第72回いろりばた会議録(2003年1月16日開催)速報版
続・イラクへの戦争と核兵器・劣化ウラン弾

山崎 久隆さん
(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会代表、市民運動ボランティアネット@nifty)
文責:いろりばた会議事務局
1.“第2次グレートゲーム時代”
〈目次〉
12年前の1月17日に連合軍の爆撃が始まった
ハミド・カルザイがなぜアフガニスタンの大統領になっているのか
アフガニスタンを「日本化」しようとしたアメリカ
冷戦で蒔いた種を刈り取りに行っているアメリカ
かつてオサマ・ビンラディンを支援したアメリカ
〈2.石油、テロ、紛争/イージス艦の本当の役割〉
〈3.ジェノサイド戦争〉
(この間の状況(2月中旬時点の状況))
アメリカはイラクの大量破壊兵器開発を理由に攻撃準備を進めている。2月5日にアメリカのパウエル国務長官はイラクの大量破壊兵器所有の「証拠」を国連に示し、6日にはブッシュ大統領が大袈裟に「ゲームは終わった」と宣言した。イギリスのブレア首相は国内世論の大勢が戦争反対にも関わらずアメリカに同調。
しかしパウエル国務長官が示した「証拠」は説得力のあるものではなかった。2月上旬に来日したアメリカ人の元国連査察官スコット・リッター氏は、現在イラクが大量破壊兵器を保有している可能性がほとんどないことを強調した。
一方、ドイツとフランスはイラク攻撃に反対の意思を表明し、国連査察の強化案を独自に提案。これにロシアも同調して、「米英」vs「独仏ロ」で国際世論を二分する形となっている。ちなみに日本政府は相変わらず「国際協調」を唱えつつ同盟国・アメリカ追従が透けて見えるという態度。
市民の動きとしては、2月15日の反戦デモがニューヨークで10万人、ロンドンで50万人など世界合計で1000万人を超えるという盛り上がりを見せている。戦争反対の世論が8割近い日本でも反戦行動が高まりつつある。
皆さんのお手元に配ったもので、もしかしたらみんなお持ちなのかと思わないでもなかったんですけど、今手元にあった方が話がしやすいものですからご覧になってください。『劣化ウラン弾と戦争』という、これは前に出したパンフレットの追加で出したものですね。それからもう一つはB4版の紙で、私が代表をやっている「劣化ウラン研究会」の方で作った声明です。
1月17日、阪神淡路大震災のたまたまその日と重なるんですが、湾岸戦争は1991年1月17日にアメリカなどの連合軍による爆撃が始まったんですね。
えー、「多国籍軍」なんて言ってるのは日本だけです。あれは「連合軍」と訳すのが正しいです。「国連軍」でもありませんよ。「国連軍」と今さら言ってる人は誰もいないとは思いますが。「連合軍」、あのアメリカを中心とする連合軍による爆撃が12年前の1月17日に始まりました。
で、テレビでほとんど生で、バグダッドに入っているCNNが生でその映像を流していたら、花火が上がってるような映像がチラチラと映った程度で、あんまり激しい攻撃の印象っていうのはあの最初の段階ではまあ感じなかっただろうと思います。
これは当然ですが報道管制ですね。情報は完全に遮断をされて、その中でもまあCNNは結構あちこち爆撃被害の現場を撮ってアメリカに送ってきたわけです。そのことが一部流れて、それが実は湾岸戦争の被害を追跡する人たちにとっては、とんでもない戦争が始まっているということが分かった最初のきっかけになったんですね。
で、劣化ウラン弾を使っているということが分かったのも、じつはそのテレビ報道−これはCNNだったかどうか覚えてませんが−の中で出てきた話ですね。アメリカは一方で情報管制をやっていたのに、そういう形で現場に入ったテレビ局からダラダラダラダラと余計な情報が流れてくるということでカンカンになりました。
それでそこで主導的な役割を果たしたのはピーター・アーネットという記者なんですけども、あとで彼を引っかけました。再起不能にするということをおまけでやってます。「CIAが生物化学兵器を使った」という情報をピーター・アーネットにリークして−まあ彼は当然報道してますね−、それが嘘だったということで、いったんピーター・アーネットは報道記者生命を奪われるという事件が1998年に起きます。
そこまでやるんですね、アメリカは。“自由と民主主義の国”なんていうのは誰かが国会で言ってるだけの話でありまして、まあやってることはとてもそんなことではないということです。
で、そのアメリカが今イラクに対して戦争を仕掛けようとしている最大の理由は何かといえば、これはまたほとんど皆さんご存じの通り石油利権を巡るものです。石油利権を巡るというと、まあ昔から湾岸地域に関してはそういう古典的な資源争奪戦があったんですね。第一次世界大戦の後に第1次グレートゲーム−まあ今は第1次という言い方をしますが−、グレートゲームという、そういう資源争奪戦がありました。これはロシア(その当時はソ連)と、それからイギリスが中東湾岸地域の利権を巡って抗争をするという時代ですね。
で、現在は第2次グレートゲームという時代に入っています。これは何かというと、カスピ海と中東一帯、つまりエリアがまたぐっと広くなりまして、そのエリアでの資源争奪戦ということになるわけです。アフガニスタン戦争もその資源争奪戦という文脈で捉えなければ、あそこでやられていることはほとんど誰にも理解できないということになるわけです。
ハミド・カルザイがなぜアフガニスタンの大統領になっているのかということを日本の記者はほとんど知らないらしくて、彼が綺麗な民族衣装の姿で国際会議場に出てきて「ベストドレッサーだ」なんてもてはやして、しかも「英語が非常に堪能だ」と言ってるわけですね。すごく差別的な言い方ですけれども。
当たり前です。彼はユノカル(UNOCAL)というアメリカの石油会社の代理人です。つまり、もともとアメリカ企業の代理人として中央アジアの各国、もちろんタリバン政権とも交渉していた交渉代理人です。したがって彼自身が−こういう言い方もまたちょっと差別的ですけれども−「アフガン人の顔をしたアメリカ人」というふうに現地では言われてるそうです。
つまりアメリカの意向をそのまま彼の政策の中で反映していくという、そういうことを意図してアメリカはハミド・カルザイを大統領に据えたということになるわけですね。
で、まあしかし実際今後そうなっていくかどうかっていうのは−カルザイ自身も元々アフガン人ですから−、アフガニスタンの国内は、もちろんアメリカの言いなりになって唯々諾々としているという状況では到底ありません。
実はアメリカはどうも戦後の日本とアフガニスタンをパラレルで見ているところがあります。どういうことかっていうと、アメリカは戦争でまあ徹底的に日本を破壊しましたよね。そのあと日本に政権を樹立して、それで親米的な政策を行わせる。それによってその後日本はアメリカのもっとも重要な同盟国になる。で、米軍基地が大量にありますね、沖縄とかに展開をする、と。それによって極東アジアにおける橋頭堡(きょうとうほ、拠点)を築くことが出来て、アメリカのアジア政策に重大な位置を占めることになった。
というのを、そのままアフガンに導入しようというわけですね。
アフガニスタンをそういう国に改造することによって、中央アジア一帯のイスラム圏ですね、イスラム地域の支配権を確立しようというまあ深慮遠謀なわけですが、決定的なことを一つ忘れている。それはアフガニスタンは元々多民族国家ですから、いわゆる資源とかそういったものに対してどの民族がより有利な立場に立つのかということを巡って、常に内部抗争を続けてきたんですね。
で、今アフガニスタンを支配しているカルザイ政権というのは、しかしながら実効支配は全く出来ていません。なぜならば少数民族であるハザラ系とかそういう人たちを中心として作った政権になるわけですけれども、実際にはアフガニスタンというのはパシュトゥーン系が大多数を占めるわけです。
だから「北部同盟」というのは何故そんな名前が付いたかっていうと、アフガニスタンの北部の多くは3つの民族が連合してパシュトゥーン系のタリバンと対峙していたという構造から「北部同盟」なんていう言い方をしていたんですね。今ではそんな「北部同盟」という言い方はもちろんしませんけれども、その人たちはアフガニスタンの中においてはやっぱり少数民族ということになりますから、大多数であるところのパシュトゥーン系とどう折り合っていくのかということが非常に大きな問題になるわけです。
で、さらにその3つの民族の中でもドスタム将軍派系と言われているウズベキスタン系ですね、この人たちとハザラ系というのはやはり昔から対立してます。対タリバンという所で一応共闘姿勢を取ってましたけれども、いざタリバンが崩壊をしたとなればお互いの利権を巡ってドスタム系とハザラ系で内戦が起きます。という状況が既にもう起きてるわけです。
したがってそういう意味で言うと、アフガニスタンは日本と民族的な構成も全く違うし状況も違う。しかしながらアメリカという国はいつもそうなんですけど、パターンを当てはめてそのパターン化した中で何とかうまくできないかと−無駄な努力というんですか−、そういうことをやる国なんですね。
アフガニスタンにおいてそれをやっても、まあ数年はどうか知りませんけれども、長い目で見ていけばやはり地域の荒廃、それから対立を激化させていくだけだと。今の状況ですとやはり少数派系のところが政権に近い位置を占めるということになれば、石油利権や天然ガス利権はそちらに流れます。そうすると圧倒的多数のパシュトゥーン系は元タリバンだということも含めて、多数を少数がまあ制圧するという構造になるわけです。
これは世界の歴史の中で見てそういう構図をとった国がまともであった試しがない。どこも全てそういう構図を取れば、いずれ矛盾が激化していって最終的には衝突を繰り返すという結果になってしまいます。
そういうことを考えるならば、本来ならば民族融和と言いますか、多数民族がそれぞれ自らの自立を目指すような融和政策というものを必要とするわけですけれども、今アメリカはアフガニスタンにそんなことを全然やってませんから、そのことが後々アフガニスタンや、あるいはパキスタンにもこれは影響してきますけれども、その辺一帯でまた大きな軍事紛争に発展していく危険性が極めて高いということを考えなければいけない。
ただアメリカにしてみればそんなことはどうでもいいんですね。アメリカが何を狙っているかというと、とにかくアメリカに必要な資源積み出しルートです。カスピ海で石油・天然ガスが採れますから、その辺関連からアメリカやヨーロッパに石油や天然ガスを引っ張るライン、これはパイプラインが一番効率的ですね。パイプラインを引っ張るにはそのパイプラインの施設してある地域が政治的・軍事的に安定していなければいけない。
したがってその地域さえ安定していれば、あとはどうでもいいわけです。パキスタンといっても国土広いですから、北の方が安定していて南がグチャグチャでもパイプラインは北を通ればいいんだから、南の方はいわばどうでもいいんです。だからパシュトゥーン系に対してはほとんど何にもしていません。で、そういうことが現実に起きてしまってるわけですね。それがまあアフガニスタン戦争の背景にある本当の狙いということになるわけです。
で、実はもう一つ言うならば、アフガニスタン戦争とそれからカフカス紛争は大きく繋がっています。カフカス紛争とは何かというと、北カフカス地方というのがチェチェン共和国を含む一帯ですね。で、この一帯というのは実は旧ソ連時代から民族紛争が多発をしています。で、民族紛争というと有名なところでいうとアゼルバイジャン・アルメニアの軍事衝突です。ナゴルノ・カラバフ自治州というのは、皆さんもニュースに良く出てくるのでご存じかと思いますけれども、この自治州の分離・独立運動が30年来ずーっとこの地域の中で行われています。
で、さらにグルジア共和国の中にも−今グルジアですけども昔はソ連ですね−分離・独立運動があります。イスラム系のチェチェン紛争とそれからそれら全部一帯で、その一帯を北カフカスというのがチェチェン、南カフカスっていうのがアゼルバイジャン・アルメニアということになるわけですけれども、その辺一帯の軍事紛争っていうのは誰にその責任があるのかといえば、それは第一義的にはソ連−今はロシア−ですね。
少数民族をロシアが制圧をというか、まあ利益をロシアのモスクワが独占していたという時代に、当然「こんなことではやってられない」ということで民族自決、分離・独立運動が起きるわけです。で、その時に軍事的手段、つまりテロであるとかゲリラ戦であるとかそういったことに発展をしていく最大の要因は何かといえば、武器・弾薬と軍事教練をする者がいるかどうかなんですね。誰もが勝手に鉄砲を持って立ち上がるわけではなくて、その背景には必ずそういう事をけしかける人たちがいるわけです。で、この北カフカスに関していうならば明確にアメリカCIAです。同様にソ連の侵攻に対してアフガニスタンの人も戦ったが、それを支援したのはアメリカです。
カスピ海を挟んで東側と西側、黒海に面する側はカフカス地方、反対側はアフガンです。この両側を軍事的に、まあ挑発という面もありますし軍事支援というのもありますし、それでいわば紛争というか戦争を支えていたのはアメリカです。アメリカだけじゃなくてヨーロッパの国も武器を売ったりしていますから、全体的にそういうことをやっていた。
つまりこれは冷戦構造がそのままここに存在したんですね。その冷戦構造の負の遺産が今そのまま火を噴いているというのがこの構造です。だからアメリカが正義面してアフガニスタンに行くこと自体がどんなに酷い話かっていうのがよく分かると思いますね。自分たちが蒔いた種を自分たちで刈り取りに行ってるわけですが、稲ならまだいいですが人間を刈りに行ってるわけです。
例えばオサマ・ビンラディンというのは、元々はビンラディン家というのはサウジアラビアの建設会社ですね。建設会社の親父がサウジの宮殿やなんかを沢山作って大金持ちになったわけです。その息子たちのうちの一人がオサマですね。彼は元々ヨーロッパで教育を受けています。それからサウジアラビアに戻ってます。で、サウジアラビアの中でいわばイスラム社会の中で欧米的な生活を送るサウジの王室というか、そういうところを非常に苦々しく思っていた。腹が立っていたわけです。その時にアフガニスタンにソ連が進撃してくるわけですね。
で、自分たちの国のアラブの国の中で義勇軍を募って、それでアフガニスタンに行ったのがオサマです。彼を支援したのはCIAです。武器・弾薬を売り、軍事教練を行ったのは全部CIAです。で、オサマのキャンプというのがたまにテレビで出てきたりしましたけれども、あれは何かというとみんなCIAが作ったわけです(まあ「あそこに作れ」「ここに作れ」っていうわけじゃないですけど、CIAがそこに一緒に行って建設をしたわけです)。したがってどこにあるかっていうのは、もちろんアメリカは良く知っていた。そういう構図になっていたわけです。
それがアフガニスタン戦争になってアメリカが空爆・爆撃を行って、それでキャンプを叩いているわけですけれども、いかんせんCIAが一生懸命ゲリラ戦のやり方を教えているわけですから、アルカイダの主力は多分ほとんど温存されています。というか、アルカイダそのものがアフガニスタンの中に今もひっそりと閉じこもっていると考える方がそもそも非現実的な話でして、アルカイダの主力部隊というのは元々アフガニスタンにはほとんどいないだろうというふうに考えた方が自然です。パキスタンへ流れ、それからヨーロッパへ流れ、そしてアメリカに流れて、世界中に散らばっているというふうに考えるのが自然です。
したがっていまだにアフガニスタンに今爆弾を落としているようですけれども、そのことはいわば無意味です。軍事的には、それこそ「対テロ戦争」という文脈でいうと、全く意味のないことをやっています。ただ死ぬのは一般市民だけ、ということを今も繰り返している。これはなぜかと言えばオサマ・ビンラディンも捕まっていないし、それからオマル師もどこ行ったか分からないし、アメリカにしてみれば終わらせるというきっかけがないわけですね。
かつさらに、アフガニスタン国内はさっきも言ったように暫定政権が一応支配しているのはカブール市内と主要な都市の一部に限られます。つまりほとんど点でしか支配してないわけです。その間の主要幹線道路はヨーロッパから来ているいわば治安維持部隊が押さえている。
で、アメリカが空から爆弾を落としたり地上に特殊部隊を入れています。とは言っても、アフガニスタンのこの広大な山岳地帯をほとんど押さえていません。したがってアメリカ軍が攻撃を止めたらどうなるかっていうのはアメリカ軍自身も想像が付かない。カルザイ政権がもつかもたないかすら分からない、というのが実態です。
したがって、いつまでも戦争をやめるわけにはいかない。たまたま地上での大きな交戦が起きてないんでアメリカ兵はほとんど被害を受けていないから「撤退しろ」という国内圧力が掛からないですけれども、アメリカ軍としては、一体いつまでアフガニスタンで戦争を続けているのか先が見えないという状況にだんだんなってきていますね。それが一方でアフガニスタンで行われている。
で、もう一方では反対側、イランを挟んでイラクがあるわけですね。で、イラクに対してアメリカは大量破壊兵器をこっそり作っているんじゃないか、隠しているんじゃないかということで戦争を行おうとしているわけです。

2.石油、テロ、紛争/イージス艦の本当の役割
に続く