破壊された制御棒 世界でも例を見ない重大な事故
山崎 久隆さん(たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会)
(2006年3月 「よせあつめ新聞」(読み合わせ会員限定配付資料)より転載)
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| BWRの制御棒が次々に破損している 発端は、東電福島第一原発6号機。1月16日に定期点検中の東京電力福島第一原発6号機のハフニウム板型制御棒9体において欠損やひび割れが発見されたと発表した。 それを受けて原子力安全・保安院は同19日、BWRを所有する事業者に対しハフニウム型制御棒の緊急点検を指示した。こういえば動いているものを止めて点検したと思いがちであるがそうではなく、稼働中の原発では、制御棒を駆動させるだけでよいという内容だった。例えば東海地震の震源域にある中部電力浜岡原発の場合は、定期点検などで停止中の1,2,5号機については目視で検査を行うものの運転中の3号機、4号機については、1月19日に一部動作試験を行ったうえで、24日までに全挿入、全引き抜き試験を行うのみで、外観検査は次の定期検査までは行わないとした。 言うまでもなく破損しているかどうかが「動き」だけでわかるという原子力当局者の自己満足的な欺瞞性に怒りがわく。 飛行中の航空機の油圧系統に亀裂があるかもしれないといって、飛びながらフラップの駆動点検で事足れりという航空工学者はいない。破断してしまえばそれで墜落してしまうかもしれないのだから。 しかし原発ではそういったことがまかり通る。今回制御棒に起きたことは、前代未聞の大規模破壊と言って良いものだ。 一つや二つの破損はこれまでも経験がある。しかし今回は同様のタイプのものが数多く破損した。それだけではなく、破片が生じ、燃料集合体の林立する炉心底部に落下している。つまりルーズパーツと呼ばれる破片が炉内に落下したのである。 公表を避けて 東電事故隠しの余韻がまだ冷めやならないはずの今も、これほど危険な事故がまた隠されている。亀裂の発生と進展、そして破片の落下はいつ起きたのだろうか。 発表の内容は不自然な点がいくつもある。 昨年12月21日に福島第一原発6号機が定期検査入りした。翌年1月9日、制御棒の動作確認試験を開始していたが、1月10日に東電本社ではなく第一原発でプレス発表を行い、そこで始めて「6号機制御棒におけるひびらしきものの発見について(リンク)」という文書を公表する。動作確認試験準備中に制御棒表面にひびらしきもの発見したというのだ。ではどうやってそのヒビを見つけたのかと言えば「全挿入試験中、1本の制御棒の動作が鈍かったため」という。通常ならば3秒程度のところ、倍まではいかないものの時間がかかったというのだ。 しかしひび割れだけで動作が悪くなるはずがない。このときに既に破損が進行中だったことは確かだ。 そうなれば、定検に入ってから発表に至るまでに何があったのかを詳細に調べる必要がある。 このプレス発表文もおよそ信じがたい内容である。概要は「ひびは十文字型断面(A〜H)8面のすべてにわたって発生していることを確認。合計23箇所41本。最大長さ約15cm。さらに1箇所破損を確認。(ほぼ10cm四方でめくれ)破損は定検中の動作確認試験で発生したものと推定」破壊されていると言って良いだろう。これほどの破損が「ひびらしきもの」と表現されるのであるから恐れ入る。 果たして定期検査中の機能試験で起きた破損なのかどうか、少なくても運転中にひび割れが進展していたことを否定することは出来ない。(破損が脱落を意味する「欠損」となるのはさらに時間を経た18日の発表においてである) 隠し事はまだある。 2005年7月20日にも制御棒の破損は柏崎刈羽原発5号機で見つかっていた。しかしこれについては詳細調査をしたという報告がない。事故隠しは95年からあったという報告もある。 制御棒の亀裂という車で言えばブレーキの破損に等しい重大事が、これだけ起きていても何の危機感もないのである。 中部電力浜岡でも 中部電力浜岡原発では、福島第一原発6号機の事故を受けて、停止していた1,2,5号機は調べたが、3,4号機は調べていない。その数は、3号機で9本(同型制御棒13本中)、4号機で21本(同25本)もあるのだ。 動作試験をしたというが、それが健全性の確認になどならないことは、東電の事例で明らかである。福島第一原発6号機は欠損が生じて動きが阻害された1本以外は動作に問題がなかったとされているが、大量に亀裂があった。それが脱落するかどうかは、亀裂の進展度合いと亀裂の重なり具合という人知の及ばない不確実な組み合わせにより決まってしまう。つまり、福島第一原発6号機の欠損を起こし脱落した制御棒は、いくら動作試験を繰り返してもあらかじめそうなると予見できる余地など無いのである。逆に言うならば浜岡3,4号機でいくら動作試験を繰り返しても脱落が起きて制御棒が止まってしまうまで破損の程度はわからないのである。 実際に、浜岡原発に保管されていた3号機の使用済み制御棒からは、すでに17本中13本にひびが見つかっている。つまり、破損しているかもしれないではなく、破損していて当たり前なのである。 BWR原発を持つ電力に検査を指示した保安院は、この浜岡原発3,4号機について、破損の可能性のある制御棒を全挿入状態にするよう指示した。つまり3号機で9本(同型制御棒13本中)4号機で21本(同25本)である。破損していても挿入されていれば、停止動作が生じないので支障はないという判断である。しかしそのために原子炉出力が低下することになった。 「ハフニウム板型制御棒に関する原子力安全・保安院の指示文書への対応について(リンク)」と題する中部電力の文書に依れば、この「低出力運転」とは「この措置に伴い、当面、4号機で40万kW程度出力低下する。」とされている。70万キロワット出力運転になるというわけである。このような低出力による長時間運転は、導入初期の敦賀原発以外、過去に例がない。 チェルノブイリ原発も低出力による長時間運転のあげくに暴走事故を起こしたことは忘れてはなるまい。チェルノブイリ原発と同じストーリーにはならないにしても、巨大な原発では何が起きるかわからないのである。 構造的な問題 制御棒の亀裂はなぜ起きたのか、過去の例で言えば、中性子照射励起型応力腐食割れ・IASCCと呼ばれる現象が起きたと思われるが、制御棒の亀裂は過去に何度も起きており、そのたびに対策を取ってきたはずである。今回も亀裂を生じた制御棒は4.4sntvを超えたものだけとして、それ以下のものは当面大丈夫と判断をしている。しかし97年に起きた同じ応力腐食割れでは、2snvt程度の制御棒でも亀裂があったのである。 今回の制御棒ひび割れが4sntv以下で起きないという保証など無い。 またも原発の綱渡り操業が繰り返されているのである。しかも東海地震の震源域の真上でも。 【snvtとは中性子個数を表す単位。1snvtは1平方センチメートル当たり10の21乗個の照射量】 |
![]() 3月16日(木)開催・いろりばた会議(学習会) 星川淳さん 「プルサーマルと再処理工場」 山崎久隆さん 「破壊された制御棒」 ご参加ください |
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