第71回いろりばた会議録(2002年12月12日開催)速報版
イラク攻撃反対・核兵器を使うな!
山崎 久隆さん
(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会代表、市民運動ボランティアネット@nifty)
文責:いろりばた会議事務局
〈1.戦争になれば何が起こりうるのか…劣化ウランの被害〉
〈2.アメリカの姿勢・アフガニスタンで劣化ウラン兵器は使われたのか?〉
〈3.9月11日事件後の世界の流れ〉
〈4.なぜ今イラクなのか・「軍事合理性」というもの〉
5.イラク攻撃を止めるためには
〈目次〉
全体としてはイラク攻撃が出来ない状況に傾きつつある
ひとつ気になるのは炭疽菌事件
核兵器の使用の危険性
それで、戦争をさせないためにどういう事が必要なのかというと、やはり世論作りというか、特に日本の場合は、日本の首相が「戦争反対」なんて言うとは到底思えないが、少なくとも世論調査をやると現状の6〜7割が「戦争反対」。これは健全だ。NHKがやろうがどこの新聞がやろうが、大体6割から7割が「日本が戦争をやるのは反対だ」となる(世界の情勢を見ながら、という注釈は付くが)。「アメリカに全面的に協力すべきだ」というのは10%くらい。で、アメリカが戦争するっていうことについても大体5割から6割が「反対」。
したがってこの世論に依拠することが今のところはまだ出来る。そういう段階にある。
で、アメリカなんかはかなり揺れている。
ベトナム戦争以来の最大規模の反戦集会が開かれたりしている。アメリカもやはり揺れている。時間がたてばたつほど戦争がしづらい、なかなか出来ないという状況が出来ていく。だから今の段階ではまだ戦闘可能であっても、1ヶ月後、2ヶ月後となっていけばいくほど、特にヨーロッパなんかではこのままイラクに攻撃をするなんていうのはとんでもないという世論がどんどん高まっているから、時間が経てばたつほどこちら側に有利に−と言うと変だけど−、なってきている状況だと思う。
この状況をくり返しいろんな場でアピールして行動にして、それこそ街頭集会とかを含めてどんどん出ていくと、今なら止められるという段階がどんどん広がっているなという感じがする。だから案外「地道な」と言うと変だが、ウルトラCはなくてもうオーソドックスに行くしかないのかな、と。戦争を止めようというのは、あんまりウルトラCはない。国会で何かの法案止めようというのだったらウルトラCもあり得るが、ここまで世界中を相手にしてアメリカが戦争をやるかというような状況になったら、あんまりいろんな事を考えてもしょうがなくてオーソドックスに行くしかない。もう1000人、2000人でもいいから反戦集会を何回もやって、で、旗立ててデモしていくというのを繰り返していった方がむしろ効果があるのかもしれない。
それで、かつ、韓国なんかが今全土を挙げて反米集会に万単位で人が集まるという状況になっている。これは元々は少女2名を轢き殺した事件というのが一つのきっかけになっているが、もちろんそれだけではない。
もうずーっと前からあるアメリカ軍の傍若無人ぶりに、もう韓国民衆はあらゆる階層がみんな怒りに沸騰しているというような状況で、今度5万人規模の集会がソウルで開かれるだろうと言われているが、ワールドカップの盛り上がりにも増して今回の反戦集会の盛り上がりはすごいという状況になってきている。
これはある意味アメリカが軍事行動を起こす場合、朝鮮半島では何も出来ないという状況を作っている。何しろアメリカがもし朝鮮半島を攻撃しようなんていうことになったら、韓国正規軍が反乱を起こす可能性すら出てきている。つまり北朝鮮同胞をアメリカが爆撃し始めたら、韓国軍がアメリカに協力しないだろうという危険性、つまり後ろから撃たれるかもしれないというくらいの危機感を持っている。光州あたりになると米軍基地から米兵が一歩も出られないという状況が起きている。これは皮肉な話だが「極東の軍事安定を増している」という構造が出来ている。
ということならば日本でもやはり−別に米兵が外出できないようにするっていうことじゃないけど−、アメリカの軍事行動に対しての反対行動が日本で高まっていくっていうことは、極東一帯のそのそれぞれの(もちろんフィリピンでもそういう集会をやっているし)、そういうことと呼応した形でのアジアからの反戦の盛り上がりというのは可能であろうと思う。
そうなってくると中国とかロシアは態度をグニュグニュという国たちだが、やはり表だってイラク攻撃を支持するということにはいかない。自分たちの権益というものを考えているから。
中国にとってみれば、アゼルバイジャン辺りよりはそのカスピ海の反対側のところとのパイプライン構想なんかを含めて思惑はたっぷりある。それからもっと言うと、フィリピン沖の南沙諸島。そういった所の利権を巡る米軍とのつばぜり合いというのが実はある。そういう所を見越した国益を推し量るという動きが出てきている。
ロシアはロシアで、いつまでもアメリカにべったりでやっていたのでは国内政治がもたなくなるというのがあるので、共産党系の勢力が「いくら何でもアメリカにくっつきすぎ」ということで非常に政府批判を強めている。
それからもう一つ言い忘れたのが、ロシアでは「チェチェン紛争はもう沢山」という声がやはり非常に強まっている。特に117人もの犠牲を出した劇場事件というのは、かなり大きなショックをロシア国内に広げていて、報道はされないがじつは占拠事件当日から「チェチェン紛争はやめろ!子供たちを犠牲にするな」というデモがモスクワ市内でちゃんとやられていた。CNNとかそういったところは弱冠流したが日本ではほとんど流れなかったようだが、きちっとそういう行動を取る人たちがモスクワの市内にも沢山いる。そういう動きがやはりロシア政府をして武断政治に対してのブレーキ役になっているということが、一つは出ている。
そういうことで全体状況としては、イラク攻撃が出来ない状況にどんどん傾きつつある。
ただし先ほど言ったように「VXガスをアルカイダに渡したの、渡さないの」ということで、アメリカ政府の中もインサイダーというか、情報を小出しにしながら「イラクはやはり危険な国、とんでもない国」という世論の巻き返しというのも一方で図っている。
ひとつ気になるのは炭疽菌事件。ああいう事件がどこから出てきたのか、じつにタイミング良く、都合良く起こされている。ばらまかれた炭疽菌の遺伝子解析の結果、アメリカのフォートデトリック生物兵器研究所で作られた、つまりアメリカ製の炭疽菌と一致した。これで議会が1週間停止した。
炭疽菌対策として、議会に送られる文書はすべて一箇所に集められ、すべて開封するなどして内容の安全性が確保されるまで宛名本人にも渡さないとした関係で、多くの議員、特に民主党のダシュル院内総務などは自分の所に炭疽菌が送られてしまったため、政治活動不可能状態になった。これが何を意味していたのか。ちょうどその時期に極めて重要な、アメリカが戦争に突入するぞという法案審議をやっている真っ最中に炭疽菌が野党民主党の院内総務宛てに送られたっていうことは、誰が一番特をしたのかって考えなければならない。
この事件もあり得るように、例えばVXガスをニューヨーク地下鉄に撒き散らすような事件が起きたとしたら。それが直ちにイラク攻撃に結びつくとしたら。それは誰がやったことなのかっていうことは冷静に考えないといけない、ということ。それほどアメリカは今陰謀政権になっていると言っていい。陰謀に近いようなことを次々とやっている。何しろ令状無しで1200人ものイスラム教徒をアメリカ国内で拘束しておいて、何の弁明もない。なくていいという構造を作ってしまった。あれなどはもうほとんど警察国家以上だ。もう治安警察国家になってしまっているわけだから、そういうことまでまかり通った。まあ今はそこまでひどくなくなってきているが、そこを見てもう一発何か起こしかねないぞという警戒感を私は持っている。
さらに言うと、「もしもイラクが生物・化学兵器を使ったらアメリカは核で報復をする」ということをつい最近公言した。これなども一つの布石だ。
まあすぐに核を使うということはないかもしれないが、核兵器を使うぞ、使うぞと10回くらい言っておいて、9回までは非常な反発をくらっても最後の10回目で反発をくらわない状況が作れればそれでOK、となる。
「アドバルーン効果」と言うが、そうやって布石を打っていく一つとして、今回またイラクに対する核の使用をちらつかせた。これは前にアフガニスタン攻撃の時にも同じようなことを言った。1991年の湾岸戦争の時も、ちょっと文脈は違うが父親のブッシュが似たようなことを言った。ただしこの時は核兵器を使うということまでは公言しないで、イラクのフセイン宛てに手紙を書いている。フセイン宛てに「あんたが化学兵器を使ったらアメリカは核を使うことも辞さないぞ」という手紙をこっそり送った。その時はそれを公表はしなかったが、今回は世界に公表した。つまりアドバルーン効果を狙って、国際世論に対して「核を使うぞ」脅しが今回ブッシュ政権になってこれで2度目、アフガニスタンに次いで2度目だということを警戒しないといけない。
もう一回言う時には本当に使う可能性があるという警戒感をもって見ないといけない。
ちょっと長くなりましたけど、これで終わりにします。

(終わり)