第41回 いろりばた会議録 <2000月1日(木)
 

 「もんじゅ判決を前にして〜裁判の争点を語る」 海渡 雄一弁護士

   86年の提訴から14年を経て、高速増殖炉もんじゅ訴訟の判決期日は22日に決定されている。尼崎高速道路差し止め判決では、原告側の訴えが全面的に認められ、公害環境汚染の防止について裁判所が果たすべき積極的役割について改めて大きな問題が提起されたことは記憶に新しい。また、茨城県東海村の臨界事故やプルサーマルでのデータ捏造問題など、国の安全審査に重大な欠陥があることが次々と明るみになってきている昨今、これらの追い風が、どのように判決に反映されるのか期待している。
  もんじゅ訴訟の意義と争点  もんじゅ訴訟の特殊性
   実用化されて電力を供給している軽水炉とは異なる(もんじゅは研究開発段階の高速増殖炉である)ので、他の判決の「原発必要論」は適用できない。また、実際にナトリウム漏れ事故を起こしていて、事故想定の欠陥について争点が具体的であるので、他の判決のように「安全設備がついているので安全」と抽象的に述べることはできない。さらに動燃の杜撰さや国の安全審査のいい加減さが国民全体の知るところとなってきているので、判決でも被告批判をせざるをえない状況だ。そして、もんじゅは事故後ずっと停止中で、変更許可申請の目処もたっていない状態である。

   行政訴訟判決と民事訴訟判決が同時に出されるが、裁判所はそれぞれ判断する対象と視点が違う。(行政訴訟では83年の設置許可処分に違法性があるかを、現在の科学技術水準に照らして判断する。民事訴訟では口頭弁論終結時のすべての事情を考慮してその時点の知見から見て判断する。)
 

  原告側の裁判に対する最終的な姿勢
   確実に勝訴できるよう、「危険性」について争点を「地震」「ナトリウム漏洩火災事故」「蒸気発生器事故」「炉心崩壊事故」の点に絞り込んだ。また、法律上の争点も絞り込み、安全審査の基礎となっていた実験・理論が、99年現在の科学水準からみて明らかに間違っていることも強調した。
<地震>
   敦賀市白木の敷地周辺の断層は全て「要注意断層」である。もんじゅでは熱衝撃を避けるために配管の厚みがわずか1cmにされており、兵庫県南部地震では従来の動的解析では足りない「衝撃的破壊」が発生し、原子炉直下にも断層運動でできた部分があるので、動けば岩盤は割れ、炉は破壊されるであろう。
<ナトリウム漏洩火災事故>
   この事故は、災害防災上の観点からは問題はなく、安全審査も妥当であったと、国と動燃は主張しているが、運転期間中は起こらない程度の確率の事故とされていたにも関わらず、試験中に起こったわけで、安全性の根幹に関わる重大なものであった。また、二次ナトリウム漏洩事故では、漏洩ナトリウムは連通管を伝わって階下に落ち、事故は終息するであろうと仮定していたが、「高温腐食」を考慮していなかった点で安全審査には誤りがあった。高温腐食を考慮すると動燃の試算でも条件によっては床ライナは貫通することがわかり、動燃の改善策ではあまり意味がない。
<蒸気発生器事故>
   PFRで高温ラプチャ型破損が起こり、動燃はもんじゅではこの型の破損は起こらないと設計当時に確認している、と主張している。しかし、PFR炉で起こったのは、「本の伝熱管壁に亀裂が発生し、10秒程度で39本が2次破損し70本が損傷する」という事故であった。もんじゅではヘリカルコイル型の薄い脆弱な壁が用いられているため、溶接部分に破損が起こりやすい。実際に81年の動燃の実験では、92本のう25本が高温ラプチャ型破損を起こしているが、これらのデータは隠蔽されていた。
<炉心崩壊事故>
   動燃側は「非現実的な仮定をして初めて発生が想定される事故」としているが、日本では安全審査者は動燃の言いなりであり、(ドイツ、アメリカでは審査者は独自に計算・調査していて、ドイツで高速増殖炉が中止された理由のつは「最大エネルギーが設置者の言う通りという保障はない」というものだったのだ。)もんじゅで38MJが最高という保障はないし、万が一事故が起こって内部の放射能がでたら取り返しがつかない。もんじゅは研究開発段階であり、想定外の事故が起きる可能性が他の原発よりあるのにもかかわらず、事故経験がフィードバックされていない。世界の潮流を鑑みても、(アメリカは高速増殖炉の研究を止めており、ドイツは脱原発の政策をとり、フランスのスーパーフェニックスは閉鎖され、イギリスのPFRも経済性が疑問視されて運転中止を余儀なくされている。)もんじゅは危険で必要性も経済性もないのだ。ゆえに原告側が勝訴する条件は十分に揃っている。

 
 
 
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