第46回いろりばた会議録 
<2000年8月30日(水)18:30〜21:00 於 神保町区民館>
文責:いろりばた会議事務局


<唄> 「ビラをまいて歩こう」望月彰

<資料説明>
 

「東京電力・福島原発MOX差し止め裁判について」 海渡雄一さん

 ●プルサーマルとは?

 再処理工場でプルトニウムを抽出し、高速増殖炉でそれを使うのが、核燃料サイクルである。今回原子力長期計画において、高速増殖炉は未来のエネルギーという位置付けではなくなっており、プルトニウムの使い道のメインストリームはなくなっている。しかし原発を動かすために、再処理工場、特にその中の使用済み燃料プールは必要とされている。そのため、青森に使用済燃料プールを作り使い始める前の段階で、電事連が青森知事と、高レベル廃棄物処理のための法律制度を作る、プルトニウムの使い方をみつけるという約束をしている。この約束があるために、プルサーマルをまず高浜でやることになった。

 ●高浜のMOX使用差し止め成功

 高浜の3号の燃料で、内部告発により不正が見つかり、使用をやめることになった。4号の燃料も疑わしいと通産省も関西電力も知っていたが、その情報を隠して、プルサーマルをやろうとした。そこに関西の原発反対グループが立ち向かった。美浜の会の小山さん、グリーンアクションのアイリーンさんらが中心になり、改ざんがおこなわれていることを主張する専門的なレポートを出した。それも黙殺されそうになったが、この問題を英国のジャーナリストが告発、報道した。そして国会で取り上げられ、社民党清水すみ子の質問に対し、通産省が、英原子力安全部局(NII)からデータ偽造あるなしに関わらず、燃料の安全は保証されている、ということを言った。そこでNIIからの書面を全部公表することになり、データが偽造されているという手紙を公表せざるを得なくなった。そのため、関西電力は裁判所が判決を出す前にMOXの使用許可申請を取り下げた。

 ●プルサーマルの危険性

 東京電力・福島MOXは高浜MOXと炉型が違う。福島は沸騰水型、高浜は加圧水型である。また作っている会社も違う。高浜は英BNFL社、福島はベルギーのベルゴ社である。ベルゴの方が工場施設は古い。

 プルサーマルは世界的に経験豊富というのは誤りである。この30年で1700体のみである。これは全ウラン集合体の比較で全体の0.2%である。さらに沸騰水型でプルサーマルをやるケースは加圧水型と比較して世界的に少ない。沸騰水型についてはわずか360体、柏崎3号基で予定の集合体の数にほぼ等しいくらいの世界的実績しかない。

 そもそもプルサーマルは、制御棒の利きが悪くなる、停止のための余裕がない、燃料の融点が低下する、熱伝導が悪い、ボイド係数の絶対値が増える、など暴走事故につながる要素が多く、危険性が高い。反応度がいっきに高まり、燃料がこなごなになる事故が起きかねない。未確認だが、既にBNFL社が作りスイスに納入の燃料が事故を起こして、燃料の集合体のなかで粉々になったというニュースもある。

 ●MOX燃料の性格

 MOX燃料のデータの偽造が問題になるのは、MOX燃料には難しい要素が多くあるからである。

 第一に、MOX燃料は作るのが難しい。酸化ウランと酸化プルトニウムという別々の粉末状のものを均一に混ぜて作るのは大変難しい。

 第二に、MOX燃料は運転初期には「焼きしまり」という現象を起こす。燃料は原子炉が稼働を始めると締まる。そうするとペレットと被覆管の間に隙間が空く。ところがしばらく運転が続くと被覆管の外側の圧力が高くなり被覆管が縮む。一方、核分裂の際に気体が発生するため、燃料は膨らむ。このようにペレットが小さくなったり大きくなったりする。小さいときは隙間が空きすぎて冷却がうまくできなくなる。大きいときは被覆管を破り、燃料自体が粉々になる。また、被覆管が壊れて中に冷却水が入ってくる、などの問題が生じる。このため、ペレットの大きさの管理を厳格にせねばならない。

 第三に、プルトニウムを使うため、被曝を避けるためにグローブボックスを用いて、気密状態で作業を行わねばならない。今回の裁判で問題になる燃料の測定も全てグローブボックスの中でやる、面倒な作業である。

 ●福島MOX燃料の不正

 ペレットの検査も、高浜と福島では違うやり方で行われている。高浜では、検査は3000あるペレットの中から200抜き出し、不合格のものが6個以上でたら全体のロットが不合格という基準で行った。一方、福島のベルゴは7000ペレットから32個抜き出し、内1個でも不合格があったら全体のロットを不合格とする基準である。高浜では、7ロット不合格が出ている。これは工程管理の不良ペレットの確率からして合理的な結果である。一方、福島の場合、全て合格であった。ペレットで不合格になったものがひとつもないということである。

 これについて東京電力は、ベルゴは工程管理が優れている、と自慢していた。しかし、ベルゴの場合、製造能力がBNFL社と同等だとすると、ロットは36%の確率で不合格になる。さらにふくろうの会の阪上さんがブレンダーごとの抜き取りペレット数を推計し、7000から32を選んで検査して全部合格する確率を推計したところ、おそろしく低いものとなった。この点を裁判で最も重要な証拠として主張する。福島MOXのデータは明らかに不正である。これは世界観、イデオロギーではなく、数理統計学で確率を出すという話である。この主張に対抗するにはBNFLよりベルゴの方が100倍品質管理能力が高いということを主張せねばならない。しかしそれはありえない。

 それでは、この不正はどのように行われたか。東京電力は「BNFLでは測定者と入力者がちがい、入力者が面倒くさがり、前に入力したデータをコピーして同じデータを張ったのでデータが狂った。ベルゴ社では検査員が測定値を確認した上で、足のペダルスイッチを踏んでデータをコンピュータに送る。
よって、BNFLのような改ざんは起きない。」と言っている。

 しかし、ベルゴの検査基準の場合、ひとつでも不合格を出したら、そのロットは使えなくなる。仕様外データが出たとき、ペダルを踏んだらおしまいである。燃料は測るところによって数値が違う。測定場所を変えることによって出てくる数値は変えられる。範囲におさまる数値が出るまで燃料を動かしつづければいい値が出る。きわめてプリミティブなやり方で不正が現実に可能である。通産省は参議院議員福島瑞穂に対する答弁で、この検査方式ではこのような不正を防ぐことができず、現場の労働者のモラルにかかっているということを認めている。ベルゴは改ざんというより、不良データを無視し、全てのロットを合格にする不正操作を行っていたと推測できる。

 ●MOX使用差し止め裁判の展望

 差し止め仮処分の裁判を8月9日に起こした翌日、審尋をやると呼ばれた。原告側3名のみで行き、2時間半くらい、いかにデータがおかしいかを説明した。数学と物理の教師であるふくろうの会の阪上さんの話を、裁判官は非常に興味深そうに聞いていた。東京電力からの答弁書は9月10日前後に出る予定である。裁判は公開でやりたい。仮処分申請だが、証人尋問等は公開の法廷でやってほしい、と裁判所に頼んでいる。証人は美浜の会の小山さんや、グリーンピースにお願いしている。東京電力には調査レポートを作った責任者に出てもらいたい。

 地元福島からの原告は138人。雰囲気は反MOXで盛り上がっているとまではいかない。福井と比較して弱いと思われるところがいくつかある。福井では県議が関西電力にデータの公開が迫ったが、福島県議はまだそこまでしない。また、マスコミについて、河北新報、毎日新聞など、とてもいい記事も出ていたが、福島民報、福島民友には、小さなベタ記事であった。これが福井新聞ならば一面トップぶちぬきで載る。福島県内の運動だけではなく、外から一丸となって、裁判を盛り上げていこう。


 

「東海村・臨界事故の原因と教訓」 山崎久隆さん

 ● 三宅島の噴火に対する都の対応

 石原慎太郎都知事が三宅島の全島避難を認めないのは9月3日に「総合防災訓練・ビッグレスキュー」があるからだ。都の災害対策部はビッグレスキューの準備に追われ、2000人もの三宅島民を受け入れられない。三宅島住民が作成したホームページ「島魂」には、「これ以上は無理だ!都と村は早急に避難勧告を!」とある。人が住んでいるエリアで火山岩が降り注ぎ、火砕流が発生している。火砕流には窒素酸化物、亜硫酸ガスなどが含まれている。そのような危険な状況にもかかわらず、都はビッグレスキューのためまだ避難しなくてもいいという。石原は三宅島3800人の命ではなく軍事演習を大事だと思っている。目の前に災害が起きている時、防災訓練という名目の治安訓練をしている。

意図が別のところにあり進められる行政は、簡単に住民を見殺しにする。東海村の事故にも、同じような問題がある。

 ●ロシア原潜クルスク沈没とJCO事故の類似性〜撤退局面での戦線崩壊

クルスクの事故では、軍の論理に従い機密保持が最優先され、人命は尊重されず救助は後回しにされた。軍の完結性、内部処理しようとする性格のため、プーチンには事故について十分に報告されていないし、真相は未だ明らかではない。

ロシアの原潜は冷戦時代400隻以上あった。今はほとんどすべてが核のごみである。軍の予算は削られており、それに見合った軍事力しか維持できないはずであるが、国家の威信のため破綻処理ができない。それがロシア軍の実態である。

クルスクの事故も東海村事故も、いわば撤退局面で起きた戦線の崩壊なのである。もんじゅは、今年の原子力利用開発長期計画において、その先行きが消滅している。高速炉としての研究開発の中核施設、将来の潜在的な利用価値がある、という意味付けにとどまり、時期を定めた計画は出されていない。資金も不足してきており、そのため動燃は18.8%のウランの精製をJCOへ丸投げしてしまった。JCOは商業用ウランの処理方法についても違法に裏マニュアルを作成していたが、これでも軽水炉用の3〜4%のウランならば臨界事故を起こすことはなかった。また、ラインを設計通りに使っていれば18.8%ウランでも臨界事故はおきなかった。しかし、正常稼動では仕様に見合った品質のものがつくれない。そのため、より複雑な方法を用いる必要があったが、JCOはそのために設備投資することはできず、軽水炉用と同じやり方でやったところ、臨界事故を起こした。

つまり、高速増殖炉計画は破綻しているにもかかわらず、破綻処理できず運転を継続し、動燃は経費節減のため燃料の発注をまる投げし、JCOも財政上設備投資できず、軽水炉用のやり方を流用したために、臨界事故は起こったのである。

国の威信に関わらず、安全性、経済性、目的喪失、などを理由に高速炉計画から撤退すべきであった。それができず、計画にしがみついたため、JCO事故は起こった。いちばんの加害者は計画を作り強行した国、科技庁であり、JCOがどういう処理をやっているかを知っていた動燃である。

この状況においてでも、長期計画策定会議高速増殖炉分科会の報告書には「資源を節約し、環境への影響の少ないエネルギー源として潜在的な可能性が大きい。」「早期に運転を再開すべき」「研究開発の中核的施設」とある。目的もなく、金銭的被害、JCO被害を出したにもかかわらず、もんじゅを再度動かそうとしている。まさしくもんじゅの大本営発表である。

 ●地震と原発〜東海村の教訓を生かして

 地震学者によると、日本は地殻変動が起こる大地動乱の時代へ突入しようとしている。そのため、地震地帯の上の危険物を撤退しなければならない。そのなかでももっとも緊急性があるのが原発である。日本の原発で安全地帯にあるものは一基もない。全面的防災態勢をとるべきである。東海臨界事故、三宅島の教訓を生かし、動乱が起こる前に、原発を止めていかねばならない。

<アピール>
・日の出の森、処分場反対運動について
・JCO劇について 他
 
 
 
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