河上 暁弘さん
(中央大学人文科学研究所客員研究員・憲法学)
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| 「第二十四条「武力攻撃事態以外の緊急事態」」 「公共機関に対する協力義務、業務従事命令」 「原発を無くせば戦争が出来るか」 「国家緊急権と責任制の原則」 「アメリカと一緒に戦争をするのか」 |

(質疑応答)
●第二十四条「武力攻撃事態以外の緊急事態」● [↑目次へ]
会場 「有事法の第二十四条で『武力攻撃事態以外の国及び国民の安全』という規定は、武力攻撃以外のことを想定してますよね。ぼくはまず思ったのは、災害のことを思ったんですね。それからさらに、かつてスト権スト(ストライキ権を持たない公務員がその権利を獲得することを目指して行うストライキ)でかなり国が大変な状況になったということがある。そういうようないわば労働争議なんかで日本中が混乱状況になるという事態、あるいは震災が起きるとか、あるいは原発が爆発して混乱状態になる、そういうこともこの有事以外の事態として規定を置いてるんじゃないかなと思います。これは、すごく大変なことだなと思ったんですけど、その辺りどういうふうに考えていったらいいんだろうというところをお話ししていただけないかと思います。」
第四章 補則
(その他の緊急事態対処のための措置)
第二十四条 政府は、我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保を図るため、武力攻撃事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処を迅速かつ的確に実施するために必要な施策を講ずるものとする。
河上 まさに、今ご指摘いただいた点は、武力攻撃事態法案の第二十四条に「国及び国民の安全の確保を図るため、武力攻撃事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処を迅速かつ的確に実施するために必要な政策を講ずる」とありますけれども、そもそもこの「国及び国民の安全」という言葉は、よく分かりませんよね。「国民の安全」はいいんですが、(それと区別された)「国の安全」ていうのは一体何を意味してるのかよく分かりません。
まあしかしこの「武力攻撃事態以外の」という言葉が入ってるのは、そういう意味では非常に幅広くいろいろなことができるようにというための配慮でしょう。
ただ恐らく、今回は、この条項を根拠にあれもこれも入れるっていうふうなことではなくて、こういうものをまず布石として置いておいて、次のより精緻な法整備を積み上げるいうことではないかと思います。
いま政府も、2年以内に、いわゆる「第3分類」といわれる国民の生活などに関わる分野の法整備を2年以内にやるといっています。今回の有事法制三法案は、そのための基本法の整備っていう位置づけですから、第二十四条から武力攻撃以外の事態を直接やるというふうにはちょっと考えづらいのですが、しかしこういうものを一つ布石として置いておくことが次につがるということは、まあよくある話です。
ですから、今ご指摘のような、災害などの問題は災害対策の法律がありますけれども、そうした問題はそちらの方の法整備をちゃんとやればいいと思います。
それから労働争議の問題、今は労働運動の現場において、ストライキ自体あまり行われていないものですから労働争議が急に起こるってことはちょっと想定してないのかもしれませんが、しかしまあ分かりませんからね。そういうものも含めて、緊急事態を一括にやろうということはあるかもしれません。
もしそうならば、こうした発想は、「国家緊急権」と言われまして、国家は非常事態ならどんな措置もとりうるという考えです。明治憲法ではそういう規定がありました。天皇の緊急勅令や戒厳の権限であります。そして明治憲法では、この国家緊急権とか戒厳令にプラスして、第二章の「臣民の権利義務」の章にある第31条では、天皇が非常事態と判断すればいくらでも権利を制限できるという条文をおいていました。その発想をこのまま法律に持ち込もうという話にもなりますので、そういう意味では非常に危惧されます。
●公共機関に対する協力義務、業務従事命令● [↑目次へ]
会場 「自衛隊法第百三条の民間の人に対する業務従事命令なんですけれども、これがこの有事法制の武力攻撃事態法案と絡んでくるのは、『指定公共機関』の中に会社が入るという形になるのか、それともこの後ろの方にある『事態対処法法制の定義』、つまりこれ以後『輸送および通信に関する措置』であるとか、そういうのの中に、つまり自衛隊法の第百三条に罰則を付けますよという形で変わってくるのか。どっちの方向に行くものなのでしょうか。あるいはこれらは別のものなのか。ようするに自衛隊法と武力攻撃事態法との関係なんですけど、いかがでしょうか。」
河上 該当する条文はいくつかあるんですが、自衛隊法改正案の第百三条は「業務従事命令」っていうのがいくつか入ってますので、それに関連して、武力攻撃事態法では公共機関に対する協力義務っていうのが課せられるっていうことで、これが連動するんじゃないかっていう話を先ほどぼくはしたと思うんですが、それに関連した質問ですよね。
(自衛隊法より)
(防衛出動時における物資の収用等)
第百三条 第七十六条第一項の規定により自衛隊が出動を命ぜられ、当該自衛隊の行動に係る地域において自衛隊の任務遂行上必要があると認められる場合には、都道府県知事は、長官又は政令で定める者の要請に基き、病院、診療所その他政令で定める施設(以下本条中「施設」という。)を管理し、土地、家屋若しくは物資(以下本条中「土地等」という。)を使用し、物資の生産、集荷、販売、配給、保管若しくは輸送を業とする者に対してその取り扱う物資の保管を命じ、又はこれらの物資を収用することができる。ただし、事態に照らし緊急を要すると認めるときは、長官又は政令で定める者は、都道府県知事に通知した上で、自らこれらの権限を行うことができる。
2 第七十六条第一項の規定により自衛隊が出動を命ぜられた場合においては、当該自衛隊の行動に係る地域以外の地域においても、都道府県知事は、長官又は政令で定める者の要請に基き、自衛隊の任務遂行上特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣が告示して定めた地域内に限り、前項の規定の例により、施設の管理、土地等の使用若しくは物資の収用を行い、又は取扱物資の保管命令を発し、また、当該地域内にある医療、土木建築工事又は輸送を業とする者に対して、当該地域内においてこれらの者が現に従事している医療、土木建築工事又は輸送の業務と同種の業務で長官又は政令で定める者が指定したものに従事することを命ずることができる。
3 災害救助法 (昭和二十二年法律第百十八号)第二十三条の二第二項 及び第三項 並びに第二十三条の三 の規定は、前二項の規定により施設を管理し、土地等を使用し、物資の保管を命じ、又は物資を収用する場合について、同法第二十三条の二第二項 、第二十四条第五項及び第二十九条の規定は、前項の規定により医療、土木建築工事又は輸送に従事する者を長官又は政令で定める者の指定した業務に従事させる場合について準用する。
4 第二項に規定する医療、土木建築工事又は輸送に従事する者の範囲は、政令で定める。
5 前四項に定めるもののほか、第七十六条第一項の規定により自衛隊が出動を命ぜられた場合における施設の管理、土地等の使用、物資の保管命令、物資の収用又は業務従事命令について必要な手続は、政令で定める。
6 第一項又は第二項の規定による処分については、行政不服審査法 による不服申立てをすることができない。
河上 そういうことで、これは先ほど言い忘れちゃったんですが、この業務従事命令は罰則が付いてないんです。業務従事命令は罰則が付いてない。これは与党側、まあ公明党だと思いますが、今回は見送ろうということになっているようです。ただ自民党中心にこれに罰則を付けろという声が非常に大きいので、国会審議の中で罰則を付けるっていう話が出てくるかもしれません。
ただ罰則がなくても、当然、企業の中では労働者個人がこの業務を断ると、解雇の対象になりかねないという問題がありますので、そういう意味では事実上の徴用になりかねないだろうということは言われています。それ以上に細かい点は、さらにありましたらもう一回言っていただければ再度お答えしたいと思います。
当面は、武力攻撃事態法案の方の第六条の「指定公共機関の責務」を当てはめてきて、その後自衛隊法に罰則を付けるみたいな形の流れになるのではないでしょうか。
(指定公共機関の責務)
第六条 指定公共機関は、国及び地方公共団体その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態への対処に関し、その業務について、必要な措置を実施する責務を有する。
河上 ですから公共機関に「協力義務」が課されているのはその通りです。その「協力義務」を受けて、まあそれがすっぽり同じで重なるかどうか分かりませんが、自衛隊法の第百三条は「業務従事命令」があるのもあるので、業務従事命令となりますとこれはもっと強い。ま、そういうことになりますので、非常に強く作用する。ただし罰則はまだないということだと思います。ちょっと細かい法律論になりましたけど。
会場 「分かりました。ありがとうございます」
●原発を無くせば戦争が出来るか● [↑目次へ]
会場 「非常に基本的な質問なんですけど、じつはこういう法律とかいろんな法律を作っても、日本が攻められた時に原発とか石油備蓄基地は無防備であって、そこを攻撃されるとそれこそ1発でも日本が滅びるというか、全体がダメになっちゃうから、こういう冷戦構造時代の軍事学の発想で、またもう一度第2次世界大戦のような戦争をやるための法律を作ろうというのは非常に時代的にナンセンスだというお話でしたよね。
しかしそうなると、『ストップ原発』ということも、放射能の問題とか環境からは非常に賛成なんだけど、全部無しにしちゃうと『さあ、いつでも戦争できますよ』というふうにならないか、ということについていかがでしょうか。」
河上 まずこの有事法なり軍事的防衛論なりが想定する戦争・軍事的防衛論の想定は、日露戦争時代のような発想だと私は思います(笑)。つまり冷戦期ですらないです。
これだけ住宅が密集してですね、まあ仮に原発がないとしても、様々な石油備蓄基地、ガソリンスタンド、自動車、工場など、とても軍事力で守れるようなものではない。日本は耐久力はゼロどころかマイナスです。ただし、これは国民の生命を第一に考える防衛論なら、です。国家の独立とか国家支配機構を守ることなら、「国民の生命や財産などが無くなろうがおれたちは生き残るからやるんだ。さあ戦争をやってくれ」っていうんなら成り立つかもしれませんけど。だから、結局、この種の議論をするときに、大事なのは防衛目的の一番大事な物は何かっていう根本問題だと思うんですね。
つまり、ぼくはまあそれをもっと単純化して「国民を守るのか、国家を守るのか」っていう言い方をしましたが、いろんな防衛目的がたくさんある中で、究極の場合に何を犠牲にして何を守るかということを考えることが重要です。
そうなると、いちばん犠牲にしちゃいけないのは国民の生命だろうと私は思います。つまり、極端なこと言いますと、独立は仮に失っても回復できるチャンスは長期的に考えればいくらでもあるわけですね。ところが国民の生命は一度失ったら帰ってはこないんです。ましてこの核時代に「一人もいなくなったけど勇敢に戦いました」って碑が建てられたって何にも嬉しくないわけですね。だから独立を回復する闘いは、これは困難極まりますけれども、行うことは可能であるということです。ようするに究極の場合にどこを優先するかということを考えるだけで、防衛論は全然違ってくるわけですね。国民の生命の方を重視するのかどうなのかという根本問題から議論をはじめたほうがいいと私は考えます。
こういう意味ではこの有事法も含めて、そして冷戦時代の防衛論も含めて、これは日露戦争時代の発想だと思います。「都市型社会」の時代には到底これは出てこない発想です。ヨーロッパでも同じ条件だと思います。アメリカは若干広さがありますけれども、あの重武装というか世界最強と言われた軍隊を持っていると言われているアメリカでも、あのテロ攻撃といわれる9月11日の事件ですね―これ真相は分かりませんが、言われている通りだとするならば―、ああいうテロ攻撃っていうことを含めれば守りきれないわけです。そういうことを考えれば、こういう法整備をいったい何のためにしているのか。これはやはり「軍というものが動く時にはフリーハンドで動くのが当然だ」っていう法整備であったり、制度作りをしたりする。まあ、広く言えばそういうことだろうと思います。
ですから、原発をなくして、そうすれば戦争が出来るようになるかっていうことについては、まあ少しは足手まといがなくなるっていう程度にはなるでしょうけど、やはりそうはいっても石油備蓄基地もあるし、それから資源の供給ルートをどう確保するかっていうこと考えますと、これはもう到底戦争などできないわけです。だから「シーレーン防衛」ってことがかつて言われましたけれども、これも到底守り切れるものではありません。これは侵略国も同じことが言えます。侵略国も自分の供給ルートを確保出来るかっていうと、ゲリラ戦でやられちゃうと供給ができないんです。そういう意味で言うと、先進国同士の戦争っていうのはちょっと考えづらい。それが現代の「都市型社会」の構造だろうと思います。
●国家緊急権と責任制の原則● [↑目次へ]
会場 「有事法制を国家緊急権という側面から捉えることも可能だと思われるんですが、その場合、仮に国家緊急権が必要だという立場に立った場合、目的の明確性とか、緊急性を必要最小限度にするとか、3つ目に責任制の原則とか言われることがあると思うんですが、これも内容がよく分からないですね。
諸外国で国家緊急権というような憲法、あるいはそれ以外の法律関係の場合の責任制の原則というのはどうなふうになってるのかっていうことで、例えば今回の武力攻撃事態法案の事後的であれ国会の承認を要するというのは、これは責任の上で成り立つのかっていうこと。
それから第2点目として、今回の武力攻撃事態法案でそれに関する条項があるのか、責任制の原則に関する国会の議論ていうのはどうなってるのか、なされてるのかということをお聞きしたいのですが。」
河上 私も詳しいことを知ってるわけではありませんし、法による統制がきつい場合と緩い場合という話を先ほどしましたが、きつい場合というのはつまりドイツの事例ですね。いろいろなことを詳細に定めて議会統制なんかを非常に厳しくする。まあそういうふうにやってるドイツの事例。全然といっていいほど持ってないスイスの事例。もうほとんど全権委任に近いフランスの事例。これらを比較検討すると、そのお尋ねの問題はより正確な答えが出てくるんだろうとは思います。
ただし、この国家緊急権というものは、その発想自体を日本国憲法は認めていません。
つまり憲法というものは、これは<契約書>ですから、「社会契約」の契約書、「信託」の契約書ですから、明文で禁止していなかろうが、権限の規定がないということは、これは「授権の否認」であろうと思いますので、そして様々な規定、9条、前文だけじゃなくて、例えば軍法会議を禁止する、特別裁判所の禁止、(第76条2項)など、そういうものがあったり、戒厳の権限とかそういうものは一切規定されてなかったりしますので、日本国憲法の場合は国家緊急権というのは基本的に否認されている、授権されていないものだと思います。
けれども、まあ、一般に言われる責任制の原則と言っていいのかどうか分かりませんが、議会の統制であるとか、それから軍人をいかに統制するかっていう意味ではシビリアンコントロールという問題があるとか、こういった問題が今回の法案の中ではどう関わるかってっていうのが今のご質問の主旨であれば、今回、国会統制は基本的には「防衛出動であればいちおう従前通り」という建て前なんです。これはちょっと条文を正確に読めばいいんですが、自衛隊法の方なのでちょっとこれは読み上げるの大変なので、見ていただければそういうふうになってます。
ただ、陣地構築なんかの場合は事後承認が原則になってますので、これは結局国会の統制の大変な空洞化が見られる。しかも国会承認が否認された場合は、基本的に防衛出動は「直ちに撤退しなさい」となってるのが「速やかに撤退しなさい」になってる。これご存じかと思いますが、法律用語では「直ちに」と「速やかに」は意味が違います。役人用語ですが「速やかに」の方が遅いです。そういう意味でも空洞化が進んでる。そういう意味では議会統制が非常に緩やかになってる。
それからシビリアンコントロールっていう点では、官房長官を委員長とした委員会が作られることになっています。つまり総理大臣が「おそれ」「予測」を判断するというのは軍事的知識がないものですから難しいので、統幕議長―自衛隊の制服組のトップですね―なんかも入れた、あるいは警察も入れるんだそうですが、専門委員会が作られることになっている。恐らくそこが判断をして、本部長である総理大臣に意見具申をして、本部長の求めに応じて総理大臣が―つまりこれ実は同一人物なんですが―命令を出すと、こういう構造になっていますので、これはシビリアンコントロールの正反対になるだろうと想像されます。つまり、政治家ではなく軍が判断することになる可能性が強いわけです。
しかもさらに武力攻撃事態法では米軍との緊密な協力という規定があります。おそらく軍、統幕、自衛隊だけが判断するっていうことは可能性が薄いので、米軍と緊密な協力をするとなるでしょう。この規定はそういう使われ方をするのだと思います。
以上を踏まえて考えると、この「シビリアン・コントロール」は、結局、「アメリカン・コントロール」になると思います。このように私は思いますので、それが責任制の原則の問題の全てではないんですが、そういう意味では今回の法案ということに論点をしぼっていうならば、そうしたもの一切合財が、いろんな意味で空洞化されています。だから仮に国家緊急権を認める立場からしても、今回の法案というのはとても素直にすんなり通せるようなものじゃないのではないかと私には強く思われるわけです。
●アメリカと一緒に戦争をするのか● [↑目次へ]
会場 「武力攻撃事態に関する定義の第二条の、六のイの(1)、(2)で、アメリカとの安保条約との関係で書かれてるんですけも、これは一緒にやるということだけじゃなくて、なんか別の意味もあるような感じがするんですけども。
ようするに今まで安保条約っていうのは日本を守るためっていうか、そのためにあったんだけど、今度はそういう枠を取っ払ってアメリカと一緒に戦争をやるという。今までも周辺事態法があったんですけど、それはあくまでも後方地域支援に限定されているという問題があったと。だけどそれだけじゃなくて、今回はとにかく一緒に軍事行動をやるんだということが全体読むとプンプン匂うんですよね。そうするとここはどういう関係で言われてるのかなあということについてはいかがですか。」
イ 武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置
(1) 武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊等の展開その他の行動
(2) (1)に掲げる自衛隊の行動及びアメリ力合衆国の軍隊が実施する日本国とアメリ力合衆国との問の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という)に従って武力攻撃を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設または役務の提供その他の措置
河上 この問題は、いわゆる集団的自衛権に関わる問題なのですが、つまりそのアメリカが攻撃された時に日本が肩を並べて一緒に戦争をやるかどうかということです。まあアメリカが攻撃された時っていうのは、アメリカが攻撃するから攻撃されるわけですけどね。まあ、とはいえ、アメリカの攻撃に対して日本は周辺事態法では後方地域支援、すなわち兵站をやるということになったんですが、今回はさらに肩を並べた戦争をやれるかどうかという問題が突きつけられています。
この問題のヒントがあるとすると、今回は「武力攻撃事態」っていう形で対処するとなってますから、日本への攻撃があれば米軍と一緒に武力行使をやれるわけです。つまりこの日本の武力行使は「個別的自衛権だ」と強弁できるわけですね。ですからアメリカの戦争に日本が後方地域支援をするだけじゃなくて、この「武力攻撃事態」と絡める形で、つまりアメリカと一緒に後方支援、兵站支援をやりますと、日本攻撃ってことが十分あり得る。これテロも含めてあり得る。そうであるとすると、場合によっては事実上の集団的自衛権を、自国の自衛権の名の下にやる可能性はある。それはですね、例えばその自衛権は攻撃されて発動するならまだいい方なのですが、今回問題になるのは、今回の武力攻撃事態は「おそれ」と「予測」というのが付いてましたよね。そうするとこれ深読みなのかもしれませんが、武力攻撃があった時に自衛権を発動するっていうのは今までの自衛隊法通りなんですが、「おそれ」と「予測」の段階で武力行使が出来るかっていう重要な問題があります。
これはいまご指摘になったところのイですね。「六 対処措置」の「イ 武力攻撃事態を終結させるために実施する次に掲げる措置」という中に(1)。まあ今は(2)を今お読みいただいたんですが、(1)に「武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」と入ってるわけです。この対処措置というのは、「おそれ」や「予測」の段階から対処措置が発動しますから、深読みかもしれませんが、そうすると「おそれ」と「予測」の段階で、このイの(1)の「武力の行使」というのが解釈によっては入りかねない。
つまり「おそれ」「予測」の段階で先制的自衛って可能性があるんですね。ただ、この先制的自衛、つまり攻撃を受けてないのに「おそれ」「予測」の段階で武力攻撃をしますと、これは明白な国際法違反です。国連憲章第51条違反なのです。
としますと、どうしてそんなことが起きるのか。そして自衛隊法の改正の武力攻撃事態法に入ってる条文で、ちょっと条文のどこか忘れちゃいましたが、自衛隊法では「国際法の規定に基づきながら行動する」っていう、その「国際法の規定に基づいて」という部分が削られてる部分があるんですね。国際法の制限であれば先制的自衛は出来ないんです。それを意図的に削ったとも見られる。これは要するに米軍も関わってくる中で米軍をも網に掛けかねないから、米軍の先制的自衛というものをフリーハンドにすることが必要だと。まあ、米軍はもともと別に日本の国内法に従うわけではないんですが、一緒にやるときに齟齬が生じちゃいけないという配慮で、場合によっては「おそれ」や「予測」の段階から米軍と一緒に戦争をやりかねない。
以上をまとめますと、この武力攻撃事態の法律は、アメリカの兵站をやると武力攻撃が来るっていうだけじゃなくて、その米軍と一緒に戦争をやる集団的自衛権に踏み出すために「おそれ」と「予測」っていう問題も一緒に使って、アメリカと肩を並べた戦争をやりかねないところに道を開く可能性がある。
これはぼくの条文深読みかもしれませんが、十分この恐れありというふうに思っています。政府はこの点どうお答えになるか、まあ野党がいれば聞いてもらいたいところですが、今のご指摘は杞憂ではないと思いますので、私もその辺は危惧しているところです。
会場 「国会では福田さんの答弁と総理の答弁が違っていましたよね。福田さんは「ミサイルが着弾しそうになった、空中にある時」、日本を飛び越えてきた時もありますけど、「着弾しそうになった時」攻撃と認めるけど、小泉さんは「向こうでミサイル基地が動きが慌ただしい」、ようするに燃料補給の車の動きがすごく多くなったと―これは衛星で分かりますから―、その時点でもう恐れがある事態だって答弁していましたけどねえ。だからこれ閣内不一致でこの法案は本来廃案なり継続審議にすべきなんだろうけども、野党に力がないから政府がそういう不完全なものでも通そうとするのが問題だと思うんですけれども、法案を全部研究するにしても時間ややっぱり学者先生っていいますか、そういうんじゃないと分からない法案だということなんですが」
河上 ようするにまあ今の小泉内閣は実態は「福田内閣」なんですけどね(笑)。 今のはつまり「おそれ」の定義が非常に広がってるっていうお話しだと思うんです。問題はその「おそれ」や「予測」の段階で武力行使が出来るのか出来ないのか。武力攻撃事態法は禁止する条文がないんです。だから危惧されるということだと思います。
こういう法案はともかく廃案にすべきだと私は思います。その上で、今こそ、全世界の平和的生存権を保証する政策と法整備を、国民参加で推進すべき時なのではないかと思います。
(終わり)
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