第71回いろりばた会議録(2002年12月12日開催)
イラク攻撃反対・核兵器を使うな!

山崎 久隆さん
(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会代表、市民運動ボランティアネット@nifty)

文責:いろりばた会議事務局
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1.戦争になれば何が起こりうるのか…劣化ウランの被害
2.アメリカの姿勢・アフガニスタンで劣化ウラン兵器は使われたのか?

3.9月11日事件後の世界の流れ

〈目次〉

アフガニスタン・カスピ海を重心とした世界

「反テロ戦争」と言っておけば何でも正当化されてしまう

日本のイージス艦派遣=アメリカの戦術防空システムの一環

4.なぜ今イラクなのか・「軍事合理性」というもの
5.イラク攻撃を止めるためには



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アフガニスタン・カスピ海を重心とした世界  [↑目次へ

 で、このイラク戦争なのだが、どういう背景があるのかというと、こういう背景がある。
 これを出してしまうと、もうほとんど説明終了となってしまう。

 2001年9月11日の事件以来、一気に脚光を浴びるようになったのはこのエリア一帯。湾岸戦争というのはもっと南の方の湾岸エリアの話で、これは何かというと、真ん中にあるのがカスピ海。
 で、「世界の紛争地図」というのが資料の4、5ページにあるが、この2つの地図のうち、右下はアメリカを中心としてアメリカ周辺で起きた事件ということを描いてあるが、問題は左上の方。


 この地球儀はうまいことにアフガニスタンが中心に来る地球儀で、全体の世界の紛争状況というのがこの中央アジア・中東を軸として考えるとじつによく分かりやすいという構図になる。
 ここにある事例というのは、とりわけ選択をしたというわけではなくて2001年9月11日から2002年の10月までの約1年間で世界中で起きた大きな事件をまとめていくと、もうほとんどこういう同心円上にというか、ここを中心としてその周辺にぐるっと展開をしていくということがよく分かる。
 つまりアフガニスタン・カスピ海を重心とした世界でこういう事件が起きているんだということになる。


「反テロ戦争」と言っておけば何でも正当化されてしまう  [↑目次へ

〈カシミール地方・東トルキスタン独立運動〉
 典型的な例で言うと、例えばここがアフガニスタンで、その隣がインドとパキスタンの紛争地帯、カシミール地方。
 その北に上がっていくと、ギリギリの国境に近い所。これが東トルキスタン独立運動。ここも実はイスラム圏。中国の中のイスラム圏になる。こういう所の軍事衝突が激化していく。で、軍事衝突が激化するには当然の事ながら衝突を激化する、いわば煽る要因がある。それは何かといえば、9・11以後ブッシュが出した「反テロ戦争」、その一言。

 つまり「反テロ戦争」と言っておけば何でも正当化されてしまう。「反テロ戦争」と言った場合どういうことが起きるかというと、正統政府に対して反対する者はみんなテロリストと規定すれば、どんなに弾圧し攻撃をしても合法化されてしまうということに行き着く。
 したがって、東トルキスタンは中国政府にとってみれば反乱軍なわけだし、それからカシミール地方、特にカシミールの中でもインド側にとってはイスラム武装勢力というのは反政府勢力だから弾圧の対象。で、「パキスタンが後ろからけしかけている」と言って攻撃をする。パキスタンはパキスタンで「インドが攻勢に出ている」ということで反攻する、と。

〈アフガニスタン〉

 それからアフガニスタンに関しては、突如として北部同盟が正統政府になってしまって、「タリバン政権を打倒せよ」ということになる。これは「テロリスト集団だから打倒していい」ということになる。


〈チェチェン〉

 こちらの方に回ってくれば、チェチェン共和国。こっちはモスクワだからちょっと遠いように思えるが、根はここだから同じ。チェチェンゲリラが10月25日にモスクワの劇場を占拠した。その根はどこかというと、チェチェン紛争。
 チェチェンというと日本人はどこにあるかっていうのをほとんどの人が知らないが、カスピ海のすぐ左隣。まさしく先ほど出したカスピ海湾岸の資源地帯にある。ここはなぜロシアが全力を挙げて弾圧をしなければいけないかといえば、この隣はグルジア共和国。これは今親米政権になっているが、グルジア共和国の北側のロシア領内、ここは全部旧ソ連の領土だったところだが、独立国が次々と出来ていって、もうロシアにとっての領域というのはチェチェンの一帯から北側だけ。
 したがって南に向かうロシアにとっての最後の橋頭堡(きょうとうほ、拠点)が、ここのグロズヌイという町。そこを例えば分離・独立派のチェチェン共和国のゲリラに制圧されてしまえば、ロシアの戦線は一気にカスピ海の北エリアまで後退して、資源エリアを失う。したがってチェチェンは絶対手放せないわけだ。

 この紛争が資源地帯と関係ない所で起きていれば、こんなに血で血を洗うひどい流血の事態にはなっていない。ところがこのエリアであったことが、チェチェン人にとっても悲劇だった。ここはカスピ海から外へ向けて原油や天然ガスを積み出す要衝だ。だからそこはロシアは絶対に手放せない。
 さらにチェチェンというのはイスラム系だから、アメリカにとってもチェチェンに制圧されるくらいならば同じキリスト教圏のロシアに領有させておいて、自分たちがロシアと手を組めば話が早いということで、もう既にロシアとアメリカは手を結んでいる。
 そういう脈絡から、チェチェンゲリラのモスクワ占拠事件でゲリラ全員を人質もろとも殺してしまうという行動に関して、アメリカは普通ならばクリントン政権時代あたりまでだったら、もうとんでもない、人権上大変な問題だということで、抗議声明出すどころか、国交上も問題を引き起こしかねないような事件だったのだが、もうたちまちのうちにこの事件の後に支持表明をした。アメリカがそんなことをするのはちょっと信じられないというレベルだったが、支持表明をした。

〈グルジア・ダゲスタン・カザフスタン・タジキスタン〉
 一方、グルジア共和国にアメリカ軍は特殊部隊を投入している。これは何かというと、グルジア域内はこの辺は国境地帯で、当然チェチェンだけではなくて、ダゲスタン共和国の左派ゲリラとかイスラム系ゲリラとか混在して色んな勢力がいる。
 で、グルジア共和国は元ソ連外相・シュワルナゼが大統領をやっているが、チェチェンからも来るし自分の領内にも反政府ゲリラはいるし、もうてんやわんやの状態。で、グルジアの軍隊そのものはもともと数がいなくてとてもじゃないが持ちこたえられないということで、アメリカの特殊部隊が対ゲリラ戦の教育をしに行っている。

 だから、旧ソ連領内のここカザフスタンにもアメリカ軍が入って軍事教練をやっているし、タジキスタンにも行っている。この辺一帯各国みんな国内に反政府勢力を抱えている。そういう所を制圧するための政府軍教育用にアメリカが特殊部隊をあちこちに派遣している。旧ソ連の領域内にアメリカがどんどんどんどん入っていると。中央アジアからこの北カフカス地方にかけてはもう既にアメリカが我が物顔で歩き回っているという状況が起きている。

〈ロシア〉
 ロシアは今のところ自分のところが長期間アフガニスタンに戦争をやって負けた。それからチェチェン紛争も1995年の第一次チェチェン紛争の時はグロズヌイを制圧したのだが、その時に大量虐殺をやってチェチェンは「反ロ」がほとんど世論になっているから、とてもロシア正規軍が堂々と入れるような状態ではない。1999年から現在に至るまで第2次チェチェン紛争になってるわけだが、制圧をしたとは言ってもゲリラ戦だから、通りと主要な所は抑えたとしても、ゲリラ戦の策源地(兵站のための後方基地)は野原であるとか難民キャンプであるとかそういう所になるわけで、そういう所にはとても手が出ないという状態なので、ロシアも今の段階ですぐに「アメリカ出ていけ」ということにはなかなかならない。むしろこういったところがイスラム系とかのゲリラ勢力に制圧されるくらいなら、アメリカによって押さえておいてもらった方が都合がいいという訳で、「持ちつ持たれつ、ロシアとアメリカ」という状態がここで出来てしまっている。
 しかしそれも当面のところであって、ロシアがそのうち勢力を強めていけば当然アメリカとロシアの国益が激突をする場所、それがじつはここになるわけだ。そのためのいわば布石を両方が打ちあっていると。それが結局は足下の民衆を踏みつけにしている、という状況になっている。

〈パレスチナ〉
 一方、言わずと知れたパレスチナ。ここはイスラエルが軍事侵攻をかけてもう連日何人もの犠牲者が出る、それに対してパレスチナを支持する武装勢力が自爆攻撃をやるという、血で血を洗う状態になっている。
 これもイスラエルのシャロン政権の行動に対して一定程度歯止めをかけてきたアメリカの民主党の政権がここに来て共和党になって、それから9・11事件が起きた。それで一気にアメリカ国内でイスラエルロビーが力を持って、シャロン政権による武断政治をアメリカが反対できないという状況になってきた。
 アメリカ国内というのは、いわばオイルダラーを背景としたアラブ勢力のロビイストと、それから世界のユダヤ金融勢力を背景としたユダヤロビーとが、議会の中でいつも勢力争いをやっているというような構造。これは別に民主党・共和党の関係なく両方の党内でもやっている。で、アメリカのパレスチナ政策がどっち側の比重が重くなるのかというのは、それは国際情勢とかその時の政権の指向であるとかによって常に振り回されているというのが実態。
 で、このイスラエル・パレスチナ紛争に関しても、例えばアメリカの民主党勢力の中でも一部和平派が強かった時期は1993年の「キャンプ・デービッド合意」などが出来たりするわけだが、これはイスラエル国内でも「戦争を止めよう」という勢力が強い時代。
 ところがそれがどんどんシャロン政権のような右派・リクード系といったところが、特にソ連からイスラエルに入ってくる入植者がどんどん増えていくから、そういう人たちは常にパレスチナ・アラブとぶつかり合う位置に入植する。かつ、ずっと長い間パレスチナと共存してきたユダヤ人ではなくて、突如としてソ連から来た人たちなのでそういった事に関しても対応ができない。それで武力によってパレスチナを追い出せという勢力が増していった。

 その結果として、イスラエルのパレスチナの抗争が激化してきた時に9・11事件が起きた。で、これ幸いとばかりにシャロンがアメリカのアフガニスタン戦争と同じ事をここで始めた。その結果、もうにっちもさっちもいかない状況に現在陥ってしまっている。これもまたアメリカの世界戦略の強い影響を受けているという状況になる。
 で、この湾岸一帯はまた中心部で起きているアメリカの軍事行動に波及をしていって、こういうところで色々な事件が起きる。

〈フィリピン〉
 フィリピンもイスラム勢力対アメリカのぶつかりあいなのだが、主にはアメリカがインドネシア・フィリピンなどあまりイスラム勢力と厳しく対峙してない国々に対して、どちらかというと宥和政策というか、前はフィリピンの人民軍と政権が和平交渉をやっていた。
 その時に突如として9・11事件が起きて、それで口を滑らせたブッシュが「現代の十字軍だ」などと言っちゃったりしたものだから、もうこの辺のイスラム勢力は当然怒る。イスラム圏は反米闘争に立ち上がるという状況で、しかもフィリピンなんかは後ろにアメリカがついてる政権だから、そういうところで紛争が激化していき、それに対してアメリカ軍が直接介入をしてフィリピンのアブ・サヤフという軍事勢力に対して攻勢をかけるという事態になる。
 ただこのアブ・サヤフというのは、フィリピンの中では非常に小さな組織というか島一つを支配しているくらいで、全部の勢力を足しても200人くらいしかいないらしい。そこに対してアメリカが特殊部隊を大量投入して、アメリカ軍自身は戦闘には入らないが、フィリピン軍を戦闘に入れて200人足らずの勢力のうち100人を殺したと言って大騒ぎしているが、これはじつはフィリピン国内の反政府勢力の中でも一番小さい部類のもので、もっと大きな人民軍と今対峙をしている。
 本当にそういうところと衝突してしまったらフィリピンがもたないということで、じつはフィリピン政府としてはやりたくないのだが、アメリカが後ろから焚きつけている。という、これは典型的な形だ。
 それからもう一つ、焚きつけることによってフィリピンでやりきれなくなれば、「じゃあアメリカ軍がやっぱり駐留しなくちゃいけないじゃないか」という話にどんどんなっていくと。

〈インドネシア〉
 インドネシアに関しては、東ティモールが分離・独立をしたということもあって各地の分離・独立勢力が運動を強化をしていった。特に強固な分離・独立運動をしているのはアチェ。これはスマトラ島北部の一帯。
 このアチェ分離運動が9・11事件以降、インドネシア軍の攻勢にさらされて、ゲリラだけではなくて市民の方にも非常に大きな犠牲が出ている。
 この辺のアチェになってくるともっと話は複雑怪奇になってきて、インドネシア国軍がアチェ分離・独立運動と一部結託をしていわば汚職をやっているとかいうことなんかもあり、この辺の情勢はグチャグチャになっていて、9・11以降特にひどくなっている。

〈スリランカ〉
 スリランカ、タミル・イーラムの方は、むしろ9・11以降は政府の側が制圧するのを諦めて、合法政党として認めるから何とか戦闘をやめてくれと、話し合いが今続いている。これは珍しい例。他のところはみんな軍事力で何とかならないかとやっている。

〈朝鮮半島〉
 右上端、朝鮮半島の情勢はご存じの通りの推移で、硬軟取り混ぜて起きているが、ひとつ典型的に重要なポイントとしては、2001年12月22日の日本の海上保安庁が北朝鮮工作戦を撃沈したという事件。
 その前にその前年に佐渡沖で不審船を追跡して発砲したというのはあったが、あれは当たっていないのでとりあえずは交戦というよりは「攻撃をした」という所に留まる。
 しかしとうとうこの奄美大島沖事件では(発見したのは奄美沖だが、実際には遙か彼方の中国との中間線を越えてしまった所で沈めている)、これは日本が1945年の戦争が終わって以降、初めて日本の軍事力(海上保安庁というのは軍隊かというのは議論があるが、国際的には「coast guard」で「国境警備隊」)が外国の軍隊・北朝鮮の軍事力(工作船に乗っているのは特殊任務を帯びた政府工作員だということが今では分かっているので)と衝突をしたというふうに理解しなければいけない。
 その結果、日本の海上保安庁は3名が負傷し、向こうは15名が戦死をすると。「初めて外国軍勢力と交戦をした」という事件。それが2001年の9月11日以降のこの世界的な軍事行動の激化の一環の中で、やはり日本もこういうこともやってしまったと。

 で、今や海上自衛隊の艦艇がここ、ペルシャ湾の沖に展開している。


日本のイージス艦派遣=アメリカの戦術防空システムの一環  [↑目次へ

 今度はイージス艦が、このインド洋沖に行く。イージス艦というのは何のために行くのかというのは非常に重要なポイントで、イージスシステムを積んだ船はアメリカ軍が装備している「データリンク16」という最新鋭の艦隊防空システム及び攻撃も含めたデータリンクシステムの一環として機能する。日本が好むと好まざるに関わらず、イージス艦というのはそういうもの。ついでに言うならば、世界でイージスシステムを持ってるのは日本とアメリカだけ。会場「スペインも買った」。買いましたっけ?スペインが買ってどうするんだろうという気がしますけれども)。

 日本がイージス艦を最初に持った時は「シーレーン防衛」というのが名目だった。「シーレーン」というのは、このマラッカ海峡までだと、中曽根内閣時代はそういう説明をしていた。
 ところがこれは日本近海だから「シーレーン防衛」と言って言い逃れが出来たが、元々は米空母機動部隊のいわば防空直営艦隊だった。つまり日本の自衛隊っていうのは典型的にアメリカ空母機動部隊、及び地上に展開している空軍力と一体運用してしか意味のない装備で、日本の国だけ守れというのなら別にイージス艦なんていらない。
 ところがイージスシステムというのは、エアカバー(航空機による上空援護)としてはこの辺のエリア一帯までエアカバーする(衛星を使って飛行機が飛べばもっと広い範囲をカバーできるが)。この一帯を空母機動部隊や地上の空軍戦力を使ってエアカバーするという目的がある。元々はソ連のバックファイヤーとかそういう爆撃機の日本近海の飛行、ソ連域内から出てくる航空機・迎撃戦闘機といったものを事前につかまえて米軍が攻撃するという場合にデータリンクシステムを使う。

 日本近海でやってる分には、「集団的自衛権」とか「個別的自衛権」とかいう議論も出来るが(あるいは日本が攻撃されるんだと言えば極端な話何でもありみたいな言い方をしてたわけだが)、このインド洋沖まで来てしまうと日本の個別的自衛権とは関係ない。
 こんなとこに来てイージスシステムで「個別的自衛権がどう関係あるのか?」と言ったら、何を言いだしたかというと、「日本の船がここに行くでしょ。それを護るためです」と言っている。
 そんなことを言い出したら世界中に日本の商船は行っているわけだから世界中に防空しなくちゃいけない。それこそ「日本の個別的自衛権は世界の全域にまたがる」と言わなくてはいけなくなる。そんな滅茶苦茶な話はないわけで、ここへ行く限りにおいてはあくまでもそれは「アメリカの戦術防空システムの一環」ぐらいしかないわけだから、どう間違ったって集団的も何も自衛権もへったくれもない。アメリカ艦隊の一員でしかない。

 そういう滅茶苦茶なことまで9・11以降の軍事合理性の流れの中で「何でもあり」みたいなってしまうというのが、非常に恐ろしいことだ。

いろりばたマーク

4.なぜ今イラクなのか・「軍事合理性」というもの
に続く

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