、別にアルカイダであろうがアメリカ軍であろうが誰であろうが、やることっていうのはもう自ずと透けて見えるわけです。一番やられたら嫌な所です。“一番やられて嫌な所”。
例えばマラッカ海峡。アメリカと日本にとってここが通行不能になれば半年で日本は干上がってしまいます。別のルートを一生懸命探すとなったらスエズ運河とかパナマ運河になるわけですから、ここもターゲットになりうるということです。
で、ヨーロッパの交通網っていうのは、EUの統合によって国境をまあ事実上廃止していこうという流れになってるわけです。その流れの中で一番主要な働きをしているのは道路・鉄道網です。これが物流や人間の流通によって非常に重要な働きをしている。今やイギリスからトルコまで行こうと思えば列車でそのまま行けちゃうという時代ですから。そこを攻撃された場合にヨーロッパの経済には深刻な打撃を与えることができます。
もう一つ挙げるとするならば、電力送信網です。電力網、つまり鉄塔です。じつはヨーロッパの電力網っていうのは、北はスカンジナビアから南はイタリアやあるいはスペインまで全部繋がってます。非常にグローバルな編み目を持ってますので、これが爆破されて寸断されるということになるとヨーロッパのエネルギー状況は大変に危機的な状況になります。
あと対人的にやるとするならば、次に攻撃を受ける可能性があるのは各国の地下鉄です。地下鉄サリン事件なんてありましたが、あれはじつはアメリカ軍が一番大きな関心を持って日本に調査団を送りましたね。なぜかというと、「自分たちがやられた時にどうしようか?」と考えたわけです。あれほど効果的なテロはないということをアメリカの陸軍心理戦部隊が気が付きました。6000人からの被害者が出てます。その被害によって日本の首都圏のまあ産業活動でもいいですし物流でもいいですが、1日壊滅的な打撃を受けました。あの時の経済損失は数百億円と言われています。そういうことを例えば各国主要都市でやられた日には、手の打ちようがありません。
で、地下鉄サリン事件というのはあれほど簡単に実行ができて、かつあれほど事前阻止が不可能な犯罪はないという点においてアメリカ軍を震撼させたと。そういうことが世界各地の主要地下鉄なんかで起こる可能性があります。
これはやる側が考えた時の軍事合理性の話ですから、軍事的に打撃を与えるのに何が効果的かって考えるとするならば、結論は自ずとみんな同じことになります。軍事理論というのはそういうものです。
・マラッカ海峡
したがって「軍事で物事を解決する」っていうことがいかに滅茶苦茶間違ったことかということがよく分かると思います。アメリカ軍がどんなに強力な爆弾を、劣化ウラン弾をですね、アフガニスタンへ落とそうがイラクへ落とそうが、それで例えばマラッカ海峡で行われる可能性の高いタンカーに対する自爆攻撃を阻止することは不可能です。
マラッカ海峡っていうのは見たことある方もいるかもしれませんけど、数100mおきにタンカーが並んでるんです。で、対岸から対岸まで一番狭い所で10kmしかないんですね。そんな所に小型の漁船もいっぱい入り組んで走ってます。そんなところに例えば爆弾を積んだ小型船がやってきてドカーンとぶつかってきたとしても阻止することも発見することも不可能です。海賊に襲われた日本の船が3ヶ月間も行方不明になったまま探せなかったという海域なんですね。こういう海域が実はマラッカ海峡です。日本の海上保安庁の巡視船が実はマラッカ海峡の警備だとかいって行ってるわけですけれども、行ってもこれは何の役にも立たないです。何百隻という船が日本の商船も含めて航行してるわけですよ。この一隻一隻を臨検することなんて不可能です。
したがって全く手の打ちようがない。やられたらもうお手上げ。これがマラッカ海峡の実態です。
それでマラッカ海峡っていうのはご存じの通り、マレーシアとインドネシアの間の国境ですね。インドネシアっていうのはイスラム教国ですね。さらにこのスマトラ島というのはアチェ分離・独立運動など各種の軍事活動が盛んなところです。しかも悪いことにインドネシア軍の兵士がその武装ゲリラと裏取引をやってお金を稼いでいるということでも有名な所です。つまりインドネシアの兵隊が武器をゲリラに売ってるんです。そんなことまでやっている。つまりいったい分離・独立との戦争をやっているのか、それとも裏で取り引きしているのか訳の分からない状況になってしまっている。インドネシア政府も掌握できていません。
そういう地域ですから、どんな武装勢力がいたっておかしくない。いたって分からないんですけどね。分からないという状況です。日本の例えば東京のその辺の治安状況なんかはまあ世界でも珍しいくらいでして、誰がいるか分からないようなゴチャゴチャッとした雰囲気っていうのがアジアの一般的な風景です。
そういうことから考えれば、テロを生む土壌を作りさらにその動機を与えれば、どこでもテロは発生しうるし、それだけの能力を持った人間は世界中にもゴマンといる。それを一人ずつ全部制圧するなんていうことは、それはもう人類が絶滅するよりも難しい話だということです。したがってそれは不可能です。テロ戦争で勝つなんていうことはあり得ないです。
したがってアメリカだってそんなことを真面目に考えてるわけじゃない。アメリカは自分の国さえよけりゃいいわけですから、イラクを攻撃をした時に一方では国内に治安体制を敷いて、国内におけるテロ活動を封じ込めさえすればそれでまあよし、と。あとは各国勝手に自分の所でちゃんとテロ組織を押さえなさい、と。そういうことになるわけですね。
で、日本に対しては「イージス艦をインド洋に出せ」というふうに言って、もう一方では日本に対して「自前で自分の国の治安維持くらいはやりなさい」と。つまりテロ制圧や何かは、例えばシーレーンの防衛(日本のシーレーンというのはえらい長いですね。日本からマラッカ海峡に抜けて、それからホルムズ海峡を通って中東湾岸地域まで延びるというラインですね)、これについては「日本が自分で全域を防護する能力を持て」と。アメリカは知らないよというのが最近の姿勢になってきてるわけです。
したがって日本がアメリカにくっついてこのままズルズルといけば、どんな未来が待っているかは自ずと明らかです。
日本のイージス艦がインド洋に展開をしています。日本のイージス艦は、イラクよりもアメリカ艦隊の後ろにいるから安全だというんですね。で、「日本の輸送艦隊を護るためにイージス艦を出したんだ」というような言い方をしてますが、あれもアメリカが「出せ」と言ったわけです。
なぜ「出せ」と言ったかというと、アメリカが一番怖いのはやはり空から来る攻撃よりも海の上なわけです。空から来るものはAWACS(Airborn Warning And Control System=早期警戒管制機。高性能レーダーを搭載)とか飛ばしたりして対処します。そもそもイラクの空軍なんてアメリカは怖いとは思っていません。それこそイラクの国内へ行けば分かりませんけれども、洋上にまで出てきてアメリカ艦隊を攻撃できるような戦闘能力を持った部隊がイラクには存在しません。ということでアメリカが怖がっているのは、いわばバーレーンなどで起きているような海上特攻テロです。小型ボートに大量の爆薬を積んで突っ込んでくるというやつですね。あれになると手前で発見したんじゃ、とてもじゃないですけれども全く手に負えないということになります。
したがってどういうものが必要かというと、より広いエリアで3次元アクティブ・アレイ・レーダー(フェーズド・アレイ・レーダー(位相配列レーダー)の一種。300〜500kmの距離で200個以上の目標の探知、識別、追尾をほぼ同時に行なう高性能レーダー)を使って水面上の小型船舶すら監視することができるイージス艦が必要です。ということになるわけです。
どうも日本では、イージス艦て何か空の上ばっかり見ているような、そういう報道ばっかりあるんですね。防衛庁も意図的にそんな説明ばっかりするんですね。「自分の船を護るために防空のために行っているのである」と、そんな言い方をしますね。あれ、嘘です。防空能力なんていうのは空に飛行機飛ばした方がよっぽどいいわけです。AWACSも飛んでいるし、防空能力はアメリカの方が日本なんかよりも遥かに進んでいます。そんなものに必要なのではなくて、「洋上をやって来る小型の船。それを捕まえろ」というのがイージス艦に与えられた、まあいわば任務というものになるでしょう。
なぜそうなるかというと、普通の船のレーダー、特に空母の艦橋レーダーというのは非常に高い位置にあるので水面反射のために海の上の目標物を探すことができない。で、イージス艦が積んでる3次元アクティブ・アレイ・レーダーっていうのは水平線の向こうまで見ることができます。さらに自分の船のすぐそばの水面上のでこぼこ−つまり小型船舶を含めてですね−、これを3次元的に捉えることができます。したがって小型船舶などを補足するにはあれが一番いいんです。
それでかつ、日本の艦隊はアメリカ艦隊よりもパキスタンの方に近い側に位置することになりますね。それで「イラクより遠いからいいだろう」みたいに言ってますがとんでもない話であって、小型船舶は当然陸上から発進しますから、陸上から発進した小型船舶を洋上にいる空母機動部隊まで接近させないために間に日本の護衛艦、自衛隊のイージス艦を置いておくと。
まあそういう軍事的な意味合いです。そういうふうにして使われているわけです。「集団的自衛権」だとか何とかっていうレベルの話ですら、もうないです。アメリカの護衛艦隊の一部でしかないです。だから「自衛権」もへったくれもなくて、これはアメリカの護衛艦隊なんです、日本の自衛隊は。
したがって自衛隊の人たちの中にはそれを感づいてるというか、自分の船の性能を知ってれば当然知りますわね。「ここに位置しろ」と言われりゃ何のためにいるのかってなると、軍事的に考えれば−それこそ軍事合理性で考えれば−すぐ分かります。だから輸送船団とか護衛艦だとかそういった一般の護衛艦隊に乗ってる人よりも、イージス艦に乗ってる人の方がよっぽど怖いです。
なぜならば、これを逆の側から考えれば分かるわけです。そんな“フェーズド・アレイ・レーダーなんぞを積んだイージス艦がいるのは邪魔でしょうがない”ですから、まずその船を叩く。これが軍事的な常識です。したがってレーダー・ピケット艦(最前線で敵の攻撃を未然に感知する役割の船)として点在しているイージス艦がまず最初に目標として狙われる可能性が非常に高い。まあ知ってる人間ならばそれは一番ピンときます。イージス艦に乗ってる人が一番怖いです。
そういう戦争に日本が荷担させられているという構造になるわけです。

3.ジェノサイド戦争
に続く