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山崎 久隆
いろりばた会議開催日から1週間前の9月11日、アメリカの世界貿易センタービルに、ハイジャックされた旅客機が2機続けざまに突入した。さらに3機目がアメリカ国防総省ペンタゴンに突入。ハイジャックされた残りの4機目はペンシルベニア州ピッツバーグで墜落(詳細は未だに不明)。世界貿易センタービルは数時間後に完全崩壊した。この突然の惨事は世界中のTVで中継されることとなり、前代未聞の被害規模のテロ事件として世界中を震撼させた。
いろりばた会議でも今回のテーマの予定だった、最近の全国の原発の動きを振り返る「今月の原子力」を、このテロ事件と原発の関連の話に変更した。

●非常に今は危険なメディアになってきています●福島第二原発3号機のシュラウド損傷とか、柏崎原発の立て続けの制御棒駆動機構制御システムの破損とか、いろんな問題がたくさんあるんでその話を予定してたんですけども、まあこうなった以上現状に即していくしかないんで、その話は機会があればつぎの会にでもやります。
で、今回の事件に関してちょっと最初にですね、冒頭、わたしの資料は目次もなくて申し訳ないんですが、B4の紙のいちばん最初に読売の社説を2つならべました。
これはある種典型的なメディアの、日本のメディアが−まあ日本のっていうか世界のメディアも似たようなもんなんですけど−どういうふうにいい加減か、いい加減かっていうか舌の根も乾かないうちにこうも変わるもんかという典型ですから、メディアリテラシー(新聞、テレビなどの情報を自分なりに判別する姿勢)という面からも引っ張ってきました。
08/21 21:05 8月22日付・読売社説 |
8月22日の読売社説、これは事件が起こる前のですね。これは比較的まともです。これはパレスチナ問題に関する社説です。傍線引っ張ったところ、簡単に紹介します。要約するとイスラエルとパレスチナで、いわゆるテロの応酬が続いていた時代で、ジョージ・ブッシュはその前の政権とは異なりましてですね、冷淡というか、イスラエル寄りと言われてますが、イスラエルのテロによってパレスチナ自治政府やアラブ系の人たちが殺されてもそんなの関係ないという姿勢ですね。これはもう元々アメリカの石油戦略が、アラブ世界からどうやって利権を奪い取るかと、いうようなところから策動してましたから、元々がイスラエル寄りであったことの単なる反映です。それに対して読売社説は比較的正確に批判をしているわけですね。下の項目を見てください。「紛争が終わらないのはイスラエルのヨルダン川西岸の占領を続けているからだ」。それがようするにテロの応酬を産んでいると。つまり本質論を言ってるわけです。いちばん最後のところには「双方は、先の見えない混迷と流血に耐える覚悟があるのか」と。「何より子供たちの命への責任をどうするのか」、これはイスラエル、パレスチナ両方に言ってるわけです。その次です。9月15日に−事件は11日に起きるわけですが−、その後の社説は論が180度ひっくり返るわけです。
09/15 22:37 9月15日付・読売社説 |
ほんの半月前にですね、テロの応酬に対して厳しく批判をしていた読売社説が、ここにきてなんと言い出したかというと、「気掛かりなのは、「報復は報復を呼び無益だ」とか「米国に加担すると日本がテロの標的になる」として、慎重な対応を求める意見が国内にあることだ。これは極めて疑問だ」と。アメリカのテロに対する報復を日本も支援してしっかりやれ、という論調にひっくり返ってるわけですね。確かに9月11日のテロというのは非常に凄まじいもので、確かにいろいろな意味で歴史がここで変わったと、わたしは認識をしてますけれども、だからといってその歴史が変わったという認識をベースにしてですね、対応する方法も180度変わったのでは、これはもう政治でもなければなんでもない。そういう、たんなる応報主義というようなことになってしまうんですね。それはもう、報復主義なわけで、アメリカの軍事行動というのは常にそういうことをやってきたわけですけど、日本はそれから距離をおいて、本来あるべき平和外交とか平和への模索をどうするべきかと考えてこなければいけないはずの国の新聞社の社説が、こうもコロコロ変わっていると。つまり、パレスチナ問題に関しては日本は直接、日本人があそこで死んでるってわけではないということもありますけれども、そういう意味では直接の関わりはあまりない。したがって客観的にその問題の本質はどこなのかって見極めてそれに対してキチッとした論をなすことが読売ですらというと語弊がありますが、読売新聞はやっていた。ところが、日本人が20数名いまも行方不明で、かつ、アメリカは戦争だ戦争だと旗を振り始めた。日本は、読売紙は特にそうですが、日本の位置というのは日米安保体制下のもとにあって、それで平和と安全が維持されているという立場に立っている。そういう国であるからこそ、アメリカと一緒になって、つまりアメリカというよりも、国際社会の反テロ戦線に加わって戦えという旗振りを始めた。じつはこれは戦前のですね、日本が戦争に突っ込んでいくときの構図と非常によく似ているんですね。
日本も最初っから日中戦争礼賛の新聞ばかりではなかったわけです。日中戦争が始まる前の段階はですね、やはり日本の中国政策はおかしいんじゃないかというようなことをちゃんと書いていた新聞もあった。ところがいざ日中戦争が泥沼化をしていき、日本の兵隊もそりゃ沢山死ぬわけですね。そういう構図の中でいけいけどんどんになっていって、とうとう1941年の12月8日で、朝日新聞とか毎日新聞だとかみんな「鬼畜米英」になっていくわけです。戦争が始まる前の段階っていうのは、常にこういうふうなメディアの、ものすごい勢いで戦争に突っ込んでいく旗振り役をはたしていくという構図は今も昔も変わっていない。そのことをやっぱり非常に厳しく見ていかなくちゃいけない。「新聞をやめてしまえ」っていう説もあるかもしれませんけれども、やはりぼくたちは、新聞に対し、「言論人として、あなたたちは無責任すぎる」ということをですね、ちゃんと言っていかなくちゃいけない。
朝日新聞に勤めている人の知り合いという、まあ伝聞の伝聞で申し訳ないんですけれども、朝日新聞の中ですら外信部は、この事件が起きた後、「そら戦争が始まった」とばかりに浮き足だって記者が飛び出していく構図で、落ち着いて見ようなどという気風は微塵も見られない社内風景であるということを伝えてきている人がいます。そういう状況にいちばん抵抗感をもってですね、冷静に見なくちゃいけないのがメディアの役割であるにもかかわらず、そうなってない現実があるということをやっぱり見ていかなくちゃいけない。ということをまず最初に言って、それが新聞をこれから読んでいくときの、ひとつの視点にしていただければと思います。アメリカのニューズウイークとかあるいはテレビのCNNなども含めてですね、非常に今は危険なメディアになってきています。
●「ミサイル、航空機などの垂直降下の備えは想定していない」●
それで、わたしはその記事をいくつか引用はしてきていますけれども、その書いてある内容ではなくて「誰が、どこで、何を、どう言ったか」ということが重要だと考えてその記事を紹介していきます。
09/16 16:15 米テロを他山の石に対策 原発などで平沼経産相 |
まず、右半分2ページですが、ここでじつに真っ正直な平沼経済産業大臣の姿が見てとれます。よく言ってくれたとわたしは評価をしております。共同通信の記事です。これは毎日にも載ってましたけれども、平沼大臣は「原発は地震など横の揺れには万全の設計をしているが、ミサイルや旅客機などの垂直降下への備えは想定していない。不審機が侵入した時は自衛隊機の緊急発進などが可能だ」と言いながらその後モゴモゴ…と。という状況ですね。まあ、何を言ってるかといえば、早い話し上から飛行機落っこちてきたらどうしようもないですよ、と。で、これにずっと後の方で、3ページ目、4ページ目、見てください。呼応する話があります。
時事通信 ◎空からの原発テロに危機感=IAEA総会開幕
[2001-09-17-21:41]【ウィーン17日時事】国際原子力機関(IAEA)総会が17日、ウィーンの本部で始まった。開幕に際して記者会見したIAEAのキッド広報部長は、米国での同時多発テロ事件に関連して、原発は空からのテロ攻撃に対する十分な安全対策を施されていないと述べ、テロ攻撃に対する危機感を示した。
キッド部長は、テロ攻撃に伴う放射能漏れを防ぐために、コンクリートなどの防護壁で原子炉を覆うことなどが考えられるとしながらも、経費が掛かる上に、完全な対策ではないと指摘した。
時事通信 ◎新たなテロに備え核管理強化を=米大統領、IAEA総会に
[2001-09-17-23:03]【ウィーン17日時事】ブッシュ米大統領は17日、ウィーンで開幕した国際原子力機関(IAEA)総会でにメッセージを寄せ、米国での同時多発テロ事件を踏まえ、核物質などを使用した新たなテロに備えて、核管理を強化するようIAEAに訴えた。
大統領はメッセージで、「米国と同盟国はテロに対する戦争に勝利を収めるだろう」とした上で、国際平和を確保するためのIAEAの役割を強調した。これは4ページ目のですね、時事通信3つならんでますけども、4ページのいちばん上のですね、「空からの原発テロに危機感 IAEA総会開幕」。これIAEA(国際原子力委員会)の総会が11日にウイーンで始まったんですけれども、キッド広報部長、「原発は空からのテロ攻撃に対する十分な安全対策を施されていない」。これは日本に限らず世界中の、という意味ですね。で、さらにブッシュ大統領は「核物質などを使用した新たなテロに備えて、核管理を強化するようIAEAに訴えた」というようなニュースが流れてきてます。いまさらですね。いまさら大騒ぎを始めた、という実態なわけです。
じつはですね、これを見てわたしは最初に頭にきたわけです。後になって率直に言ったなと思いましたが最初は激怒をしていました。というのは1980年代終わり、六ヶ所村再処理工場の話が出てきたときから90年代にかけて、国とさんざんやったのが、六ヶ所村再処理工場のすぐ隣、20km離れたところに三沢空軍基地がありますね。自衛隊、米軍の空軍基地です。それから民間飛行機も飛んでます。そこの飛行機が誤って再処理工場に墜落したらどうなるんだということをさんざんやったときに彼らが言ったのは、米国サンディア国立研究所というところで行われた実験において、何メートルだったかな、2メートルだったかな、コンクリ壁があれば、それに航空機が満載の燃料を積んで突っ込んでも内部には全く影響がないということを堂々と言ってるわけです。そのときのサンディア実験のビデオまで公開しまして、「これで大丈夫だ。ほら見てごらんなさい、ヒビくらいしか入ってないでしょう」と。そういうことをさんざん言っていたわけです。ただそれは側壁なんです。問題は天井の強度です。
再処理工場に2メートルもの天井を張れるかどうか、さっきの槌田さんの話(日本への誘致が問題になっているITER(国際熱核融合実験炉)も天井が薄く弱い構造になっている)と同じように、再処理工場の屋根に2メートルのコンクリ張ったらですね、これは屋根抜けてしまいますね。ま、地震とか考えるとそっちの方が危ないということになりますから、平ったい建物の天井なんていうのは薄いです。これと同様に原子力発電所の天井も薄いです。PWR(加圧水型軽水炉。主に西日本で採用されているタイプの原子炉)型原発の家根を見ると、ドーム型になってますね。ドーム型になってるのはどういうことかというと、あれは真ん中に原子炉があるので柱たてられませんから。原子炉建屋の場合は周辺の壁で天井を支えなくっちゃいけない。したがって球形にしておけば重量がまわりにうまくかかって、大きな円筒形の建物でも天井を支えることができます。そういうふうな構造だから丸いわけですね。したがって天井板が、何メートルもあるはずがないわけです。当然、まあ数10センチのコンクリと鉄骨が入ってるだけと。
今回のニューヨークの見ても分かります通り、航空燃料を大量に積んだ民間機ということが前提となるわけですから、原子炉建屋にぶつかって穴が空いて中に飛行機が落っこって、その中のコンクリは結構厚いものが入ってますけど中の航空燃料が爆発炎上すればどうなるか、想像するまでもないですね。原子炉は吹き飛ぶよりも、冷却系統が破壊されてメルトダウンを起こすという確率の方が多分高いだろうというふうに想像します。土台ごと吹き飛んでしまうということはあまり考えにくいです。それなりのコンクリ材を組み合わせた構造になってますので。ただし上の方、建屋の上部の方は−原子炉の建屋最上階のすぐ下ですね−、つまり燃料取り替え用プールがBWR(沸騰水型軽水炉。主に東日本で採用されているタイプの原子炉)の場合はありますが、そのフロアのすぐ下はECCS系(緊急炉心冷却装置。原子炉は常に冷却されながら運転されているが、パイプの断裂などで原子炉から水が抜けていくと高温の炉心=燃料を冷却できなくなってメルトダウンしてしまう。そんな時に最後の命綱となるのがこのECCSで、大量の水を送り込んで炉心を冷却することになっている)の配管や主蒸気系(原子炉で発生した蒸気をタービンに送る系統)の配管、つまり重要配管が全部入ってるんですね。でさらにそのずっと下層になると再循環系(原子炉で発生した蒸気がタービンを回して発電した後に、この再循環系で炉内を強制循環し出力を調整する。BWRだけに存在する)の配管なども入ってます。その一枚コンクリの壁をぶち抜かれると冷却機能が全滅します。そういう構造になってますんで、そうすると原子炉圧力容器は仮にまあ鋼鉄の容器で10数センチありますんで破壊されなかったとしても、まわりの配管が全部吹き飛んでしまえばこれはもうメルトダウンしかありません。ECCSがそのとき働くことを期待するという方が、おめでたいということになってしまいますね。したがって平沼経済産業大臣のこういう話になるわけです。
●あのテロがあった後ですら、撃墜することができるとはわたしは到底思えない●
今後どうなるかというと、あわてふためいた国は、海上保安庁の巡視船を舞鶴から出しまして、若狭湾とかそれから島根県沖に展開をしましたけれど、展開しただけですね。展開をして何か役に立つのかというと、これはまったく意味ないですね。空から飛んでくるものに対して巡視船が何の役にも立たないのはこれは当然です。仮に自衛隊が護衛艦を出しても、ではイージス艦のミサイルで攻撃をするかどうかっていうことになるわけです。平沼経産大臣の発言として出てきたのが、「不審機が侵入したときは自衛隊の緊急発進も可能だ」。で、そこで終わってるわけです。「撃墜する」とは一言も言っていない。日本の現状の体制ではですね、どこの所属機か不明である民間航空機を仮に原発に向かってるからといっていきなりミサイル撃って撃墜するなんてことは到底不可能です。これはアメリカだってかなり厳しいですね。思い出していただきたいのですが、1983年にロシアの−旧ソ連ですね−、旧ソ連サハリン沖で大韓航空機が撃墜された事件がありました。あのときは、あの大韓航空機が通ったルートというのは、じつは当時ソ連軍の要所、空軍基地だとかレーダーサイトだとか、そういったものの上空をずーっと飛んでるわけですね。そして、最後の最後でソ連領空から脱出しようとした瞬間にスホーイ戦闘機によって撃墜をされたと。だから、ほんとにぎりぎりまでソ連は、ソ連であってもですね、大韓航空機を撃墜する命令を出すのに時間がかかった、というのが実態です。それは当たり前ですね、民間航空機ですから。したがって原発に向かって飛んでくる民間航空機があったとしても、今でも、今でもですよ、あのテロがあった後ですら、撃墜することができるとはわたしは到底思えない。だからそんなことが何か意味があるかのように言ってますけれど、自衛隊で原発を護るっていうこと自体が空虚なんですね。
●で、半分が原子炉に到達をして爆発をするだろうと●
もう一つ言うならば「トラックボム」というのがあります。「トラック爆弾」ですね。これは世界中のテロでよく使われる手法です。有名な例で言うならば連邦ビル爆破事件(1995年)だとか。アメリカですね。それから、まあこれは今回の前に貿易センタービルの地下で爆発事件(1993年)が起きましたがそのとき使われた手法です。これらの「トラックボム」の場合でも車は中に入ってきてドカーンといくわけですが、これを止める方法があるかというと、現状原子力発電所に入った人なら分かると思いますけど正面ゲートでそんなものを阻止するような装備は何にもありません。したがってそのまま入ってドカーンとやられるというだけですね。じゃあトラックが2トンなら2トンの爆薬を積んで中に突っ込んで原子炉を破壊できるものかどうかということなんですけれども、これは日本ではなくてアメリカの方がやはりそのへんはかなり研究をしてます。1993年の爆破事件があったあとにNRC(米国原子力規制委員会)は「トラックボムオペレーション」ということで「爆弾対策」をやったんですね。でやった後に103基の原子力発電所に対してそれぞれ仮想的にどれだけ対策ができてるかということをやったところ、約半分の原子炉が破壊されたと。これは想定です。想定してトラック爆弾が突っ込んできて爆発をしたという想定をした場合、事前で阻止できるのがどれだけあったかというシミュレーションをやったそうですが、なんと半分が失敗に終わってます。で、半分が原子炉に到達をして爆発をするだろうと。その結果として原子炉がメルトダウンを起こす可能性はきわめて高いということで、NRCも「トラックボムオペレーション」の見直しをいま着手してやり始めたところなんですね。そのときにこの事件が起きたという状況になっているわけです。したがってテロがもし原子炉を襲う、原発を襲うということがあるとするならば現状アメリカですら半分がやっぱり失格ということになるわけですから日本においては全滅ですね。これは、宿命です。原子炉、原子力施設がいかなるテロに対しても防護できるなんていう態勢をとること自体が、実態的に不可能だし、本質的にも無理です。
(後半につづく)
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