第71回いろりばた会議録(2002年12月12日開催)速報版
イラク攻撃反対・核兵器を使うな!
山崎 久隆さん
(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会代表、市民運動ボランティアネット@nifty)
文責:いろりばた会議事務局
〈1.戦争になれば何が起こりうるのか…劣化ウランの被害〉
2.アメリカの姿勢、アフガニスタンで劣化ウラン兵器は使われたのか?
〈目次〉
アメリカの新型核兵器の開発
「高密度金属弾頭」とは何か
アフガニスタンで使われたという証拠
一つとしてアメリカが最初に認めたというものはない
〈3.9月11日事件後の世界の流れ〉
〈4.なぜ今イラクなのか・「軍事合理性」というもの〉
〈5.イラク攻撃を止めるためには〉
アフガニスタンで劣化ウラン弾が使われたのではないかということがしばしば問題になるが(というか私たちも問題にしてきたが)、現時点までアメリカもイギリスも「劣化ウランをアフガニスタンで使用した」とは一言も言っていない。逆にイギリスの外相は「劣化ウラン弾を撃っていない」と言っている。
しかし、ここに一つ大きな疑惑がでてきた。
資料7ページの図は、主にアフガニスタン戦争で使われた爆弾のシルエット。
一番上の「GBU−28 & GBU−37」というのは、これはバンカーバスター。地中貫徹型の通常弾頭。
これは頭に付いているのがレーダー誘導装置なので、頭の小型爆弾みたいのが着弾と同時に取れて、真ん中の細長い部分が貫通体になる。これが大体地下100フィート、およそ30メートルほど貫徹をして爆発する。これが地中貫徹型爆弾の構造。
元々は1991年の湾岸戦争の際にイラクの地下司令部を破壊するため、急遽巡洋艦の大砲を切り出して数発作って2発投下をしたというので開発された弾頭。
これがアフガニスタンのアルカイダの地下洞窟施設を破壊するんだということで大量に作られた。2001年の10月8日に爆撃が始まって、バンカーバスターが主に使われたのは半年くらいだが、その期間にも百数十発が撃ち込まれたと言われている。
この先端部分なのか、ちょっと中に入った部分なのかよく分からないが、「貫通体」と呼ばれるものに劣化ウランを使っている可能性が出てきている。
というのは、この図に示したものは「2001年の対強化目標誘導兵器」という表題が付いているが、元々アメリカ軍は1990年代の湾岸戦争以降、強化目標に対する攻撃力が弱いということで、通常兵器と核兵器の双方を対強化目標兵器として改良するという方針を立てた。
で、核弾頭としてはB61−11という爆弾が既に開発されているが、これはクリントン政権時代に新型核兵器の開発ということで大問題になったもの。ようするに核兵器の削減「START
II」とかの交渉をやっていたが、その時に戦略兵器は削減対象になったが戦術兵器は削減対象から外された経過があった。かつ、包括的核実験禁止条約「CTBT」(アメリカは批准せず)が国連総会で議決され、世界各国で批准をという流れになった時に、このB61−11の爆弾の開発が問題になった。
つまり核実験の禁止を国連の場で議論している時に、新型核兵器を開発しているということで世界各国から批判の対象になった。
それでアメリカは未臨界実験を多用して、「これは核実験ではなくて兵器の安全性を高める研究開発である」ということを隠れ蓑にして何を開発していたかというと、このバンカーバスター型核弾頭だった。
ようするに地下深くまで浸透して核爆発を起こし、地表にはほとんど被害を出さなければいいだろう、というわけだった。つまりアメリカ軍が考えたのは「使える戦術核」の開発ということだった。
今の戦術核というのはどうやっても、B61−11であっても地表にある程度の放射性物質の被害は避けられない。つまり核兵器を使ったということは、その一帯を放射能汚染してしまうわけだから、どうやっても核兵器を使ったことによる非難は免れ得ない。しかし、もし核爆発による残留放射能を地下深くに封じ込められるならば、それ自体は地表の核汚染はないのだから「通常型兵器の延長線上」の中で核兵器を位置づけなおすことが可能である、となる。
これは今のブッシュ政権になって加速している。秘密情報なのでほとんど表に出てこないが、新型核兵器の開発がどんどん続けられている。
その一つの傍証として、水爆の開発にはどうしても必要なトリチウム(三重水素。半減期が10数年)を、今までは解体核兵器から回収して使っていくという方針だったが、半減期でどんどんなくなっていくので、新たに軽水炉(通常型の原発)から回収するということを発表して、実際にその作業に着手している。
もう一つは、核爆発を起こす中心体であるプルトニウムボールの新規開発を始めるということを発表している。
これは何を意味するかというと、従来の核兵器から回収してきたプルトニウムでは純度が悪くて、超小型の戦術核弾頭では使えない。つまり地下を貫徹させるためにはバンカーバスターのものでも直径を細くしないといけない。直径10数センチという非常に細いものになる。これでは今の技術ではなかなか核爆弾にならないから、こういう細い直径のものであっても核弾頭としても使えるような、極めて小型高性能の核兵器の開発が必要となる。そのために極めて高い純度、プルトニウム239が100%に近いようなものを作らなければならない。その作るために、他の核弾頭から回収したプルトニウムを再濃縮をして純度の高いプルトニウムにして、かつギリギリの臨界点を探すので未臨界核実験を繰り返し行っていると。そういういう脈絡になる。
つまり新型核兵器の開発を今一生懸命やっているということ。次のイラク戦争でそれを使う可能性はあまり高くはないと思うが、今のブッシュ政権の流れだと今後そういうものをどんどん使用するという方向に行きかねないという非常に高い危険性がある。
その先鞭を付けるような形で、スマート爆弾(精密誘導兵器の一種)・巡航ミサイル等で劣化ウランを多用しているのではないかという疑いが出てきている。というのは、「2001年の対強化目標誘導兵器」というのは、これはそれ以前の通常型兵器を改造して、その中に「高密度金属弾頭」というものを入れ始めている。
「高密度金属弾頭」とは何なのか。これは軍事機密で一切公表されていない。その成分が明らかにされない限り、これが劣化ウランであると考えざるを得ない。なぜならば今世界中にある色々な金属の中で最も貫徹力が強いものを探せということになれば、チタニウム、タングステンなど硬い金属というのはいくつかある。しかし、いずれも価格がものすごく高い。さらにタングステンは、世界で最も多い産地は中国だ。中国というのはアメリカの仮想敵国だから、戦略物資を中国に頼っていたのでは、いざとなったときにタングステンを禁輸されてしまったらアメリカは手も足も出ないということになるから、そんなことはアメリカ軍が自らやるはずがない。
そうやっていくと、消去法で劣化ウランしか残らない。したがって100%ではなくて他の金属も混ぜてるかも知れないが、劣化ウランを使っていると考えるのが自然だろうと思う。
したがって、もしもアフガニスタン戦争でこういう爆弾に劣化ウランを使って投下していたとしたらどうなるか、というのがこの表の意味するところだ。
この表は、ダイ・ウィリアムズというイギリスの市民運動家が自分で解析をして作った表で、この表をUNEP(国連環境計画)まで引用している。UNEP自身、一体コソボでどれだけの劣化ウランが使われたのかよく分からない。だから環境評価も出来ない。そこで劣化ウラン弾に関してはNATO司令部から「何トン使った」という報告が出てきたが、誘導兵器については軍事機密を楯に「使った」とも「使わなかった」とも言わないので、UNEPはこのグラフとダイ・ウィリアムズの論文を元に推定される使用兵器として巡航ミサイルを挙げている。
コソボではバンカーバスターは使っていないので、問題になるのはこの中でもAGM−130Cという巡航ミサイル。それからその下のAGM−86D、これも海洋発射型の巡航ミサイル。それからその下のAGM−158、これも飛行機発射型の巡航ミサイル。こういう巡航ミサイルに取り付けて発射した可能性がUNEPの報告書でも引用されている。したがって、これは荒唐無稽な話というわけではなく、みんなこの辺を疑っている。
最近ではこのダイ・ウィリアムズの論文をイラクの戦争反対運動をやってる人たちも次々に引用しはじめたので、これからさかのぼってアフガニスタンで使われた劣化ウランが問題になって来るという時期に差し掛かってきている。
この表の読み方は、弾頭重量の50〜75%に「高密度金属弾頭」というものが使われているという仮定をする。その結果、弾頭の重量自体は公表されているので、「弾頭×50〜75%」とした時の高い方の数字をとって、推定どのくらいの劣化ウランがどれだけ含まれている可能性があるか見積もったもの。
一番多いもので、バンカーバスターが2トン。
それから少ないところでも、500kgとか250kgのラインに来るのがGBU−32等の爆弾。
巡航ミサイルクラスになると、900kg〜1トンという量が使われている可能性があるというふうになる。
既に知られている劣化ウラン弾で言うと、「A−10
strike 30mm × 200 rounds」と書いてあって、これはA−10サンダーボルトが撃つ30ミリ機関砲弾200発分の重量として50kgという重さを示している。
で、この表で一つ問題になるのは日本との関係。日本の自衛隊はさすがに劣化ウラン弾は装備していない。これは公式見解なので、まあ間違いないだろう。質問主意書に答えた国会答弁だから、嘘だったらとんでもないことになるので、「劣化ウラン弾を日本の自衛隊は持っていない」というのは、まず仮に信じるとする。
しかし、ここにある兵器はバンカーバスターを除いてはほとんど日本経由で動いている。バンカーバスターだけはちょっと特殊な爆弾で数もそんなに多くないので、日本を通ったかどうか確認できていない。しかし、それ以外は巡航ミサイルも含めて全てこれらは日本に来る艦船や空軍、あるいは輸送機に積んで通常輸送されているもの。
日本国内で撃たれたのはとりあえず沖縄の鳥島事件以外は確認されていないが、輸送に関してはこういったものはほとんど日本を中継して行っている。劣化ウラン弾の輸送中継点が日本であるということを考えた時に、日本も劣化ウラン攻撃の一翼を担っているということになる。そういうことが日本の反核運動の中でもあまり認識されてこなかったし、軍事機密のベールで隠されてなかなか知る機会も少なかった。これからアメリカ軍の使用兵器の中で劣化ウランの存在を問題にしていかなければならない。
これら劣化ウラン弾がアフガニスタンで使われた物証は挙がっているのかというと、ラムズフェルド国防長官が2001年の12月頃だったか、面白いことを言って大騒ぎした。
「アルカイダの洞窟を捜索した所、ウランが見つかった。アルカイダは放射能兵器を使っている」と、ラムズフェルドが言った。
これを外電で読んだ時、この男は何を言っているのかとちょっと分からなかった。ウラン238が見つかって放射能兵器を使ってると言うんだったら、自分たちが湾岸戦争やコソボでやったことは一体何なんだということになる。相手が使った物はみんな悪くて自分が使う物はみんないいのか、と。
じつはもともとこの報道は、ロシアの新聞・プラウダが「ドイツ(かどこか)の軍隊がアルカイダの洞窟を捜索した時に劣化ウランを発見した」と報道したのを受けて、ラムズフェルドがアメリカ軍もそれを見つけていたと認めた上で発言したのだった。
アルカイダの軍隊は小銃だとか対空ミサイルは持っていたが、戦車と言っても通常弾しか撃てない戦車だし、ましてや空軍力はないに等しい。昔のミグ戦闘機は空軍基地にあったみたいだが、翼も何も穴だらけで飛べない状態。元々アフガニスタンは十数年間、内戦状態なので、アメリカ軍が装備しているような近代兵器はほとんど持っていない。主力がゲリラ部隊なので個人携行兵器を主体にした戦争で、戦車といってもろくすっぽいいものがなかったので、北部同盟軍と呼ばれる軍閥がタリバン軍に侵攻作戦を掛ける時も、戦車が足りないといってロシアから借りたぐらいのレベルだ。だから劣化ウラン弾そのものを撃てるはずがない。
だからその劣化ウランの出所はどこかというと、アメリカ軍が投下した爆弾から回収したものではないかと考えるのが自然。
じつはアメリカがそう言い出す前に、当時のタリバンの報道官が「アメリカがアフガニスタンで大量に劣化ウラン弾を撃っている」という抗議声明を出した。しかしタリバンが言うことなんて誰もまともに取り上げようとしなかった。「ああ、またタリバンが訳の分からないことを言っている」と、ベタ記事扱いだった。しかし、あれはもしかしたら真実だったと考えた方がよくなってきた。
ところがイラクやコソボは戦争をやった相手の当事者がまだ政権として形を保って存在してるので、やられた側としてきちっと調べて、「こういうものを使った」ということを告発する術を持っているわけだが、タリバンはもはや崩壊してその代わりに入ったのがカルザイ政権。これはいわばアメリカの後押しでなったような政権なので、反米的な内容を言うはずもない。
しかも劣化ウラン弾と違って地中貫徹型、あるいは強化目標型兵器なので、弾としてボコッと出てくるわけではない。撃ち込んだ途端に地下深くに潜ってしまうか、あるいは高温の爆発によってチリになって飛び散ってしまう。だから高性能の分析装置を持っていかない限り、そこにウランがあるかどうかすら確認するのも非常に難しい。その辺が劣化ウラン弾とミサイルとの違いだ。途中で墜落したような巡航ミサイルが回収できれば分析可能なのだが、パキスタン領内で落っこちた巡航ミサイルをアメリカはさっさと回収してしまったので、これも何が中に積まれていたのかよく分かっていない。
したがって劣化ウラン兵器を使ったという証明がアフガニスタンではなされていないが、これは証明がされていないから使わなかったという証明にはならない。
じつはアフガニスタンだけではなくて、コソボにしろボスニア・ヘルツェゴビナにしろイラクの湾岸戦争にしろ、アメリカが自ら劣化ウランを初めに発表したケースは一つもない。全て誰かが問題にし、「劣化ウランを使っただろう」と言って、ペンタゴンがそれを後から追認するという流れだ。自ら「使いました」というような発表の仕方をしたケースは何一つない。
これは世界中、劣化ウランを使われた所は全部そう。
日本において、鳥島で劣化ウラン弾が撃たれた。これはアメリカが認めたような形になっているが、ちょっと違っている。
アメリカが劣化ウラン弾を撃ったということを外務省に伝えたのは、まず日本のNHKがその事実をつかんで(どこまで正確につかんだのかはちょっと分からないが)ペンタゴンに取材をかけた。それで、このまま放っておくと報道に先に抜かれるというのを察知したペンタゴンが、あらかじめ外務省に「こういう取材が来ていて、アメリカはこれを認めるという流れになってるから」ということを伝えた。
それが橋本総理に伝わらずに報道が先に行っちゃって、首相官邸が大混乱に陥ったというのがあの事件だった。
2つ目の例として、梅香里(メヒャンニ)という韓国の演習場で劣化ウラン弾を撃っていたということも、これもアメリカ軍の内部情報がメディアに流れて、アメリカ軍が「撃ったことは事実である」と認めたという流れ。
それからプエルトリコのビエケス島の基地に劣化ウラン弾を撃ち込んだのも、ビエケス島の反対運動の中で劣化ウラン弾を使ったというアメリカ軍内部情報をつかんで公表したところ、アメリカがそれを認めたというものだった。
全部そう。一つとしてアメリカが最初に認めたというものはない。
したがってアフガニスタンも誰かが証拠を突きつければ「はい、使いました」と言うかもしれないが、あらかじめアメリカが自ら認めるということは金輪際ない、と。
ちなみにアメリカ軍は「劣化ウランをどこで使うか、または使ったか」を否定も肯定もしないという態度。証拠を突きつけられて、そのことについて事実かどうかと聞かれれば、本当ならば「事実だ」というだけであって、あらかじめどこで使った・使わないということを発表するつもりはないということを、すでに1995年の段階で言っている。
そういう態度であるということを、あらかじめお伝えてしておきます。
3.9月11日事件後の世界の流れ
に続く