第71回いろりばた会議録(2002年12月12日開催)
イラク攻撃反対・核兵器を使うな!

山崎 久隆さん
(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会代表、市民運動ボランティアネット@nifty)

文責:いろりばた会議事務局
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1.戦争になれば何が起こりうるのか…劣化ウランの被害

〈目次〉

「バスラは『イラクの広島』だ」

圧倒的な戦力差を生む劣化ウラン弾の特性

微粉末になって飛び散り、人間に吸入される

回収ウランも混入していた

子供ほど被害を受けやすい2つの理由


2.アメリカの姿勢・アフガニスタンで劣化ウラン兵器は使われたのか?
3.9月11日事件後の世界の流れ
4.なぜ今イラクなのか・「軍事合理性」というもの
5.イラク攻撃を止めるためには


(この間の状況)
 2001年の9月11日テロ事件以降、アメリカのブッシュ政権はイラクのフセイン政権を倒すんだということを繰り返し言ってきた。イラクをイラン、北朝鮮とともに「悪の枢軸」とまで名指しした。その後、イラクの大量破壊兵器開発疑惑によって国連がイラクに査察に入り、2002年12月中旬現在、その調査結果を精査しているという段階だが、ここに来てアメリカのイラク攻撃への懸念も最高潮に高まっている。
 しかしイラクでは1991年の湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾によると思われる被害が出ていて、最近日本でもそれが大きく報じられるようになってきている。今度またアメリカによる攻撃が行われれば、イラクでまた劣化ウランが大量に使用されることになるのだろうか。そしてもう一つ懸念されるのは、アメリカが戦術核兵器使用の可能性にまで言及していることだ。
 日本はというと、自衛隊艦艇のペルシャ湾沖への派遣、そしてイージス艦をインド洋沖にまで派遣と、アメリカの戦争に協力する態勢に急速に傾いている。そしてそれらは国民的議論もほとんどないまま行われていると言っていい。

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●「バスラは『イラクの広島』だ」●  [↑目次へ

 イラクへの戦争が行われるか行われないかということで、最近ニュースで多く取り上げられている。
 今日の資料に、B4二つ折りにした8ページの冊子(たんぽぽ舎パンフレット『イラク爆撃と劣化ウラン』の増補版「劣化ウラン弾と戦争」)があるが、それを使って話しをしていきたい。

 「イラクで戦争が始まったら、何が起きるのか、起こりうるのか」ということを一つの重心にして、そして「今なぜイラク戦争なのか」ということをもう一つの重心として、話を進めたいと思う。

 私自身が劣化ウラン研究会の代表でもあるので、まず最初に劣化ウランの問題について簡単に説明をする。
 なぜならばアメリカ軍が戦争を始めるとなれば、劣化ウラン弾を使うことは100%間違いないし、またそれを世界の国々、特に日本等は阻止し得ないという現状があるからだ。

 その劣化ウランというのは何かと言えば、ウランという通り放射性物質である「ウラン238」、それが劣化ウランの正体。
 で、放射性物質である以上、当然のことながら放射能を出す。
 したがってそんなものが環境中にぶちまけられれば、大量の被曝ということになる。そういう意味で言うならば、広島・長崎に核兵器が使われて大勢の人が今も被曝により苦しんでいることと同列線上にある。ただモノがウランか、それとも核爆弾で爆発した放射性降下物かという違いはあるが、「体の中に入って被曝をする」というだけの観点から見れば、それらに違いはない。同じ被曝だ。

 したがって、つい先月イラクから来日して各地で講演していった医者は、「バスラは『イラクの広島』だ」という表現を使った。バスラというのはイラク第二の都市で工業都市。ここはクウェート国境やイラン国境に近い都市でもある。この地域に米軍は大量の劣化ウラン弾を撃ち込んだ。まあ戦車部隊がいたということもあって、バスラ郊外には今も廃墟となった戦車が大量に放置されている。

 「バスラは『イラクの広島』だ」と言ったのは、ここに大量の劣化ウランが使われて、その周辺で多くの人が被曝により苦しんでいるという現実から発した言葉だ。そういう意味で、別に誇張して言ってるわけでも何でもない。


●圧倒的な戦力差を生む劣化ウラン弾の特性●  [↑目次へ

・比重が重い(鉛の1.7倍)
 劣化ウラン弾が使われるとどういう現象が起きるかというと、まず劣化ウランそのものは非常に比重が重い物体だ。比重が鉛の1.7倍ある。
 重たいということはどういう現象を生むかというと、非常に弾道として安定しやすいということ。弾道として安定しやすいというのはどういうことかというと、撃った弾が目標に命中しやすいということ。
 それからそれだけ重い弾を発射しようということで、大きな火薬で発射をする。それによって射程距離が延びる。同じ口径の大砲で撃ち合って、通常弾と劣化ウラン弾だと、大体20%くらい劣化ウラン弾の方が射程が延びる。

 その結果、イラクの戦車−これは120ミリなんて大きな砲を積んだ戦車すら存在しないのだが−、T−74とかそういうイラクにとってみれば最新鋭の戦車であっても、アメリカの戦車M−1だとかイギリスのチャレンジャーだとかいった120ミリ砲を積んだ戦車に弾が届く前に、相手の米英軍の戦車部隊の十字砲火を浴びることになるという関係になる。
 つまり「スタンドオフ攻撃」と呼ぶのだが、「敵の弾が届く前にこっちの弾を命中させる」ことが出来れば、これはどう見たって向こう側にしてみれば勝てるわけがない。そういう攻撃が出来る。

 そういう意味で、非常に有効な兵器であると。

・硬い
 もう一つは、ウランにチタンとかタングステンとかそういう金属を微量に混ぜる。それによって硬さが増す。
 通常でもウランは非常に硬いのだが更に硬さが増して、その結果「比重が重い」「硬い」という2つの相乗効果で、鋼鉄板でも切り裂くことが出来る。イラクの戦車もそれこそ数センチもあるような鋼鉄製の装甲板を持っているわけだが、劣化ウラン弾に狙われるとたちまちその鋼鉄がぶち抜かれるということになる。
 そんじょそこらの装甲板は全然相手にならない。そのために次々とイラクの戦車は劣化ウラン弾に撃ち抜かれていく。

 しかもその劣化ウラン弾は120ミリといった戦車砲だけではなくて、飛行機に積む機関銃弾としても使われる。主には30ミリ対戦車機関砲、これはA−10サンダーボルトという攻撃機が使う。
 それから25ミリ。これは日本に来ていて岩国にいる、ハリアーという海兵隊の攻撃機が25ミリの機関銃弾を撃つ。これも劣化ウラン弾を使う。
 それによって鉄砲の弾で戦車の装甲に穴が空いてしまう。そういう威力がある。鉄砲の弾で戦車の装甲がぶち抜かれるとすれば、これほどの威力はない。しかも空から撃つわけだから、戦車から攻撃することは出来ない。航空機にしてみれば、全く安全なエリアから敵の戦車を破壊することができるということになる。これも「スタンドオフ攻撃」の一環。

 したがって、もう圧倒的な戦力差となる。これほど圧倒的な戦力差になってしまうものだから、アメリカ軍としてはこんなに有効な武器を手放したくはないわけだ。

 それで劣化ウラン弾は、1991年の湾岸戦争の時にイラクで320〜800トン、それから1995年のボスニア紛争と1999年のコソボ紛争の時に合わせて9トンという量が使われた。もうトン単位だ。
 私たちの一般社会ではグラムの放射能であたふたしている世界だが、戦争となるとトン単位のウランをイラクやユーゴスラビア一帯にぶちまけたということになる。

 で、320〜800トンという量のウランを劣化ウラン弾で撃ったら、どうなるか。


●微粉末になって飛び散り、人間に吸入される●  [↑目次へ

 劣化ウラン弾は発射され目標に命中すると、装甲板との摩擦熱で3000度ほどの高温になる。金属ウランそのものの融点は1330度だから溶けてしまう。
 つまり劣化ウラン弾が装甲板をぶち抜く間に、摩擦熱で高温になって溶けていく。溶けた金属は非常な勢いで発火する(自然発火性がある)。それで戦車の内側に飛び込んだ劣化ウラン弾は、中で液体金属となって飛び散って、同時に自然発火する。その時の燃焼温度は3000度に達する。まあ中の人間はもうひとたまりもないが、それだけではなくて戦車の中に積んでいる弾薬や燃料が誘爆を起こす。
 したがって、劣化ウラン弾が命中をした戦車というのは、まるで地上で爆発する花火のように火花を飛ばして吹き飛ぶ。そういう破壊をする。

 その時にウランの7割くらいが微粉末、つまり細かいチリとなって飛び散る。まあ溶けて自然発火するので、当然固体ではないわけで、液体金属が燃焼する際に限界に近い大きさにまで粉々に飛び散ってチリのようになってしまう。その大きさは200ミクロン程度のサイズにまでなる。
 200ミクロンというのは私たちの世の中で、タバコの煙の粒子のサイズくらいに匹敵をするくらい細かいものだ。これだけ小さなものになると、空気と一緒に容易に肺に吸い込んでしまう。劣化ウラン弾というと固形物質を想像してしまいがちで、そんなものが体の中にそう簡単には入らないだろうと思われがちだが、燃焼によって微粉末となった劣化ウランは200ミクロンという微粒子となって体の中に吸い込まれていくわけだ。
 これを吸い込むということは、当然体の中で放射性物質が放射線を出すわけだから、被曝をする。その結果、肺を中心としてウランの被曝によって発ガンだとか白血病などの被害に当然なる。

 さらにもう少し細かいことを言うと、体の中に吸収されて肺に入った劣化ウランの微粒子は血液に入り、そのままリンパ節へ行く。その結果、リンパ節に留まって放射線を出し続けて、体の中にある免疫細胞が放射線によって破壊をされる。免疫力を急激に低下させてしまうということで、これによって様々な感染症にかかりやすくなる。
 それから血液中に入ったウランはさらに骨にまで到達をする。骨に行ってアルファ線を出せば、これはプルトニウムと同じ。骨ガンになる。または白血病になる。
 こういう形で非常に大きな体内被曝を起こし、ガンになっていく。


●回収ウランも混入していた●  [↑目次へ

 さらに問題なのは、この劣化ウラン弾に含まれているのはウランだけではなかったことが明らかになった。
 というのは、アメリカがこの劣化ウラン弾を主に作ったのだが(イギリスも作ったが)、その中に回収ウランが混入しているということが分かった。

 回収ウランとは何かというと、原子炉で一回燃やしたウランがそのまま再処理されて、そこの再処理で回収されたウランがまたウラン濃縮の工場に回されていき、その結果原子炉の中でしか生成し得ない物質がこの劣化ウラン弾の中に紛れ込んでいると、そういう経過をたどった。
 主にはネプツニウム、プルトニウム、テクネチウム99、そういった物質が劣化ウラン弾の中に含まれていることが、国連環境計画(UNEP)がコソボで採取した資料分析で明らかになっている。

 つまり劣化ウラン弾汚染というのは、象徴的にウランのことを今話をしたが、ウランだけではなくプルトニウム、ネプツニウム、あるいはテクネチウムといった放射性物質の固まりを吸引したことになるわけだ。
 プルトニウムと言えば、ウランの20万倍近い放射線毒性がある。つまり「1グラムのウランを吸引する」ということと「20万分の1グラムのプルトニウムを吸引する」ということは、被曝上同じことになる。
 1グラムものウランを吸入するということは、物理的に極めて困難というかほとんどあり得ないが、20万分の1グラムのプルトニウムを吸引するということは容易にありうる。なぜならば先ほども言ったように、劣化ウラン弾は燃焼によって200ミクロンの微粉末になるので、当然プルトニウムなんかも含まれていれば同じように微粉末になって飛び散るからだ。

 そうすると、たまたま吸い込んだウラン粒子の中にプルトニウムやネプツニウムといったものが多く含まれていれば(まあ運が悪かったという言い方をしていいのかどうか分からないけれども、同じウランのチリの中でも、プルトニウムを含むもの、ほとんど含まないものというものが存在し得るので)、たちまちのうちに白血病なり高線量被曝によるガンということは起こりえる。

 ただ逆にウランだけしか吸引しなかったとすれば、吸引線量、例えば1ミリグラムのウランの吸入でおおむね170ミリシーベルト程度の被曝と評価される。したがって170ミリシーベルトというと、私たちの天然中にある放射性物質から年間に受ける被曝量が1年間で1ミリシーベルトだから、その170倍というレベルになる。
 じつは170倍でも危険は危険だが、たちまちガンになるというレベルではない。長い時間をかけて発ガンということは当然考えられるが、170ミリシーベルトですぐにガンになって死亡することはまずないし、逆にウラン1ミリグラムを吸入するということも、いくら微粉末となったとはいえそんなに確率の高い話しではない。

 ということはウランだけ考えていると、イラクやコソボの劣化ウラン被害というのがちょっと説明が付かない面がある。
 非常に立ち上がりが早くて、じつは広島・長崎の経験よりもじつは立ち上がりが早い。特にイラクのデータを見るよりもコソボの方が劇的な被曝という現象が観察されている。なぜならば1999年にコソボ紛争があって、そこで派遣されたイタリア兵士のうち6人がもう2000年にはガンになって死亡している。
 いくらなんでもこれは滅茶苦茶早い。
 もしその6人全員が劣化ウランの影響だとするならば、そんなに早い影響はものすごい量の吸入がないと説明が付かないということになってしまうのだが、その吸入した劣化ウラン弾の粉末の中にプルトニウムであるとかネプツニウム、ウラン234といった非常に強い放射線を出すものが多く含まれていたとなれば、非常に早い白血病の発症ということもじつはある程度予測ができる。
 そういう関係から、特にコソボで使われた劣化ウラン弾にはプルトニウム系の回収ウラン由来の放射性物質が多かった可能性が考えられる。

 イラクの方は、じつは分析データがないので何とも言えない。イラクでも同じようにプルトニウムが含まれた劣化ウラン弾が大量に使われたかどうかはじつはちゃんと分析した機関がほとんどない。イラクの方からも、そういう細かい同位元素の組成といった情報は来てないので、ちょっと判断が付きかねる。
 ただし全部がウラン由来だとしても、もう既に湾岸戦争が終わってから11年経つので、広島・長崎の白血病の立ち上がり、7年くらいにピークを迎える、そういうデータから考えてウラン汚染による被曝で白血病などの増大ということについてはある程度説明が付くということは言える。


●子供ほど被害を受けやすい2つの理由●  [↑目次へ

 もう一つは劣化ウランというのは先ほども言った通り、鉛の1.7倍もある非常に重たい物体。したがって200ミクロンという小さな微粉末になったとしても放っておけば地面に降り積もっていく。降り積もったあとどうなるかというと、そのまま水に溶けて(ウランというのは水に溶けやすい)食物連鎖を通じて人間を体内汚染するという経路があるのだが、もう一つ考えなければいけないのは、イラクというのはそんなに雨の多いところではないから砂漠地帯なんかのものは長い間粉末のまま地上に残っている。
 そこを人が歩いたり、車が走ったり、あるいは風が吹き起こったりすれば舞い上がる。舞い上がって、もう一度人間が吸入をする。そういうのを「再吸引」という言い方をする。そういった被曝をする場合、身長が非常に問題になる。なぜならば重い物質であるから下へ行けば行くほど濃度が高い。上へ行けば行くほど濃度が低くなる。

 大人が身長170cmだと、口の高さは大体150cm程度。
 それから、例えば5才児の身長は大体90cmくらいで、その口の高さは80cmくらい。半分くらいになる。
 このくらいの高さの違いでも10倍以上の濃度差が出る。つまり小さい子どもほど選択的に高い濃度の空気を吸うことになる。
 また子供の放射線感受性は、33歳成人男性と10歳の男の子で単純比較しただけで、10倍の開きがある。更に0歳児となると100倍の開きがある。

つまり10歳の子どもの放射線感受性および吸っている空気の濃度の違いということを考えれば、10倍×10倍=100倍放射線の被害を受けやすいということになる。

 したがって劣化ウランの被害がイラクで主に子供に非常に多く出ている。戦争では弱い者が被害を受けるという、これもまた一つのパターンだ。
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2.アメリカの姿勢・アフガニスタンで劣化ウラン兵器は使われたのか?
に続く

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